極夜

猫目じろ

プロローグ

夜のせいだ、こんなに寂しいのは。

夜のせいだ、こんなに寒いのは。

夜のせいだ、こんなにむかつくのは。

夜のせいだ、こんなに苦しいのは。

夜のせいだ、ぜんぶ夜のせいだ。


夜が明けてしまえば-----


ぐうううう、と大きな音で腹が鳴った。


丸い穴から眩しい光が差し込んでいるのが見えた。


眠っても空腹はごまかされなかった。

もう何日も水以外のものを口にしていない。


いっそのこと、自分のしっぽをかじってしまおうかと思って追いかけてみたが、なぜか捕まえられないし疲れるのでやめた。


お母さんの事を考えるのも、悲しくなるし寂しいし、でもすぐ思い出してまた悲しい気持ちになる。


お母さん、お母さん、会いたいよ。

どこにいるの、僕を見つけて。


お母さんを探して彷徨っているうちに雨風だけは凌げる場所を見つけたが、ここは変なにおいがするしジメジメしている。

たまにネズミを見つける事ができたが捕まえることはできなかった。

やっぱりお母さんでないと狩りはうまくできない。


またお母さんが恋しくなってきた。


声を絞り出してみたが、びゃあ、と掠れた変な音が鳴っただけだった。

それでも声が続く限りびゃあ、びゃあ、と叫び続けた。


お母さん、お母さん。



寒い。とても寒い。


目も掠れてだんだん見えなくなってきた。

日の当たる暖かい場所へ移動しようと思ったが身体が思うように動かなかった。


疲れた。

お腹が空いた。

寒い。

眠い。


目を閉じるとお母さんの姿がぼんやりと浮かんだ。

白くて、ふわふわで、あったかい。

いつも優しくおでこや背中を舐めてくれた。


やがて、白いシルエットも消え、真っ暗な闇が広がった。

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