【音】【ガイコツ】【最弱の関係】

ジャンル:悲恋


 夫のマサトとは大恋愛の末、結婚した。友達は私を羨望の眼差しで見るけども、現実は私が思い描いたものではなかった。

 マサトの両親と同居して一年、いわゆる嫁姑問題が勃発した。姑がことあるごとに私をなじるようになった。最初のうちは庇ってくれたしゅうともだんだん姑の肩を持つようになった。私はこの家で最弱の関係なのだ。マサトだけは変わらず優しくいてくれたが、商社勤めのため海外出張で家を空けることが多く、私は孤独な日々を過ごした。


 三年が経った。姑は子どもができない私を責めた。昔はして三年、子ができねば去るなんて言葉があったと聞く。同じ女性でありながら、私の辛い想いを理解せずそんな古い考えに縛られているのかとショックを受けた。私の中で何かが音を立てて崩れた。

 マサトは長期出張で一年帰ってこない。


 もう限界だった。


 こんなこと誰にも言えない。「世間に知られたく無い家庭の秘密」を表す英語の熟語がある。

“skeleton in the closet”

 直訳すると、クローゼットの中のガイコツ。


「ただいま」マサトが帰ってきた。

「おかえりなさい」


「あれ? 父さんと母さんは?」

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