明日8時46分の快速に乗って

シキウタヨシ

前夜



明日8時46分の快速に乗って

それでその先どこへいくのか

とんと覚えていない

願わくば いやもし叶うなら

何もかもから解き放たれたどこかへ

連れてってくれよ

しがらみとかいうやつから

解放されたどこかへ

どこでもいいよ 海でも山でも

多少の不便は構わないよ

あとから追いかけてくるものが

なければ

それがもし死であるというのなら

願うことはひとつだけ

ぼくの遺体は

見つからないままにしてください

どうせ毎日死んでるようなもんだ

いまさら驚きゃしない

ただ毎日ルーチンで

すこし飽きはじめてたんだ

はげたかに正しい人々

間違ったままのぼく

軍靴を引きずって

電車に乗っては避けられて

何がわるいのか

間違えているのがわるいのか

そんな杞憂ももうしなくていいだろ

明日8時46分の快速に乗って

どこへ連れてってくれるんだい

たのむからがっかりさせないでくれよ

わくわくしながら寝たいんだ




/了

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

明日8時46分の快速に乗って シキウタヨシ @skutys

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ