こんな奴に相談するんじゃなかった!~相談を返り討ちにされたことありますか?~
44年の童貞地獄
第1話 悩みを自慢で返す奴~中学の同級生・桑原敏行~
あれはまだ大学に行っていた頃の話だが、桑原という奴がいた。
中学の同級生で、お互い別々の高校・大学に進学してからも付き合いがあった男であるが2023年現在付き合いはない、再開するつもりもない。
なぜなら二十年以上経った今でも本当に頭にくる野郎であるからだ。
あれはお互い大学三年生で、居酒屋で一緒に飲んだ時のこと。
私が、悩みというか愚痴を奴にこぼしたことから始まる。
中学時代から自分に興味がない話をすると露骨にスルーして話題を突然変えたりすることが多かった気がしていたが、長年の付き合いだからと心を許して悩みを打ち明けてしまった私も愚かだったと反省すべきなんだろうか。
その愚痴とは、当時私が前から狙っていた後輩の女子生徒にコクった結果、けんもほろろに断られたことについてである。
結構ヘコんでて、話し方や態度にも表れていたはずなのに野郎は信じられない反応をしたのだ。
まずはじめに、桑原は私の話がまだ終わらないうちに話を遮って「オレが今付き合っている女なんだけどさ…」と、いきなり自分の彼女のことを語り始めた。
最初、桑原は自分の場合どうやって付き合うようになって、その経験から私の場合ならどうすればよかったかを分析しようとしてくれているのかと思った。
だが、その彼女と先週はどこへ遊びに行っただとか、自分にベタ惚れだのセックスの相性はサイコーだの、いつまでたってもおのろけ話が終わらない。
そして、いつの間にか元カノについて話がおよび、更にその前の彼女やらナンパして食った女も含めて今まで二十人以上経験したとか、聞き流すのがだんだん限度になり始めた直後で、「俺はまあそんな感じ」と結んだ。
私の話を聞いていたか?
私がさっきお前にした相談というか愚痴は一体どこ行った?
「俺はまあそんな感じ」で話は終わったようだが、今の話はどう私のためになったんだろう?
愚痴を自慢で返してきたとしか思えない。
その時は他にも人がいたので怒りを奇跡的に我慢したが、本当に腹が立ってそれを抑えきれなかったのは翌年の就職活動の時だ。
当時は就職氷河期真っただ中で、私は八月になっても内定をもらえず焦っていた。
そして、よりによって私は再び桑原を相談相手にしてしまった。
その日、我々二人は居酒屋に入り、ビールを飲みながら私は自分の苦境を打ち明けた。
私:「中嶋ネットワークもダメだったし、この前受けた庄司工業も今日不合格の通知が来た。もう後がない。どうしよう?夏休みなのにまだ休めない」
桑原:「俺はサワムラコーポレーションの内定もらってたけど、串田製作所に行くことに決めた。すごくない?再来週から彼女と韓国に旅行する」
何を言ってるんだ、こいつは?
話が全く通じていないようだが。
こいつはひょっとしたら、相談を受けた場合のあるべき対応、はたまた相談という概念自体が脳内に存在しないのだろうか?
長年の付き合いだが、こいつと私の脳内のOSはここまで異なるものだったのだろうか?
よくそれで企業の内定いくつもとれたな。
「あのなあ、そういう話じゃなくて、俺は今…」
「それよりさ、相談に乗ってやってんだから、今日はお前のおごりだからな」
一応私の話が相談だということは分っていたらしい。
結論、こいつは私にケンカを売ってる。
その後、私が吼えたために居酒屋の他の客が静まり、店員が割って入ってくるほど場が険悪になった。
この一件で桑原とは断交し、それ以来、連絡は取っていない。
当然だろう。
桑原は極端な例の一つだったが、相談にならないバカは世の中にまだまだ存在した。
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