三題噺
@PrimoFiume
【赤色】【最高の剣】【矛盾】
母さんに頼まれてスーパーに買い物にきたら、福引券を一枚もらった。俺にはくじ運というものがない。いつも決まって、末等を表す白玉。ポケットティッシュか、うまい棒だ。どうせ当たるはずはないと思いつつも、引かずにいられないというのが人間のさがというものだ。
俺は何と言う名称か知らないあの多角形のガラガラを勢いよく回す。
白じゃない! 赤色の玉がでた!
カランコロンカラーン
「おめでとうございます、特賞です!」
店員が盛大にハンドベルを鳴らして声を上げる。
一体何がもらえるのだろう? 米10キロでも貰えたならしめたものだ。
「賞品は、……」
「ゴクリ」俺は生唾を飲み込んだ。
「最高の剣、ロトの剣です!」
「何でそんなものが賞品なんだよ!」
俺は突っ込まずにいられなかった。
「何言っているんですかお客さん、最高の剣ですよ? これさえあれば、無敵っすよ。 そんで女の子にもモテモテで、あんなことやこんなことも思いのままですぜ」
急に店員の喋りがウソくさくなった。
俺は手渡された剣を鞘から抜いて中身をあらためる。てっきり模造刀とばかり思っていたがどうやら本当のつるぎのようだ。試しに指先を刀身に滑らしたら血が滴った。
「どうですダンナ、最高でしょ?」店員が憎たらしい顔で得意げにいう。
まずはコイツを切ってやろうかと殺意が湧いた。
何だかよくわからないが、俺は最高の剣を手に入れて最強の男になった。その帰り道、……
銃刀法違反で逮捕された。
俺は最強になったんじゃないのか?
署に連行されるパトカーの車内で俺は言いようのない矛盾を感じていた。
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