第2話 ミラーハウス



 「〇〇県のミラーハウスって、時々なくなった人の姿が映るらしいよ」


 「それで、映し出された人と目を合わせちゃうと、あの世に連れていかれちゃうみたい」




 どうなっているの?


 鏡の部屋から出られないわ。


 もう一時間もここをさまよっているの。


 一体ここからそうすれば出られるのかしら。


 疲れた私は、その場に腰を下ろした。


 死んでもいいと思っていた。


 失恋して、嫌になって、川に身を投げようとしていた。


 そうなの、私もうこの世がいやになっちゃったの。


 でも、偶然遊園地が目に入ったから、死ぬ前に楽しい思いを作りたいなって思って。


 それで、ミラーハウスに入ったんだけど、私って駄目ね。


 子供の頃から方向音痴なの。


 でも、そんな時はいつも二つ上のお兄ちゃんが探しにきてくれたわ。


 もう死んじゃったけど。


 はぁ、お兄ちゃんに会いたい。


 ぐううう。


 しまらないわね。


 こんな時でも、お腹がすくのね。


 私は、なんだか無性に力が抜けてしまった。


 自分から死ぬなんてばからしいわ。


 家に帰って少しだけ冷静になりましょ。


 そう思った私は、立ち上がって再び歩き出す。


 その私が去った後に、ミラーハウスの鑑に小さな男の子の姿が映し出された。


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