第47話

「はぁ、はぁなんとかなった」 


 私たちは城から飛んで、座標を指定した森にきていた。


「大丈夫か...... すごい汗だぞ」


 アエルが心配そうに汗をぬぐってくれる。


「ええなんとか。 これ魔王石」


 私はフォグに石をわたした。


「ええ!! これです!」


「それであれからどうなったの?」


「説明してくれるか」


 ケイレスとセリナがそういう。


「その前に、まずゼヌエラの城へ飛ぶ」


 ゼヌエラの城にとび、そこで私はみたことを全てはなした。


「勇者が大勢、地下に......」


 アストエルが信じられないという顔をしている。


「ゼフォレイド...... 聞いたことはあるセリナ?」


「ああ昔いた勇者がそういう名前だ。 だがなぜ魔王の城に...... そもそも魔王なんていなかったのか」


 セリナとレイエルはそう顔を見合わせる。


「わからないけど...... とてつもない強さだった。 戦って勝つのは難しいかも」


「あなたがいうのだからそうなのでしょうね。 まず私は装置を完成させます」


「ええフォグお願い」


 フォグは部下に魔王石をわたして命じている。


「断罪するもの...... なんなのかしら」


 ケイレスは考え込んでいる。


「とはいえ、この装置がつくられたら魔族との戦争もなくなる」


 セリナがそういう。


「まず、ラクエスに戻ってこの事を伝えよう」


 私たちはラクエスに戻り、ギルドからバルメーラ大臣へと連絡してもらった。


 次の日、すぐに馬車がきて城へと招かれる。 王に謁見する。 


「まさか、魔王の城に勇者が......」


 ラクエス王とバルメーラ大臣は言葉を失っている。


「それで、その装置とやらはいつ完成するのか」


「数週間...... しかし、この国の学者と技術者をお貸しいただければ数日には」


 フォグがバルメーラ大臣に答えた。


「ふむ。 それで魔族との戦争もなくなるのか」


「わかりませんが、少なくとも魔族の攻撃性や狂暴さは消え、話

ができるまでになるでしょう」


「対話ができれば、なんとかなるやも知れんな...... よかろう。 ゼヌエラに人材をだそう」


 王がそういうと、すぐバルメーラ大臣はうなづいた。


「とりあえずゼヌエラとの敵対は解除しよう」


「ありがとうございます」


 王の言葉に安心したようにフォグは答えた。


「それでこれからどうなる?」


「おそらく、ゼフォレイドは動くと思います。 彼がこの装置を知っていたならば、それを阻止すべくゼヌエラへと進攻してくるでしょう。 その間に手をうたないと」


 私がいうと王はうなづいた。


「わかった。 リンとやら貴公に託そう。 要望をもうしてくれ、叶えられるだけ叶えよう」


「ありがとうございます」


 バルメーラ大臣に必要なことを伝えて、私たちは準備した。 



 それから三日。 私たちはゼヌエラの城で待機していた。 


「来ました。 魔族の軍です!」


 兵士が部屋に駆け込んでくる。


「きた...... でもまだ、装置は完成してない」


 私たちは城の上階からみる。 空と地上に塊が近づいてくる。


「あれはレッサーデーモン!?」


 空と地上に赤い人型のモンスター、レッサーデーモンが隊列を組んで迫ってきている。 


「ああ、そして後方に魔族たちだ」


 その後から甲冑に身を包んだ魔族たちが数千はいる。


「レッサーデーモンが数万はいる...... 聞いたこともない」


 ラクエス王とバルメーラ大臣は圧倒されている。


「計画通り、ここは私が...... もし動くものがいたら、その都度処理してください」


 飛び上がり城の前にうく。


(この力を使うしかないんだ。 後遺症...... いや、それはいいわけだ。 やるしかない)


 あのときの後悔をふりきる。


 集中して、【遠隔透視】《リモートビューイング》を使い、全体を把握する。


「【催眠】《ヒュプノシス》」


 全神経を研ぎ澄まして、敵軍全てに催眠をあたえる。 全ての動きがピタリと止まる。


「くっ! きつい! だが、これを装置ができるまでたもつ!」


 調整しつつ、最小の力で催眠を持続させる。


(あのとき、私が力を使わなかったら......)


 後悔が集中力を奪う。 


(ダメだ...... 揺らぐな。 催眠がとける!)


 それから三日間、幾度もくじけそうになりながら、その場で制止させ続ける。


「できました! リンさん! 動かしてみてください」


 フォグが叫んで催眠を止める。 すると前方の軍は動かないままだった。


「やったのか、うっ......」


 私は意識を失い、地面へとおちていった。


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