【池】【ファミコン】【真の可能性】
ジャンル:王道ファンタジー
近頃のゲームはしんどい。確かに映像や音質は素晴らしい。だが、そういった所ばかりに注力して、肝心のゲーム性が軽視されているような気がする。コントローラーのボタンも何で12個もあるんだ。多すぎだろいくら何でも。
「昔は良かった」思わず俺はつぶやいた。
俺は物置を漁った。確かここにファミコンがあったはずだ。
「あった!」俺は歓喜の声を上げる。
ボタンは十字キーに、スタートとセレクト、あとはAボタンとBボタンしかない。これだこれなのだ。今ではソフトと言うが、昔はその形態からカセットと呼んでいた。今、本体にはドラクエIIIのカセットが挿さっている。ファミコンのスペックは驚くほど貧弱だ。だが、当時の技術者達はその真の可能性を存分に引き出した。映像も音楽も、メモリーだって容量との格闘だったのだ。カセットのメモリはわずか24KB。キロバイトというのはメガバイトの1000分の1だ。PS4のセーブデータよりも小さいのだ。今のゲームは無駄にメモリを食い過ぎなんだ。
「この世界で生きていけたらなぁ」俺はしみじみと思った。
瞬間、俺はドラクエIIIの世界にいた。この世界の母に連れられ、王の元へと
現実世界ならハローワークでも相手にされない俺だが、ここならジョブも選び放題だ。
俺は仲間を募り、スライムやら何やら倒して金銭を得る。装備も強化して魔法まで使えるようになった。ここだ、この世界こそが俺の生きる場所だ。俺は無我夢中に剣を振るった。
宿屋に泊まって、体力が回復するも精神的な疲れは癒えない。実際に眠らないといけないということか。俺はセーブして、瞼を閉じた。
目を覚ますと、俺はまたレベル1に戻っていた。また、この世界の母に連れられ王と
おかしい、俺は確かにセーブしたはず。あれこれ考えを巡らせて、はっとした。
「電池か」
Ⅱまではパスワードによる記録方式だったが、IIIではカセットに内蔵された電池によってセーブできるようになった。もう何十年も前のシロモノだ。とっくに電池は切れているだろう。俺は現実世界に戻れるよう願ったが、すぐにそれは叶わない望みと知った。俺は力の限り叫んだ。
「誰か電池を変えてくれ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます