カンケリ少女

倉ぼっこ

それは突然に。


東京都某所———



今、山手線の電車に乗って帰っている途中だ。だいぶ疲れている。


上司には無理難題を押し付け、パワハラまがいなことにやられ、周りからは同情してくるが逆に気を使っているのがなんだが悪いと思っちゃう。

唯一の幸せは、電車に乗っている時に揺れる感覚や座っている感触、それに景色だ。

高層マンションとかではないけど、夜の街まみの明かりが一つ一つ走っている電車と一体感が癒されるものよ。

目的の駅に着いた。駅名はちょっと言えないが、俺の住んでいるとアパートは言える。

築四十年くらいで家賃は5万ちょっと。

金がない俺は敷布団と掛け布団の一枚ずつしかない汚い部屋に向かっている途中だ。

ふと、周りを見て気づいた。


人っ子一人もいない。


普段なら、飲み屋やラーメン屋に人がいて、笑っていたり、叫んだりしているけど。

今日は誰もいない。

違和感があったが、こういう時もあるだろうと歩き始めた。

ねむい。そう思って一瞬、目を閉じた。すると。


俺は驚愕した。何もない。

今まで、無数にある信号機や24時間やっているカラオケ屋。コンビニとかあったのに。

何もない草原、住宅は何件かあるがほとんど更地。すべり台やブランコがある。



何故か、俺は公園の真ん中に立っていたのだ。

茫然としていると。

「ねぇ、何やっているの。」

ふと、後ろから声がして振り向いた。

小学三年生くらいの女の子。短い髪型しているが髪の毛がさらさらで白い水玉模様ワンピースを着ていた。とても笑顔で見ていた。

少し変わっているとすれば靴。瞬足だ。子供のときにお世話になったものをブカブカだが履いている。

「何もしていないなら、ボクと一緒に遊んでほしいなのだ。」

少女は缶を取り出し、俺に渡して去っていった。


俺はスマホを取り出して時間を見たが止まっている。ここは時間が動かないのか。

だが、俺は動ける。生物は止まらないと分かり、いったんブランコに座った。

両手で缶を回しながら、ぼーっと見て、子供のころを思い出した。


俺は遊ぶのは嫌いだった。一人で本を読んで引きこもってばかりの生活に母は無理やり外に出して遊ばせるように要求されたのだ。今でいえば児童虐待だが当時は当たり前だったみたいな風潮があったので、俺はしくしく泣いていたのだ。その時に


「お兄さん。」

俺は昔の記憶を浸していたら、少女が現れ。缶を奪ってこう言われた。

「あんまり遅いから見てみたけど。やってなかったじゃん。しょうがないからボクが鬼になるから、隠れて。」

少女は缶を置き、目をつぶって数をかぞえてた。


「いーち」

「にーい」


俺はまだ茫然としていて、我に返り。


「ちょっと待って、君は一体。」

少女に向けて言ったが、返答しなかった。


無視かよ。仕方がない。俺はどこか隠れてる場所を探した。

ブランコ———は、隠れる所はない。すべり台も同様だ。

土管っぽいのにでもいいかと思ったが、あそこでいいかと隠れたのだった。


「もういーかい。」


少女は大声で言った。もういいよ。と俺も叫んだ。

探し始めた足音がする、芝生を踏む音。階段を登る音———


「どこにいるんだ。」

しまいには叫んでいた。そう簡単には見つからない。

俺の隠れている場所は公衆トイレ。便座に座って待機していた。

しかしカンケリなんて久しぶりだな。イヤ正確には一回、遊んだことがあった。

親に家に追い出された子供時代。俺はどこに行こうか分からなかったときは近くの公園に行っていた。あるときに公園にいったら先客がいてあきらめかけた時に‥‥。


「み~つけた。」


ふと、我を忘れていると、少女はドアを開けて言った。


「んじゃ、おじさんが鬼ね。」


そう言うとトイレから出て行って俺が目を離した時にはもういなくなっていた。

手に違和感がした。見てみると缶を持っていたのだ。


「まだ終わっていないってことか。」


俺は缶をもと置いた場所に置き、周りを見た。そういえばここ、一度遊んだことあるぞ。


さっきの続きだが俺は行くこともなく、途方に暮れていた時に自分でもどこ歩いたか分からなくちょっと目をこするとこの公園に来ていた。


————今と変わらない。それどころか子供時代に来たときから時を止まったように見える。その時気配を感じた。

少女だ。公衆電話のほうに隠れながら俺のほうを見ていた。蛇に睨まれた蛙のようにお互いジーっと動かずにいた。緊張してきて嫌な汗が出てきたときに俺はそろりとゆっくち動き始めた。

缶蹴りなんて久しぶりだからルールがうる覚えで確か俺がやった時は近くまで来てから言わないといけない。そんなルールでやっていた。

この少女もそうだ。思い出した。

俺はすぐさまに距離をつめ。


「っみ、み~つけた。」


人はいないとはいえ、恥ずかしい。

俺は振り返り走ろうとした時。人の気配が変わった。

目線が缶のほうを向くとそこには少女が来ていて。


そして缶を蹴った。


すぐさま少女は草原に隠れた。俺は茫然として、公衆電話の前に座り込んだ。

眠い。俺はくつろぎだんだん目を閉じて深い眠りについた。


「また遊ぼうね。」


そう少女が言ったような———そんな気がした。




目が覚めた時には、布団にかぶっていた。何年くらい洗ってないだろうか。

他に服が無造作に散らばっていて。カップラーメンの容器が何個か置きっぱなし。

埃だらけの見慣れた部屋———俺の部屋だ。

俺は起きてぼーっとしていた。夢だったのか。

そう思ったが、手に何か持っていた。

缶だ——そこら凹んでいた。やっぱり夢ではなかったのか。

けど、空き缶がいっぱいあるからそれの可能性もある。

「部屋、掃除しなきゃ。」

俺は立ち上がり、布団を片づけ、散らかっているゴミを捨てた。

今日は仕事があるから、全部は無理だ。なので一部を片づけ、掃除機で吸って会社に行く準備をし家を出た。


何だが気持ちがいい。あの子のおかげだろうか。いや、それはお門違いだな。とあれはうっすら笑みを浮かべ、会社に向かったのだった。

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