吾、異分子
シキウタヨシ
独白
逃げるように
隣の女二人は降りてった
向かいひと席が空くと
隣の男は席を変えた
一度席に座ったサラリーマンは
たった一駅で降りてった
両隣りが空いても
目の前の女は座らない
ぼくは異邦人
ぼくは異分子
ぼくは忌むべき異物
ぼくは怪物
化物が席に座るんじゃないよ
化物は空間を占拠するな
そう言いたげな横目が寄越されて
見返すと慌てて伏せられる
口に出して言いなよ
思っていることをさ
化物は気持ち悪いとか
厭なにおいがするだとか
その度胸もないなら
そもそもぼくに触れるなよ
こっちだって
充分厭な思いをしているんだ
中には肘鉄を喰わせる猛者もいるが
それも黙ってだ
口があるならはっきり言えよ
その度胸はないくせに
ぼくは電車の中では寝てしまうが
そういった悪意を
看過するためだ
いちいち受け止めてはやっとれぬ
ぼくは電車が嫌いだ
/了
吾、異分子 シキウタヨシ @skutys
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます