相棒とのスタート

ヒロロ✑

第1話

 俺のいる部署に天才が現れた……。

 どんな難事件でも必ず一週間以内に解決するという名探偵、顔負けの名刑事だ。

 しかし、浮かれていたのは最初の事件だけ。

 今は班員みんな、うんざりしている。

 何故なら俺達の地道な捜査をあざ笑うかのようなスピードで解決しまくるからだ。

 地道な捜査を馬鹿にされてるようにすら感じてきて、なかには殺してやりたいとのたまう奴も出てきた笑えない状態。

 しかし、エリート管理官は出世のことしか考えておらず、彼をかなり持ち上げている。

 そんなある日、彼とバディを組めと辞令が下りた時、俺は初めて刑事としての理性を失くした。

 酒を浴びるように飲んでは管を巻く。

 ……翌朝から顔が死んで饅頭と揶揄された。

 饅頭とは業界用語で死体のことだ。

 ふざけるな、浮かぶ死体はアイツの方だろうが。

 思わず机を蹴った。

 驚いて隣の八城やしろが跳ね起きる。

「先輩、壊れますから。あと、心臓に悪いです」

 冷静だな。元相棒は───。


 彼は身長一七五センチ、中肉中背のごく一般的な体格だが、無駄に顔が良かった。

 そこも鼻について、挨拶の後も何を話したか忘れる始末だ。

 でもいい、彼に任せておけば勝手に結果は付いてくるのだ。

 そう思っていた矢先───彼は関係ない事件を追究し始めた。

 そう、彼の能力は確かに非品だが、いかんせん興味のある事件しか捜査をしない自己中な刑事だったのだ。

 呆れ果ててホテルで寝ていたら、次の日の新聞の一面にこう載っていた───


 ───殺したいほど憎んでいた最愛の妻を殺した真犯人を逮捕してくれた、涙が枯れるほど喜んだ。

 後になって彼に問うた時に彼は言った。

「私の姉を殺した奴をずっと追うために刑事になったと」

 今となっては最高のバディ、相棒おとうとだと胸を張って言える。


END


 ───というショートショートを書いて筆が止まる。

 投稿しようとしてカクヨムを確認したら一日、締切を間違えていた。

 これは作家志望としての危機……。

 しかし、そもそもこの顛末をネタにして次のお題に応えたらクリアされるのでは?

 と、悪知恵が働きまたしたためている。

 危機一髪……脱したと言える。

 ため息を吐いて投稿ボタンを押す。


 ───お題「危機一髪」───

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相棒とのスタート ヒロロ✑ @yoshihana_myouzen

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