序章1 思い出したくない過去になる

1994年 冬


「ばぁば、じぃじ、行ってくるねー!」


大晦日の夜、えみは母と父との3人で神社に行く事にした。

夜の田舎道を車で走る。

バイクと車が大きい音をたてて走っている。

十字路の信号で止まり青になるのを待っていた。


えみ「ママまだぁ?」

母「もうちょっとかなぁ。そうだ!神社行ったら外のお店でなんか売ってるかもよぉ!えみは何欲しい?」


母はえみを暇にさせないように話をしてくれている。


えみ「チョコバナナがいい!」

母「お!いいねー!じゃあ着いたらチョコバナナ買お!ママも食べたいな!」

えみ「じゃあ一緒に食べよ!」


信号が青に変わる。すると前からうるさい車が走ってきた。

ふらふらしている。

すると車線をはみ出してきた。


母「パパ!」


ぶつかった。すると前の座席で母と父が血だらけで動かなくなっていた。

それを見てえみは気を失った。


目を覚ますとえみはベッドで横になっていた。

祖父と祖母が横でえみを見ている。

祖母と目が合った。

祖母はベッドの呼び出しボタンを押す。


祖母「大丈夫!?」


えみは頷いた。

先生が来た。

色んな事を聞かれたがえみは声が出なかった。

えみは喋れなくなっていた。

祖母が先生に呼ばれる。

帰ってくると祖母は泣いていた。

入院している間、祖母は喋らないえみに対してずっと話しかけてくる。

母と父の話はしない。

えみは薄々は気づいていた。

えみ(パパとママはもういないんだろうな)

母と父はもういない。

期待すらしていなかった。

退院の日がきてえみは家に帰る事になった。 

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