第13話
「なんとか間に合ったな」
アエルは安心したようにそういう。
一週間の間に私たちは森から一番近くの町へのルートを作り出した。
「ええ、さすがに毎回転移をするわけにはいかないし。 壁も厚く高く作ったから、私たちがいない間でも大丈夫だよ」
町へと行くとダルドンさんたちは荷馬車を複数おいて、用意をしていた。
「リンさん。 準備が終わってるぜ」
「じゃあ、早速行きましょう」
十数台の荷馬車を使い、ダルドンさんたちと馬車で拠点へと向かう。
「こんな森の奥にすんでたのか、ここは【人外地】だろ」
ダルドンさんが不安そうにそう聞いてきた。
「ええ、でもほら」
私が指差すと大きな石の壁が左右にある通路が見えてくる。
「これは...... すごいな」
その石の壁を抜けると、拠点が現れる。 それをみた職人たちは歓声をあげた。
「ここなら、存分に仕事ができるぜ!」
ダルドンさんはそう笑顔でいう。
「では、指導もお願いします」
「ああ、任せとけ! 立派な職人にしてやる!」
そういうとみんなを引き連れていく。
「これでひとまず生活はできる」
「ああ、魔族も技術が手に入るから喜んでいるな」
アエルは微笑んでそういった。
それから半月ほど、私とアエルは増えてくるモンスターを倒しながら、拠点の拡大を行っていた。
「ダルドンさん。 今の状況の説明をお願いします」
私とアエル、ダルドンさん、マーメルで会議を行う。
「ああ、みんなそこそこの建築、裁縫、彫金、鍛冶なんかの技術を持つようになった。 彼らは物覚えもいいし、やる気もある」
そうダルドンさんは笑顔でいうと、マーメルはうなづいた。
「みんな技術を覚えるのが楽しいみたいです。 文字なども教えてもらっています」
「そうか、それはよかった。 それで他に必要なものはありますか」
「そうだな。 資源なんだが、やはりさまざまな木材、鉱物などが欲しいな。 あとはつくっても売る場所がないと商売にはならん」
「あとは食べる分には十分ですが、種類が少ないですね。 やはりダンドンさんがいうように交易が必要かと思います」
ダルドンさんとマーメルはそういった。
「素材に交易か...... それなら商業ギルドか、ダルドンさんの所のギルドはどうなったんですか」
「今はアーフィルドという町の商業ギルドに所属しているはずだ」
「それなら、そこにあたるか」
「だが、あそこはいい噂はきかん」
厳しい顔でダルドンさんは腕組みをした。
「どういうことだ?」
アエルは聞く。
「どうも、そのギルドの新しい長がラグオーンというんだが、悪名高い男でな」
そうダルドンさんは眉をひそめる。
「だけど、商人は必要だ。 なんとか来てもらいたいし、取引だけでもしたい」
「......そうだな。 ならサフィナという商人を尋ねるといい。 彼女なら力になってくれるはずだ」
「わかりました」
アエルと共にアーフィルドへと向かう。
「ここがアーフィルド」
外の石の壁が破壊され、補修しているようだった。
「襲われたといってたな」
アエルはそういって壁の方をみながら歩く。
「ええ、だがダルドンさんの町とは違って、全て壊された訳じゃないみたい」
町のなかはそこまで破壊され尽くしたわけではないようだが、やはり建物などには補修の跡がある。
(とはいえ、被害はかなりあったみたい...... あそこか)
雑貨屋がある。 看板にはサフィナの店とあった。
入ると店のカウンターに大柄な中年の女性がいた
「すみません」
「頭に声が響く...... 魔法使いかい」
「ええ」
「そうかい。 なんでも揃ってるからみていっておくれ」
「サフィナさんですか? ダルドンさんに紹介されたんですが」
「ダルドンが、そうかい、あの人元気にしてるかい。 町が襲われたからね。 心配してたんだよ」
商人を探していることを告げと、サフィナさんは少し困ったような顔をしている。
「うーん、そうさねえ...... 今は難しいね」
(ラグオーンは絶対認めないだろう)
そうサフィナさんは考えている。
「ラグオーンというギルド長が問題なんですか?」
「なんでそれを...... そうかダルドンかい。 そうラグオーンは商人ギルドで商人たちを牛耳ってるのさ。 逆らうと脱会させられ、商売ができなくなる」
「なぜだ? 他に商人ギルドに入ればいいだろう?」
アエルは不思議そうに聞いた。
「そうもいかないんだよ。 商業ギルドは国がら認可されているから勝手につくることはできないんだ」
「ということは国の中枢にラグオーンは強い繋がりがあるんですね」
「......ああ、大貴族のヤゼルオ伯爵という後ろ楯があってね。 ラグオーンはギルドの取り分を値上げしたり、着服したりやりたい放題さね」
深いためいきと共にサフィナさんは言うと、窓から曇り空をみた。
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