死にめぐり幼馴染はギフトで死の未来を回避する
濱村史生
〈一〉
「おれ、今日死ぬかもしんない」
いつも通り
「いやあ、夢に見たんだよね。車が突っ込んできてさあ。もうドーン、だよ。ありゃ即死だな」
「ほー」
「帰り道の和菓子屋んとこあるじゃん。あそこの交差点。幸いにもおれだけしかいなくてよかったよかった」
「米でいいのか」
「ん。味噌汁はいい」
席を立ち、早々に仕事へ行ったおばさんの代わりに茶碗へ米をよそってから戻ると、ソファにぽんぽんと寝巻を投げ捨てている最中の詠蕾と目が合う。いつものことながら、俺は呆れて言った。
「それで?」
「なにが?」
制服のベルトを締め、詠蕾はさっさと席につく。「やべ」という声が漏れたのは、もしも学校へ行くのであれば、家を出るべきタイムリミットがあと数分のところまで差し迫っていたからだろう。
もう答えは分かっているけれど、何度目かもわからない質問はいつも呆れながら、そしてどこか願掛けをするように問うことにしている。こいつのお隣さんとして、そして長い時間を共にした友人として。
「それでお前は、今日自分が死ぬという未来を視たのに学校へ行くつもりか?」
そしていつも、こいつは俺の願いを笑顔で裏切るのだ。
「だって今日、席替えだし」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます