いけいけ勇者様64

最上司叉

第1話

【ヒュー】


勇者たちのいる小さな町は冷たい風が吹いている。


町の人たちは怪我をして倒れている者が多い。


言いたくは無いが魔王のしたことだ。


魔王は白衣の男の薬で操られている。


今は魔王よりも目の前の男を倒すことが優先だ。


【ガァン】


「どこを見ている」


「ハア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!」


【キィン】


2人組も魔法で男に攻撃しているが当たらない。


動きが速すぎるのだ。


どうしたら勝てる?勇者と2人組が必死に考える。


男と勇者が睨み合っている所に何か飛んできた。


【ヒューッ】


【ドカーンッ】


勇者たちは一瞬何が起きたか分からなかったがここがチャンスだと思い男に一斉に攻撃する。


【ブォンッ】


【ズダダダッ】


やはり躱されてしまうと思ったその時勇者と男は止まっていた。


2人組は何が起きたか分からなかった。


砂埃が消えかけたその時勇者の腕に男の剣がくい込んでいるのが見えた。


「ッ!!」


勇者は無事なのか分からない。


2人組は急いで勇者に近づこうとしたその時男に勇者の剣が刺さっているのが見えた。


勇者はわざと自分の腕を切らせて男の胸を刺したのだ。


「…勝ったのか?」


「…」


勇者は答えない。


「くっくっくっあーはっはっはっ」


「!!」


【バタッ】


男は笑いながら倒れた。


勇者は動かない。


「こ…の俺…が…負け…た…だと!!」


何がどうなっているのか分からない。


2人組は黙ったまま動けない。


「…」


「…」


「…」


そのまま時が過ぎようかと思えた頃勇者はゆっくり膝をついた。


「ハァッハァッ」


「大丈夫か?!」


「そんな…ことより魔王だ!」


「あぁ…そうだな!」


「動けるか?!」


「問題ない!」


勇者と2人組は町の近くで魔王とドラゴンの女が追いかけっこをしている所まできた。


「魔王!」


「…」


「ダメか?!」


「…」


勇者は魔王に少し距離をとり話しかける。


「…」


勇者は反応がない魔王を見て涙を流しはじめた。


「…」


聞いたことのある声


懐かしくて愛しい声


誰かが私を呼んでいる


はやく起きなきゃいけないのに起きれない。


なんだかもどかしい


【ギュゥゥ】


動きが止まった魔王を勇者が抱きしめる。


「魔王…目を覚ましてくれ…」


「…」


「魔王…」


「…」


ダメかそう思った時ドラゴンの女がある一言を言った。


「何をしておるかの?こういう時には決まっておる、接吻じゃのう」


「…!!」


勇者は驚き言葉が出ない。


「何をしておるかの?はやくするのう」


「…ッ!!」


「あ〜っ」


「ん〜っ」


勇者は躊躇いながら魔王にキスすることにした。



「…ッ!!じゃあするぞッ」


魔王と勇者の唇が重なり合った瞬間魔王は倒れてしまった。


「!!」


「魔王!大丈夫か?!」


「どれ妾の出番だのう」


ドラゴンの女は4人を乗せて勇者の住む国へ帰って行く。


傷ついた町の人たちに仲間の魔法使いの薬を持ってくると約束して。


魔王は2、3日眠ったままだったが無事目を覚ました。


操られている時の記憶は有ると言った。


勇者のキスかはたまた薬の効果がきれたのかは定かではない。


魔王は攻撃した町の人たちへ謝りに行った。


「何しに来た!」


「お前のせいで町はめちゃくちゃだ!」


「帰れ!」


そう罵られても魔王は町を復興した。


そんな魔王を勇者は励まし支えた。


ようやく白衣の男と決着がついたのだろうか?


白衣の男はクローンがいると言っていた。


それを探し出し倒すのは2人組がやると言った。


「じゃあまた会おう」


「あぁ、王様によろしく言っといてくれ」


「またな」


勇者は砕けた腕の治療に専念するのであった。

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