第1話 虎(妹)の尾を踏み、俺は頭を踏まれる。
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1/16追記
ご要望にお応えして、急遽タイトルのアレを第0話として挿入(意味深)しました!(深夜に目を血走らせながら書いた)
どうぞお楽しみください。<m(__)m>
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「お兄ちゃん?
「だ、だって傘もささずに土砂降りの中で震えていたんだぞ!? 見過ごせるわけが――ぐぎゅう!?」
小さく柔らかな足裏が、玄関で土下座をしていた俺の後頭部を問答無用で踏みつける。その足の持ち主、義妹の
「だからって、人間の親子を拾ってくる奴がいるかこのバカ兄ぃぃい!!」
「ひぃっ!」
玄関で土下座する兄の頭を容赦なくグリグリと踏みつけるドSな妹――そんな光景を、雨でビショ濡れになった母娘が俺のすぐ隣で震えながら見ている。
「ちゃんと元いた場所に戻してきなさいっ!」
「……せめて雨が止むまで置いてあげても」
「お・に・い・ちゃ・ん?」
「ごめんなさい」
とか言いつつも、しっかりとタオルを持って来ていた優しい義妹。そんな彼女が、母娘の髪を拭きながら冷めた目つきでキッと俺を睨んだ。
「どうしてこうなったか、ちゃんと説明してくれるんだよね!?」
「はいっ! もちろんでございます!!」
もはや兄としての尊厳なんてモンはない。
俺は再び己の
◇
~さかのぼること半日前~
ピピピッ、ピピピッ、ピピピッ……
6畳ほどの部屋に、無機質な電子音が
俺は使い古されたシングルベッドからムクリと起き上がった。
「んぁ……あれ……?」
何か昔の夢を見ていた気がする……が、思い出せない。
部屋の中はまだ薄暗く、脳は眠気を訴え続けている。
頭なんて寝癖でボサボサだ。
「ん……うん……」
ふわぁ、と大きな
上半身だけで大きく背伸びをした後、俺はスマホの隣に置いてあったタバコとライターを手に取る。
――カチッ。シュボッ……カチャリ。
昭和の時代に流行ったシルバーのオイルライターが、小気味の良い金属音を立てる。
手慣れた仕草で、口に咥えたタバコに火を着けた。
すぅっと大きく、ひと呼吸。
「……ふぅ」
吐く息と共に白い煙がくゆりと浮かび、雲のようにプカプカと天井に流れていく。
それらがゆっくりと消えていく様子を、俺は
一息ついたところで、今度は空いている左手でスマホを操作する。今日の天気を確認するためだ。アプリを開き、降水確率をチェックする。
ここまでが、ここ最近の
寝惚けた頭でも、ほぼ無意識で身体が動いてくれるようになっている。
「今日は晴れ、か。だけどだいぶ寒くなってきたな。そろそろストーブを出す時期だよな」
煙と共に独り言を吐いている俺は、
オーナーとは言っても、現在は開店休業中。本業は
「って今日から11月? ……そうか、もう2年になるのか」
待ち受けの日付を見て驚いた。両親が死んでから、早くも2年が経とうとしていた。
と言っても母さんは産みの親ではなく、父さんの再婚相手だ。そして陽夜理は義母の連れ子にあたる。そんな寄せ集めの家族だったけれど、俺たちはそれなりに仲良く暮らしていた――はずだった。
「父さんたちが帰ってこない!?」
生活が一変したのが、今から2年前のこと。民宿で出す料理の食材を調達する為に、両親はいつものように沖へと船を出した。
――その日を最後に、2人がこの海猫亭に戻ることは無かった。
予報に無かった想定外の
地元の漁師や知人が総出で救助に向かったが、発見出来たのは父さんが荷物入れに使っていた保冷ケースだけ。やがて捜索も打ち切りとなった。
「ママもパパも、絶対に生きてる! ヒヨのこと、置いていくわけないもん!」
「そうだよな、陽夜理。俺たちだけでも二人を探そう」
周囲が早々に諦める中、俺と陽夜理だけはその後も2人の帰りを待ち続けた。だが子供の俺たちが何かできるわけでもなく、時間だけが無情に過ぎていく。
こんなことが起きるまで知らなかったんだが、日本の法律上、行方不明のまま一定の期間が経つと死亡手続きができるらしい。
家のこと、陽夜理のこと。これからのことを悩んだ末に、俺は……両親を殺す決心をした。
「――陽夜理。父さんたちを
あのときの決断がはたして正解だったのか、遺骨のない墓の前で今でも考える瞬間がある。だけど立ち止まるわけにはいかないんだ。俺が残った家族を支えなきゃ……。
「さて、朝のエサやりに向かいますか」
短くなっていたタバコを、スチール製の灰皿に押し付ける。
現在時刻は朝の5時。外はやっと明るくなってきたが、風がビュウビュウと吹いている。あの様子じゃかなり寒そうだ。
布団を押しのけて、のそのそとベッドから立ち上がる。
「陽夜理……は先に起きているだろうな」
しっかり者のアイツのことだから、既に待っているかもしれない。
あー、また「遅いよお兄ちゃん」って怒られるかも。朝から怒られるのは勘弁して欲しいんだが……しゃーない、急いで向かおう。
昨日からイスに掛けっぱなしだったダウンジャケットをサッと
吐く息を白くさせながら、庭にある木造の鶏小屋へと急ぎ足で向かう。
そこでは予想通り、陽夜理が恐ろしい
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作者「こんな可愛い妹が欲しい人生じゃった……(遺言)」
カクヨムコン用に新作を始めました。
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