第44話
かなり深く地下を降りると、大きな部屋へと繋がっていた。
「ここは......」
そこにはさまざまな機械があり、膨大な本などがある。 その中で学者風の人物が大勢働いているようだ。
(これは機械...... 古代の遺物か)
触って【残留思念感応】《サイコメトリー》をつかっても古すぎるから思念も何も残ってない。
「ここは私の研究室...... いや、もともと私たちの祖先から、古代の遺物や文献などを分析してきた場所です」
そういって机に、巻物を広げる。 そこには何らかの機械の設計図のようなものがかかれている。
「これは...... 何かの機械か、そして宝玉、いやこれが操魔球」
「操魔球のことも知っていたのですか...... そうです。 これは魔族を操作できるといわれる装置、古代の文献から写したものとされ、私たちはこれを探して遺跡を調べてきたのです。 古代の遺物から記憶を呼び戻す薬をつかったり、断片的なものを分析してここまできました」
「それがメモリア?」
「ええ、ご存じでしたか」
「あれをラクエスに流したのはなぜ?」
ケイレスが聞く。
「少しでも古代の知識を持つものを探したかったからです。 ここにいる何人かは薬によって知り得ない記憶を思い出し、ラクエスで遺跡を調べていた者たちです」
「それなら、なぜラクエスに頼らない」
セリナが聞くと、フォグは眉をひそめる。
「さっきもいったように頼りましたよ。 ですが彼らは信じなかった。 何度も話しましたが、信じてくれたのはザルギードさまだけ...... 彼がまだ意識があるうちに調べるように私に命じたのです」
「まあ、魔族を操れるなんて眉唾だものね」
ケイレスがいうと、フォグがうなづく。
「そんなことはありもしない。 ここの技術を引き渡せとも...... ダルグタール大臣にそういわれました」
(あの人か......)
「それで独立したのか。 皆を犠牲にして」
怒りを抑えたようにセリナがいう。
「怒るのはわかります。 ですが、勇者となり魔族との戦いで次々と犠牲者をふやし続けるわけにはいかない...... それがザルギードさまのご意志でもあった」
そうフォグにいわれてセリナは黙る。
「それでわかったことは」
「魔族の角です。 あれは魔族の感情を高ぶらせ、攻撃性をますのです。そしてこの装置はそれを制御する装置」
「角を折ればいいのは知っている」
私がいうと、フォグはうなづく。
「ええ、ですが、あの角はとても固く、並みの剣では切れない。 折ろうとすると衝撃で死ぬこともある。 まれにうまく折れることもありますが、そう簡単には折らせてくれないでしょう」
「何人かはこのリンが折ってるわ」
「本当ですか...... まあ、あなたならば可能でしょう。 ですが簡単ではないはす」
「そうだね。 一度に大勢はむり。 それでその装置はつくれるの」
「それが、一つ部品が足りないのです」
そう机の巻物をゆびさす。
「ここに王魔石が必要とあります」
「それも古代の遺跡か」
「いいえ、これは魔王城にあるとかかれています」
「つまり、魔王とやらを倒して手に入れなければならない...... か」
「無理よ! 魔王なんて歴代の勇者だって倒せなかったもの!」
ケイレスがそういうと、フォグは首を横にふる。
「いえ、正確には魔王を倒さなかったというのが本当でしょう」
「どういうこと?」
「ザルギードが魔族との戦いのあと、その精神力で少しだけ自我が残っていました。 そのとき彼はいったのです。 魔王を倒すために魔族の城にむかったあと、自らの意思に反しそのまま帰った、と」
「なぜだ? 魔王を倒せばこの戦いが終わるかもしれないのに、勇者はそのために生まれたんじゃないのか」
セリナが眉をひそめた。
(勇者には魔王を倒せない? あの強制力なら死んでも殺しに向かうはずなのに......)
「つまり、魔王を倒せばいいということなのね......」
「リン正気!?」
「さすがにそれは......」
ケイレスとセリナは言葉を失う。
「......しかし、それしかありませんね」
フォグはそう呟いた。
「その前にザルギードを眠らせてやりたい」
「......それは、もうザルギードさまの力を使えないということですよ」
フォグは私の目を見据えていう。
「その装置が完成すれば、ラクエスとも魔族とも戦わずにすむでしょ」
「......わかりました。 もはや、彼の体は限界を越えている。 私とて彼をこのままにしたいわけではない。 眠らせてあげてください......」
私はザルギードから聖剣を【離転移】《アスポート》させ、動きを止まったザルギードを丁重に弔った。
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