魔女達の軌跡

田米 龍真

プロローグ

第1話 私刑宣告

『魔族の王としてエノテラ・フレンダリルが宣言します。協議により、我々魔族は世界中の人間を抹殺することにしました』


 突如として理不尽かつ要領を得ないことを宣ったのは、おそらく年端もいかない少女だろう。


 『おそらく』や『だろう』などと不確定要素の多い言葉を用いたのは、話者が姿を現さないからに他ならない。


 声の持ち主は人間の理解の範疇を超える力で、人々の脳内に語りかけていた。衆愚は慌てふためき、幻聴を疑い、皆が同じ声を聞いていたと知ると、事態の深刻さをようやく理解する。


 自分たちは、魔族などというよく分からない連中に殺されてしまうかもしれないのか、と。


 謎の声が発する言葉を鵜呑みにすると同時、先程の声が神妙に告げた。


を懺悔しなさい。されど、ゆるしは与えません』


 その言葉が一体どのような意味を持つのか。ヒトは、知らない。

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