終章:忌じき欲望の末-4

 


「ぐっ……!!」


「私はな、ユーリ──」


 道極どうきょくによる緩急の激しい連続刺突|夏雨《なつさめ》がユーリを襲い、骨折しかねない打撃が無数に叩き込まれた。


「がっ……あ゛ぁぁッ!!」


「当初、お前の記憶を改変するのではなく消すつもりでいたんだ」


 《夏雨なつさめ》による不規則な突きの隙間を、まるであらかじめ示し合わせていたかのような完璧なタイミングでロリーナの細剣による斬撃がユーリの肌を幾度と斬り裂く。


「く、そがぁ……」


「師匠の《救恤きゅうじゅつ》の件しかり、お前が送り込んで来たクローンエルフの情報過疎さしかり……。少なくとも対象の情報をイジり消す事が出来るのは推測出来たからな。その想定で今まで動いてきた」


 ユーリが《風魔法》による風の盾を張り二人の攻撃を何とか防ごうとするが、クラウンとロリーナ二人によるの強打連撃刺突|白驟雨《はくしゅうう》によって盾はアッサリ弾け、その身に打突と斬突が閃く。


「ぬぁっっ……!!」


「だが疑念はあったんだ。情報を消すだけでは柔軟性に欠ける……。それだけでこうも暗中飛躍が出来るものなのか、とな。そうしたらどうだっ!!」


 魔力消費度外視で防御系スキルに全力で魔力を注いだユーリだが、それを見たクラウンは道極どうきょく旋棍トンファー変形させ、防御を固めた彼女に《牙龍連打ドラゴンラッシュ》を叩き込んで防御を崩し、その隙にロリーナが光属性の刺突技刺突光芒をユーリの肩口に穿つ。


「ぐうぅぅッッ!?」


「対象の情報を消すのではなく書き換える……。まさに理想っ! その権能さえあれば記憶を失い廃人寸前となったお前を教育する手間は省けるっ! それどころか私の都合の良い人格に調整も可能と来たっ!! 素敵じゃあないかなぁッ!? ユーリぃぃッッ!?」


 興奮気味に叫んだクラウンが正中線に渾身の一点集中打突を繰り出す《蜂真突打クラッシュビーブレイク》をユーリに見舞い、彼女を数メートル後退させる。


「がッ……あ゛あぁぁぁッッ……」


「そんなにフラついていたら……ほうら」


「──ッ!? がァァッ!?」


 後退させられたユーリは度重なる打撃による激痛により思わずよろけてしまう。


 すると、その先に張り巡らされていた 綢繆奏ちゅうびゅうかなでの糸に接触し、瞬間、音響属性による強烈な音波が彼女に伝導し、脳に凄まじい苦痛が駆け巡った。


「ぐ……がぁッ!!」


 苦痛に喘ぐ中、ユーリは音波を発する糸に対しユニークスキル《嫉妬》の内包スキルの一つであるエクストラスキル《妬心》を発動。


 糸の内部情報を書き換え非伝導性の糸へと改変し、音波による苦痛が途絶えたのを見計らってその場から跳躍して離脱しようとする。が──


「まだまだ元気だなぁッ!!」


 クラウンは魔術特化のスキル構成に切り替えると地面を強く踏み付けた。


「──ッ!?」


 直後、踏み付けた箇所からユーリが跳躍した場まで円形状に強力な重力場が発生し、逃げようとしたユーリはその重力場から発せられる通常よりも数倍の重力によりまともな距離すら取れずに地面に落下する。


「くっ……」


「寝てていいんですか?」


「──ッ!!」


 落下した衝撃と自身に掛かる数倍の重力に身を起こせずにいたユーリだったが、そんな彼女を憐れみも容赦もなくロリーナの細剣が襲う。


「かぁっ!?」


 横薙ぎに振るわれた細剣の切先が、必死に身体を起こしたユーリの鎖骨付近を斬り裂く。致命傷ではないものの、その傷の深さは数センチにも及び鮮血が舞い散った。


(コイツら、やっぱり──)


 ユーリのユニークスキル《嫉妬》と、その内包スキルの幾つかは、ある種必殺と言っても差し支えない凶悪な権能を有している。


 先に使用した対象の情報一つを正反対のものに書き換える《妬心》に始まり、相手の抱く正の感情を負の感情に書き換える《悋気りんき》。


 自分自身の身体能力を一時的に対象と全く同じものに書き換える《憧憬》と、対象と同じスキルを一時的に使用出来るようになる《羨望》や容姿を同じものに出来る《艶羨えんせん》。


 そして対象が内包しているありとあらゆる情報を自身の好きなように書き換え、消し去る事すら可能とする真打嫉妬……。


 そのどれもが使われたらば最後、目の前のクラウン相手ですら逆転可能な権能の数々であるが、当然の事、これらの権能には全て前提となる発動条件が存在する。


 それは──


(やっぱり気付いてやがるっ!! アタシの《嫉妬》と他のスキルが、一定時間触れてなきゃならない事を……っ!!)


 そう。《嫉妬》とその内包スキル達は皆、書き換えたい対象に自身が一定時間触れ続けてなければならないのだ。


(クソがっ!! さっきから瞬発的な攻撃でイヤらしい感じがしてたけど……。明らかに意識してアタシに長く触れないような攻撃してきやがるっ!!)


 ──《嫉妬》とその内包スキル達には共通した特徴として「対象の情報の閲覧」を可能とする能力がある。


 使用するスキルの権能によって閲覧可能な項目は異なってくるが、対象の情報を書き換えるという能力の関係上、なくてはならない力と言えるだろう。


 ユーリはこの能力を巧みに利用する事で《解析鑑定》のスキルを有していなくとも同等の情報収集能力を発揮出来ていたわけだが、今回に限ってその「対象の情報の閲覧」という過程が仇になっているのだ。


(《嫉妬》と内包スキルは、相手に触れてからソイツの情報を確認して選んでからでないと書き換えられない……。今まで使ってた時はそのタイムラグ気になんなかったけど、ここにきて、こんな……っ!!)


 ──クラウンはユーリの《嫉妬》の権能を既に看破していた。


 《嫉妬》の権能が「対象の情報の書き換え」という能力ならば、先にも述べたように前提として「対象の情報の閲覧」という段階を踏む事は必須であると彼は推察。


 ユーリが自身に対し即座に《嫉妬》を使用せず、不利であると理解していながらも終始一貫して接近戦に挑んでいた事から、対象に接触する必要であると合わせて予想し、数度の攻防を経て確信へと至った。


 結果、彼は先の《氷雪魔法》の魔術のような拘束や毒のような一定時間の接触が必要な攻撃はせず、瞬発的な武器術による直接攻撃や罠による牽制攻撃を中心とした戦術に徹底し、ユーリに《嫉妬》を使わせる事なく追い詰めているのだ。


(この、ままじゃ……っ!!)


 二人による連撃に耐えながらも必死にどちらかに触れようと手を伸ばすが、その度に道極どうきょくやロリーナの細剣によって弾かれてしまい、仕置きとばかりにカウンターが飛んでくる。


 防御系のスキルを集中的に発動したり《風魔法》や《闇魔法》等の魔術で時折攻撃を防いではいるが、圧倒的な技量差を前にはその効果も薄く、ただただ魔力が目減りしていく……。


(なん、とか、チャンスを……っ! 魔力が……《嫉妬》を使う分の魔力が、無くなる前……に……っ!!)


 背後には綢繆奏ちゅうびゅうかなでによって張り巡らされた無数の不可視の糸。


 足元と周囲には身動きがまともに出来ぬ程の重力。


 そして左右から挟む形でそれぞれの武器を我が身に振るうクラウンとロリーナ……。


 まさに四面楚歌の様相を呈し、死地のど真ん中でなぶられ続けこのままでは詰みかねないと悟ったユーリは、彼等の連撃に耐えながらも意識を何とか集中する。


(今は、とにかく……ッ!!)


「──っ!」


 間断ない攻撃を繰り出していたクラウン達の前から唐突に、ユーリの姿が消える。


「ぐっ!」


「……悪足掻きにしては上出来じゃないか」


 クラウンとロリーナが振り返ると、そこには全身をあざと切り傷に塗れたユーリが床に転がり、慌てたように身体を震わせながら身体を起こそうとしていた。


「《陰影魔法》が使えるならばある程度は《空間魔法》も使える……。まあ熟練度はお察しだがな」


「はぁ……はぁ……く、はぁ……はぁ……」


「だが悪足掻きは悪足掻きだ。次はもっと切迫させて精神を擦り減らしてやろう」


「なッ!?」


 クラウンは良い笑顔のまま道極どうきょく綢繆奏ちゅうびゅうかなでを収納すると、入れ替える形で爆撃属性の装具である爆巓はぜいただきを取り出して装備。


 腰を中段に落として構えると、小さく息を吐いてから床を踏み砕く勢いで一気を蹴り出す。


「──ッ!?」


「死んでくれるなよ」


 立ち上がる最中のユーリに急接近したクラウンは右腕を閃かせ、彼女に向け拳を真っ直ぐに叩き込む。


「──ッがァァッッッ!?」


 防御する間も無く叩き込まれた拳は無抵抗なユーリの腹部にめり込み、殺し切れない威力を推進力にして彼女の身体を浮かせてから凄まじい速度で吹き飛ばされる。


(ご、れ゛は……ッ!!)


 幾つもの内臓が断裂する嫌な音と感触を感じ、迫り上がってくる吐き気と言い表しようのない程の激痛に脳がパニックを起こすユーリは、そのまま十数メートルは飛ばされると再び綢繆奏ちゅうびゅうかなでの糸に接触し、追い打ちを掛けるようにして音波が彼女を襲う。


「がッガァァァァァッッッ!?」


「ロリーナ」


「はい」


 苦しみ悶えるユーリにロリーナが駆け寄ると、彼女を糸から引き離してから両手をかざす。


「苦悶を彼方へと追いやれ。「 苦痛無き願いリザレクション」」


「な゛ッ!?」


 ロリーナがユーリに施したのは、あらゆる怪我を癒し苦痛を和らげる《回復魔法》による魔術「 苦痛無き願いリザレクション」。


 《回復魔法》の魔術の中でも上位に位置する治癒能力を有し、対象の内臓の損傷とそこから来る苦痛を癒す高難度魔術である。


「な゛、なん、でぇ……」


「私が本気を出したらばお前など簡単に死ぬだろう? 故に即死せずとも必死の一撃を入れた後に治してやっているんだ。何度でも死の恐怖を味わってもらう為になぁ?」


「は、ぁぁぁ……」


「まともな勝負が出来るとでも思っていたか? 皇帝の自分にならば私に勝てるとでも? 想像を絶する苦難を体験し乗り越えて来たのだから劇的な展開にでもなると思っていたか?」


「あ、ぁぁ……」


「間違いだ。大いなる間違いだ。過去も、苦痛も、悲嘆も、絶望も、悔恨も、怨恨も、復讐も、愛憎も、利用も、策謀も、陰謀も、工作も、努力も、栄華も、頂点も、逆襲も、嫌悪も、敗北も、権力も、運命も、欲望も……。何一つとして、お前を助けてやくれん──」


 クラウンはユーリに歩み寄ると床に臥す彼女を掴み上げて無理矢理立たせ、霞む瞳を覗き込むようにしてその黄金色の瞳孔を爛々と輝かせながら、治ったばかりの彼女の腹部へ再び拳を当てがう。


「──何一つ、お前は私に届きやしない」


 瞬間、爆巓はぜいただきの拳がはじける。


 爆発の規模自体は小さい。衝撃波も爆音も、爆巓はぜいただきが本来出せる爆撃の数分の一程度の破壊力でしかなかった。


 しかし、それは決してユーリに情けを掛けたからなどという生温い理由からくる手加減ではない。


 回復役であるロリーナに爆破の影響を及ぼさない為の配慮と、もう一つ──


「む。ちょっと強かったか? ロリーナ、少し効力を強めに回復を」


「はい。…………これくらいでどうでしょう?」


 ユーリに最大限の苦痛を与える為の、単なるダメージ調整である。


「ふむ。ではもう一度……」


 そこからは最早、戦いではなかった。


 立たせたユーリに対し絶命するスレスレまで爆撃と拳打と治癒を見舞い、倒れる度に《嫉妬》を使われる前に立ち上がらせてはまた痛め付けた後に回復を数度繰り返した。


 拷問よりも惨い所業が十数回に達し、本人の意思に関係無く顔面からあらゆる液体を垂れ流し始めた頃になると、クラウンは彼女をその辺に適当に投げ捨てる。


「がっ!? ぐ……」


 受け身も取れず強かに身体を床に打ち付けたユーリは蠕動ぜんどうする青虫毛虫程度にしか動けぬまま、何とか逃れようと這々ほうほうていで身体を動かす。


(だ、めだ……。触れら、れない……。ずっと痛め付け、られて……ずっと、追い込まれ、て……止めて、くれ、ない……。どう、したら……)


 しものユーリも、ここに来て限界を迎える。


 身体は回復され傷も然程さほど酷くはないが、肉体が絶え間無く与えられ続けた苦痛を覚えているのかまともに言う事を聞いてくれず、際限ない疼痛が絡み付くようにして彼女を苛んでいた。


 精神も同様。いつまで続くか分からない激痛と高熱と衝撃からくる圧倒的な苦痛──そして〝死〟という名に解放の直前で肉体を治癒され、解放から遠のいていく生き地獄を何度も実感させられる……。


 いくら幼少に壮絶な体験をし、その後も苦労に苦労を重ねた人生を歩んできたユーリといえど決して耐え続けられるものではない。寧ろすぐに悲鳴を上げなかった事を評価すべきだろう。


(く、そ……。こんな、ことに……。使うつもりじゃ、なかった、のに……)


 ユーリは諦めたように眉尻を下げるとなけなしの魔力を消費し《空間魔法》のポケットディメンションを発動。躊躇ためらいながらもそこへ手を入れた。


「ふぅ……。流石と言うべきだな。これだけ責め立て、なぶり続けているのに懇願どころか泣き言一つ漏らさんとはな。尊敬に値する」


 そんなユーリに対し束の間のいとますら許すつもりがないクラウンは、ロリーナを伴いながら早足で彼女に歩み寄る。


 ユーリの元に歩み寄りながらクラウンは両の手の平を合わせると、そこに爆撃属性のエネルギーを圧縮させ始め、琥珀色だった爆巓はぜいただきの外装が徐々に白色にまで染まり始める。


「──ッ!?」


 それを横目にユーリは確信した。


 今ここでこの状況を変えなければ更なる責苦と絶望──地獄が自らの身を襲う。


 ただでさえ今までの攻撃でここまで肉体も精神も追い込まれ消耗しているのに、これ以上の苦痛を与えられたらばいつしか必ずクラウンの思い通りになる。


 それは……それだけは許せない。


 ユーリの滅入り始めた心に、最後の抵抗の炎が宿る。


 本来このタイミングで使う予定ではなかった切り札を手に取って……。


「そんなお前に敬意を表し、四肢のどれか一つを粉砕してやろう。しもの私やロリーナでも四肢欠損までは治してやれないが、そのくらいの欠損があった方が激戦の説得力と戦争責任は演出出来よう。利用しようは幾らでもある」


「……」


 クラウンがユーリの側に到達し、白熱化した爆巓はぜいただきを構える。


「ショック死してくれるなよ? まあ、お前ならば死なんだろうが、恨むならば私と、自身の精神力の強さを恨みなさい」


 そして拳を引き、そのままユーリの足に目掛け爆巓はぜいただきがその威容を──


「ま、待てッッ!!」


「──ッ!!」


 臨海寸前の爆巓はぜいただきがユーリを爆ぜさせる直前。彼女はクラウンに対して叫びながら何かを突き出した。


 それは片手で握れるサイズの長方形の金属の箱。上部にカバーの付いた大きな赤いボタンがあり、その下に数個の小さなボタンが規則的に並ぶ……この世界では見る事が極端に無い程に機械的な、所謂いわゆる〝リモコン〟のような物であった。


「……それは?」


 表情を変えたクラウンは爆巓はぜいただきの白熱をそのままに拳を戻し、不機嫌そうに眉をひそめる。


 反対にクラウンの攻撃を止め、コチラに形勢が傾くチャンスを感じさせる表情を見せた事にユーリは安堵と喜悦の混じった顔で彼を笑う。


「は、ははは……。流石のお前でも、この存在までは知らないみたいだなぁ……」


「ふん。その妙な箱が何だと? 私にはそれ一つがこの状況を一変させるに足る切り札には見えんが?」


「でも攻撃を止めたって、ことは……。嫌な予感でも、したんだろ? コイツに……」


 覚束おぼつかない足取りでユーリが立ち上がると、彼女はリモコンの赤いボタンに被さるカバーを開き、ボタンに親指を当てがう。


「コイツ……コイツはなぁ……」


「……」


「コイツは……お前の大好きで大好きで仕方が無いティリーザラ王国の、全国各所に設置してある「魔物化ポーション散布装置」を稼働させるリモコンだぁッ!!」


「──なッ!?」


 クラウンは露骨に表情を変え、狼狽うろたえる。


 横に並ぶロリーナの顔にも困惑の色が滲み、静謐せいひつな雰囲気にヒビが入った。


「は、ははははははッ! やっと見れたぞお前等のその顔ォッ!! さっきまでの余裕も台無しだなァ? キャハハハッ!!」


「……」


「コイツの、このボタンを押したら最後ッ! お前等の国中に高濃度の魔物化ポーションが同時に撒き散らされるッ!! そうしたらどうなると思う? お前の国の動植物や処理前の死体なんかがたちまち……軒並み魔物化するッ!! 吸入した人間も魔物化まではいかないだろうが不調をきたすだろうッ!! 国中が魔物と謎の病に蔓延されて壊滅だァァッ!!」


「……そのハッタリを信じるとでも?」


「そう信じたいのはお前だろォ? クラウンッ!? 散々偉そうにクソガキがご高説垂らしてたクセしやがってみっともねェなァ!? あァッ!?」


 ボタンに添わるユーリの指に徐々に力が入っていき、クラウンは思わず止めよう身動みじろする。


 が、そんな彼をリモコンを突き出す形で制止させ、クラウンの表情が更に不機嫌さを増す。


「……止めろ」


「オイオイ随分と大人しいなァ? さっきまでの威勢が見る影もねェ!!」


「チッ……」


「そもそもよォ……。なんでお前はアタシがコレを押さないとか思ってるワケ?」


「なっ……!?」


「どうせアタシは勝てない……もう諦めたよ。だから最期にッ!! とびきりの嫌がらせしてから自殺してやる……」


「くッ!!」


 クラウンがユーリを止めようと駆ける。


 しかし、既に力んでいる指がボタンを押し込むのには……一秒も掛からない。


「さァッ!! 亡国に沈んじまえェェェェッッ!!」


 赤いボタンが──深く深く押し込まれる。


 それによってリモコン内に信号が駆け巡り、トールキンに伝わると根を通って「地下研究施設」を介し地脈へ──


「……」


「……」


「…………あ?」


 地脈へ、


「──ふふ」


「──ッッッッ!?」


「ふは、ふははは……」


「お、まえ……まさか……」


「ふははははははははははははははははははッッッッ!!」


 高らかな哄笑が、黄金の葉を揺らした。

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