第28話
「さて、二人はこちらにきてくれるの」
レイエルとアストエルに聞く。 二人は顔を見合わせた。
「......あなたの話だと、魔族も住めるみたいだから、私はケイレスと共に生きたい」
レイエルはうなづくケイレスを見ながら話した。
「私はいく場所がないでしょうね。 おめおめ帰ったら殺されますわ。 あなたが責任をおとりなさい」
高圧的にアストエルがいう。
「角折れたよ......」
「もともとアストエルはこんな感じだ」
アエルは嬉しそうにいった。
「だけど二人ともいなくなって大丈夫? 魔族が警戒しないの?」
「大丈夫でしょうね。 私たちは上位魔族といえど、所詮片角のでき損ないと逃亡者にすぎないですわ。 実質的な扱いはせいぜい中位魔族というところ」
「ええ、私も魔族に見つかり、角の復元するための実験台でしかなかったのです。 いなくなってもモンスターに襲われたともおもい放っておくでしょう」
二人はそういう。
「なら問題ないか。 それで二人はここに何しにきたの?」
「単純に偵察ですわ。 下位魔族がいなくなったことで、兵力の再編が行われてるのです。 モンスターの召喚中、モンスターからの攻撃を受けないように、偵察に出されていただけですわ」
アストエルは面倒くさそうにいった。
「我々は通常より広範囲の偵察を命じられてきたのです」
「恐らく、捨て駒として、危険な場所へ送り込んだのでしょう。 失っても代用がきく消耗品としてね......」
アストエルがそういうと、レイエルはうなづいた、
「そうか、まあ、通常はここに偵察には来ないのね」
「ええ、ここまではかなり偵察の外ですわ」
「ならここに、漁場の町をつくれるな」
アエルが喜ぶ。
「......どういうこと? ここに町を...... そんなことは無理ですわ。 兵団があっても食料も物資も届けられず、モンスターに滅ぼされますわよ」
アストエルはそう怪訝そうにそういう。
「モンスターを退ける古代遺物があるの」
「えっ!」
「ほんとうですの!?」
ケイレスの言葉にふたりは驚いていている。
それから私たちはナーフからここに壁を配置していった。
数週間かけ、モンスターの発生をおさえつつ、壁をつくると、魔封石を移動させ、港町をつくり始める。
数か月もすると立派な町ができた。
「かなり漁獲漁もある。 それに牧畜もできている。 これで食料は大丈夫だ」
ダンドンさんは笑顔で答えた。
「いや、更に農地の確保もしておきたいの。 どこかいい場所はないかな」
「ラダトスから南に土地はあるが、かなりモンスターも多い。 冒険者たちだけでカバーできるかな」
ケイレスは不安げだ。
「一般の人たちも一応武器の使い方を覚えています。 ダンドンさんたちがつくった装備もありますので、そうそう破られることはないと思いますが、さすがに兵力が足りないでしょうね」
マーメルがそういう。
「魔封珠がもっとあればな...... しかしないものをいってもしかたない。 南を取りあえず見に行ってみよう。 ケイレスたちは三つの町を警護して」
「わかった」
私たちは南の探索を行うことにした。
「それでなぜ私もいくのです」
つれてきたアストエルが文句をいっている。
私たちはラダトスから南の森林を進んでいた。
「ひまして食べてばかりでしょ。 ケイレスとレイエルはモンスターからの警護と掃討があるの」
「そうだぞ。 人間の世界は働かないと食べていけないんだアストエル」
そうアエルが持ってきたパンをアストエルにわけながらいった。
「まあ、人間の食べ物は美味しいから、いいですけど......」
不満そうにいいながら、アストエルはパンにかじりついている。
「魔族は何を食べてるの?」
「モンスターとか獣や、果実だ。 魔族は農業や漁業をしない。 ただ狩りをするだけだ」
「ええ、ですから味はほとんどありませんわ。 せいぜい塩味ぐらいですの」
そういってパンを美味しそうに食べている。
(戦闘種族みたい...... 文化なんかも表面上あるだけみたいだし、知能はあるのに奇妙な生態だ)
「【遠隔透視】《リモートビューイング》だと、この先の山を越えると広い盆地になっているな。 よし奥に川もある」
「ぼんち?」
「山々に囲まれた場所。 斜面に果樹を植えると水捌けがいいし、平地に農業ができる」
「ですが、モンスターも大量にいますわね」
「ええ、それを防ぐために、厚い壁がいるの」
「魔封珠を持ってくるのか?」
「いや、あそこは魔族の領地が近い。 最悪のことも考えて動かさない方がいいと思う」
「そうね。 いきなり攻められても先制はできますわ。 魔族は魔封珠のことはしらないもの」
アストエルは名残惜しそうにパンを食べきっていった。
「だから巨大な投石機やバリスタみたいな巨大な弓をダンドンさんに量産してもらっている。 配置すればかなり有利になるよ」
「なるほど、モンスターだけでなく、魔族用でもあるのか」
アエルが納得したようにうなづいた。
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