てんし、天使とは?


 どこぉっ

 ぼきぃっ

 ぎぃやぁぁあ!

 足が足が足がぁぁっ


 「まあこんな感じに、手取り足取り優しくサポートしてくっつけてデス(死)ねーっ」

「や、手取り足取りもぐ勢いでくっつけ強制サポートですよね? つか、最後のデスって死を含ませました?」


 ぎょいぃぃんっ

 ぐぎゃぎゃぎゃっ

 ぴぃぎやあぁぁあっ


「まあ、たまには魔法の妙薬やらなんやら使ってゴールインなんかさせちゃって、未成年の主張! みたいな? 恋の主張つーか叫び聞かしちゃうんデス」

「やっ、もう死に向かってゴールイン真っしぐらしちゃってますよね? マンドラゴラの叫び聞かせて死に向かわせてますよね?」

「さっきから慌てるようで冷静に突っ込むなぁ。あんたも聞いとくか? 逝く?」

「すみません、素晴らしい愛のサポートですね」


 天使なんかじゃない。

 あれ、なんか少女漫画とかよくわからないの、チラリと頭の中を過ぎったな。

 イオン、もしやこれ前世?!(ヤケクソ)


「でー、返事は? イエスかはいで簡潔にお願い死ますねー」

「返事の意味とは」

「イエスかはいで?」

「イエス、いえっさぁぁあ!」

「話わかる方で良かったデス(死)わ」


 べしべしべし


 何故か頬を定規で叩かれる。

 解せぬ。


(いやいやいやいやなんなの?!)


 にやりと笑う目が笑ってないんだよこわいんだよ、ちびるよ。イオン、泣かない。 


 もう一度、問おう。

 天使とは。


「おい、返事は」

「すみませんっ、すみませんっすみませんっ、はい元気です!」

「よし」


 お母さん、イオン、天使に召されます。


(だれか、助けて。勇者よ現れろ)


 あ、元勇者候補だった。あはは(二度目のヤケクソ)

「まあ、前座はこれくらいにして、本番行きましょうか」

「えっ? なにかの舞台だったんですか、降りていいですか?」

「死の幕降ろされたいんなら」

「本番行きましょうか!」

「はは、まったくもと勇者さまはボケかましうまいねぇ」

 やれやれと肩をすくませる自称天使。

 ちなみに、

 その後ろに見えるは、血だらけながら恍惚とした表情の人々、叫び走るマンドラゴラである。


 ぴぃぎやあぁぁあっ


 カオスである。


「さて、まずはジョブチェンジしないとですねぇ」

「チェンジって、天使は特級職ですよね?」

 ジョブチェンジと簡単に言うが、おいそれとできないはずだとイオンが怪訝な顔を向けると

「ああ、そこは天界のちからでこうね」

 いい笑顔で、手で金のマークをする天使。

 天使よ、汚れてないか?

 目が皿になるイオンに「いやぁ、話わかる方々でよかったわ」と言いながら、黒い翼をはためかせる。

 あれ? 天使って、翼は黒いっけ?

 イオンが首を傾げていると、天使は気にすることなく、こちらを見ると名乗ってきた。

「申し遅れまして、自分、アメリ・デスメタルっていーます。どぞ、よろしくー」

「アメリ……なんて? です、ですめたる?」

「なんか、文句あります?」

「いえ、素晴らしい名前だとおもいますよ、ええ」

「でしょう、かわかっこよすぎて、名前これで変えて良かったわー」

 またも金マーク。

 世の中、天界、金で動く。

 イオン、知った。

(あつ、また、頭になんか過ぎったなあ)

「さて、まず、これ飲んで」

「ん?」

「ジョブチェンジ(強制)するのに、翼いりやすから」

「はあ」

「なんでぇ、はいこれイッキー」

「ごふっ、ごぶぶっ」

 口の中に強引に流し込まれる液体。

 熱くなる体、背中に感じる痛み。

「逝きましょうか」


 ばきばきばきぃっ。


 翼って生やすのいたいね?


 もう一度いう、あれ、天使なんかじゃない。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る