序章2 祖母と祖父の温かさ
祖母「もうすぐ着くからね」
えみ(やっぱパパとママはいないか。)
家に着き玄関に入るといつもと変わらない匂いがする。
木が湿ったような匂い。
えみはほっとした。
祖母「何か作るからコタツでも入って待ってて」
えみはコタツに入る。
とても温かい。眠い。
コタツに入ったままえみは祖母の作る料理を待ったまま寝てしまった。
起きるとえみは祖母の布団に入っていた。
台所から音が聞こえる。
えみはしばらく天井を見ていた。
涙が出てきた。
えみ(ばぁばの布団で寝てたんだ、いつもはママの布団で寝てたのに)
母達がいない事を改めて認識した。
涙が止まらない、
祖母がこちらに向かってくる足音がする。
どうにかしてえみは涙を止めたい。
止まらない。どうしても止まらない。
えみは寝たふりをした。
祖母が寝室に来た。
祖母「えみちゃん起きた?」
えみは聞こえないふりをした。
どうしても家族の前だけでは泣きたくなかった。
いつもは事あるごとに泣いていた。
えみ(ばぁばもじぃじもきっと病院で死ぬほど泣いただろう。私が泣いている所を見せたらきっと悲しむ)
えみは子供ながらにそう思った。
涙が止まりえみは台所にむかった。
そこには目玉焼きと味噌汁と漬物。
祖母がご飯をよそう。
祖母「食べな」
えみは何も言わずに食べ始める。
涙がまた出そうになる。
えみ(美味しい。本当に美味しい)
今度は安心感で涙が出てしまいそうだった。
えみはすかさず下を見た。
祖母「美味しくない?」
えみは顔を横に振る。
少し間があき祖母がえみの頭をなでてきた。
祖母「そっか。じゃあばぁば向こうにいるから食べたら片付けるんだよ」
えみは頷いた。
そしてやけになったようにご飯をどんどん口にいれた。
口に物を入れるたび涙の量が増えていく。
もうどうすればこの涙を止められるのかわからない。
えみの意識が遠のく。
気づくとえみはまた祖母の布団で寝ていた。
祖母がえみを見る。
病院の時といっしょだ。
ただ今度は祖母は寝ているえみを見て泣いていた。
そして声を震わせながらえみに言った。
祖母「我慢しなくていい。えみちゃんにはじぃじとばぁばがいる、泣きたかったら何度でも泣けばいい。いっぱい泣けばいい。何があってもばぁば達がいる」
えみは泣いた。肩を震わせながら泣いた。
祖父が来た。
えみの頭を撫でる。えみは安心したのか余計に泣いた。
だがえみは思った。
えみ(もうこれからはばぁば達の前で泣いちゃダメだ。きっと私が泣けばその度にばぁば達は辛い思いをする)
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