夜の中で

シキウタヨシ

第1夜



何もかもに自信が持てなくて

自分のことすら否定しそうで

でも誰にも言えなくて

誰にも安易な共感は求めてなくて

わかるよ なんて四文字で

おれの何がわかったってんだ

この消え入りそうな魂に

そうしてやすやすと手を出して

最後までめんどうは見ないで

すこしシンクロしては

コンテンツとして消費するだけで

明日になれば

何もかも忘れているくせに


何をやってもハンパな気がするんだ

だったら何もしなくても同じ気がするんだ

ぼくというコンテンツに

そんなに価値がないのなら

いっそ何もかも放り投げて

くそくらえだと

辞めちまった方がいい気がするんだ

欠点ばっかり目立つインフルエンサーが

インフルエンサーであるんだったら

媚びられないぼくは

どだい無理なんじゃないですかね

大衆に股をひらく気はないので

人気取りはできない

地味な努力は実を結ばないままだ

ならいっそ

見切っちまった方がいいんじゃないかね


それがもし

ぼくの特性ゆえのことなら尚更

無理難題もいいところで

媚びなきゃいけない世相なら

ぼくにそれは出来ない

ここが能力の限界点

もういい

もういいよ

何もかももういいよ

ここまで来たよ

それだけ


疲れたんだ何もかもに

たかってくる奴らにも

生返事しなきゃいけない何かにも

死ぬほどのことはないけど

ただ疲れ切ったんだ

手を伸べても届かない何かに

懸命に手を伸ばす行為にも


もういいよ

ここがロードストーン

ここまで来たよ

それだけ




/了

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

夜の中で シキウタヨシ @skutys

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ