【黄色】【クリスマス】【先例のない罠】
「サンタは絶対いるよ!」ユキエはサンタなんていないというハジメの言葉に大声をあげた。
「ユキエはまだサンタなんか信じてるのかよ。いいか、あれはなお父さんが僕らの寝た後にこっそりプレゼントを置いてるんだ。いい加減大人になれよ」
「私たちまだ小三じゃん。ハジメは大人なの? 大人はプレゼントもらえないよ」
「う、それは困るけど、とにかくサンタなんかいない。そうまで言うなら今度のクリスマスに僕が証明してやる」
12月25日の朝 ユキエ宅
「やったー!」クリスマスツリーの近くにプレゼントが置いてあるのを見てユキエは歓喜の声をあげた。
お父さんは先月から海外へ出張に行ってる。やっぱりサンタさんだ! サンタさんが持ってきてくれたんだ。その直後、ユキエは異変に気がついた。
「お母さーん!」
ユキエの声に駆けつけた母親が確認すると、床のあちこちに黄色い足跡が残されていた。
12月24日の夜 ハジメ宅
僕たちはいつまでも子供ではいられない。大人になる第一歩はサンタなんていないと認めるところから始まるんだ。ユキエに何としてもそれを認めさせる。そうすれば、僕たちは大人のお付き合いができるようになるんだ。
今日こそサンタの正体を暴いてやる。その為にたっぷり昼寝した。寝たふりをして部屋に入ってくるのを待ち構える。
「ガチャ」部屋のドアが空き、誰か入ってきた。暗くてよく見えないけど、あれは、お父さんじゃない!?
一体誰だ? こんな時の為に用意していたものを僕はその人の背中に投げつけた。狙いは外れたけど、ズボンの裾近くに命中した。急いで追いかけようとしたが、起き上がった僕に気がつくと、その人はあっという間に去って行った。
12月25日昼 サンタ宅
今年も無事にプレゼントを配り終えたが、先例のない罠にはまってしまった。
「来年からはもっと気をつけないとな」
黄色いカラーボールのペンキがついたズボンと靴下を洗いながらサンタは呟いた。
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