第3話 竜の子
町での暮らしは、しばらく慣れなかった。
まず人が多いのが気になった。
それに、何をやっていても、注意される。優しく困った顔で注意する人もいれば、
大声で怒鳴る人もいた。
僕は何が悪いのかわからないので、いつも逃げていた。
竜には訓練が必要だと言われた。
竜と一緒に訓練所に行くのが日課になった。
僕の竜は他の竜と違って格好良かった。
種類が違うみたいで、
横に並ぶ竜たちもそれは気になるみたいで、命令どおり並んでるけど、僕の竜が鼻を鳴らしたり足踏みするたんびに体をすくめてこちらの様子をうかがっていた。
僕は知らなかったけど、竜は主従関係を結んだ人間の命令しか聞かないらしい。基本的に一頭の竜には一人の
主従関係の結び方を教えてもらったら、びっくりすることだらけだった。まず、ムチでいいこと悪いことを教えるらしい。ムチは硬い皮膚の竜にとっては別に痛くないと言っていた。そして世話を毎日する。その繰り返しで、やがて適性がある人は竜に主と認められるらしい。
ぼくは、まずムチを使うのにびっくりした。痛そうっていうのもあるけど、そんなことしたら竜はとても怒るから、やろうという気にはならない。
そして、世話を毎日するというけど、僕は毎日しててもなにも言う事聞いてくれない。
お師匠様の言う事は聞いていたから、昔はお師匠様もムチを使っていたのだろうか。それに、一人の主だけだと言うけど、死んでもお師匠様だけが主と言うことなのだろうか。あのお師匠様なら、それもわかる気がする。僕にとってもお師匠様はいつまでもあのお師匠様ひとりだけだから。
竜のお世話の仕方を教えてくれる担当になったのはムシュカという人だった。ムシュカは、僕の竜はまだ誰かと主従関係を結んでいるはずだといった。普通は人に縛られていない竜だと、子育てしている時期以外は定住せず、定期的に棲家を変えるそうだ。でも、僕の竜はお師匠様が死んだあと3回冬が来ても移動していなかったから。
僕は、竜がお師匠様が死んでしまったことをわかっていないのかと思った。賢そうに見えるのに。でも、死んだのを理解してどこかに飛び立ってしまうと、僕は一人ぼっちなので、そのままで良かったと思った。
町にいつまでも馴染めない僕は、訓練にもいつまでも馴染めなくて、よく逃げ出した。
初めの頃は訓練所の人たちが町中まで探し回ったりしたそうだけど、結局毎回僕は竜たちの
僕が隠れる場所は、僕の竜の所の時もあるけど、他の竜とも仲良くなったので、そのねぐらで隠してもらうこともあった。
竜のねぐらは普通入れないらしく、僕が隠れているのを知っていても、手が出せないと誰かが言っていた。出てくるように声をかけたくても、騒ぐと竜が怒るから、それもできないと言っていた。
だから、安心して、僕はしばらくの間、竜のねぐらに丸くなって眠るのだった。
それを見つけたある世話係がこう言っていたことがある。
その時僕は、竜のおちびちゃんと並んで寝ていた。
「ぼうずをまた見つけたぞ。こんなところで丸くなって寝てるから、はじめ見分けがつかなかったぞ。」
そう言った後世話係のおじさんが言ったのだ。
「まるで竜の子どもと同じじゃないか。」
それから僕は竜の子と呼ばれるようになった。
僕が竜のねぐらで隠れている時は、その竜の主を呼んで、竜にどいてもらってから僕を連れ出すのが一連の流れになった。だけど、主の人も、「この時指令を出しても竜の機嫌が悪くなる」とぼやいていた。
そんなある時、この国の王様と王子様が竜達の様子を見に来ることになった、とムシュカに言われた。
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