リアル髭もじゃ危機一髪ゲーム
無雲律人
前編
俺は今、ベイエリアの使われていない倉庫の中に監禁されている。身体はロープでぐるぐる巻きに縛られ、手足も粘着テープで縛られている。手は後ろにされているので、どうにもこうにも動けない。
「た、助けてくれ! 何でもする! 殺しだって何でもやるから命だけは助けてくれ!」
俺は俺を監禁した三人衆に対して命乞いをする。なりふり構っていられるか。こっちは生き延びるために必死なんだ。
「おいおい富田。組織の金を使い込んだ上、ボスの女に手を出しておいて今更命乞いだなんて都合よすぎやしねぇか?」
そうなんだ。おれは半グレ組織の金を使い込んだ上、ボスの女と寝た。あちらから誘って来たんだが、応じるべきではなかったと後悔している。金は、ギャンブルで作った借金を返すために一文残らず使ってしまって返す当てもない。
「まぁ……こっちのゲームに付き合ってもらうってぇんなら、命だけは助けてやってもいいがな」
三人組の中のリーダー格、住川が表情を変えずにそう告げる。
「何でもする! 何でもするから命だけは!」
俺は涙まみれ鼻水まみれで命乞いをする。
「じゃぁよ、俺らが新たに考えたゲームのルールを説明する。ここに三つのナイフがある。ペティナイフ、サバイバルナイフ、それと出刃包丁だ。それを一本ずつタオルで包んで、どれがどれかを分からなくする。お前は右左真ん中からどれかひとつを選ぶ。それで選んだナイフで、お前は刺される。刺されて死ななかったらお前をそのまま開放する。だが、でかいナイフを選べば命の保障はしない」
「兄貴が考えたリアル黒もじゃ危機一髪ゲームってわけだよ! ひゃひゃひゃ!」
手下の田所が下品な笑いをする。
「じゃ、じゃぁ。俺がペティナイフを選べばワンチャン生き残れるってわけだな?」
「あぁ、そうだ」
「でも、俺が嫌だって言ったら?」
「その時は今の状態のまま東京湾に沈んでもらうぜ」
「や、やります!! やらせて下さい!!」
そうだ。やるしかないんだ。俺はこのゲームで勝つしか生き残る方法はないんだ。
「じゃ、早速今から始めるぞ。とりあえず切れ味のテストでもしとくか」
そう住川は言うと、三本のナイフを使って次々と俺の顔にキズを付けた。
「いてぇぇぇ! いてぇぇぇ!」
俺は切られた痛みでもんどりうつ。
「こんなんで騒いでたら、刺されたらもっと痛いぞ?」
もしもサバイバルナイフや出刃包丁を選んだら、俺は死ぬだろう。絶対に死にたくねぇ。俺には夢も希望も無いが、東京湾に沈むのも今ここで死ぬのも嫌だ。
「田所、菱沼、タオルでナイフを巻け。どれがどれか悟られないように上手くやれよ」
「「へい、兄貴!」」
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