第16話 貴族学院に入学します
「お嬢様、その制服、よく似合っておいでですわ。今日から貴族学院に入学するのです。公爵令嬢として恥じない行動を心掛けて下さい。特に王太子殿下に対する暴言だけは、吐かないで下さい。いいですね?」
1ヶ月前、あの腹黒性悪王太子…失礼、カロイド殿下にお茶に誘われ、私が少しはっきりと殿下に気持ちを伝えて以降、なぜか私が殿下に暴言を吐くと思っているお父様。その影響で、専属メイドのアリアまで、私にそんな事を言う始末。
「アリア、私は別に殿下に暴言を吐くつもりはないわ。ただ、向こうが私に絡んでこなければの話だけれどね。大体、私は何度も、アルフレッド様を愛していると言っているのに、しつこく絡んでくるあの男が悪いのですわ!」
「お嬢様、殿下をあの男呼ばわりをするだなんて!いいですね、お嬢様は極力口を開かない様にお願いします」
そう言って隣でアリアが怒っている。
今日からいよいよ貴族学院に入学する。実はあの後、改めて漫画のストーリーを思い返していたのだが、やはりカリーナ殿下がアルフレッド様を愛していたという文面はなかったはずだ。
もちろん、漫画がないので確認はできないが、それでも私は、漫画に穴があくくらい、隅から隅まで読んでいた。だから、話の内容はもちろん、セリフの一字一句まである程度覚えているのだ。
もしかしたら、漫画では描かれなかったストーリー、裏設定などがあったのかもしれないわ。そう言えば私が亡くなる寸前、番外編が出るなんて言う話もあったわよね。
あぁ、どうして私は、番外編を読む前にこの世を去ってしまったのかしら?もしかしたら、そこに何かヒントが書かれていたかもしれないのに…
ただ、兄でもあるカロイド殿下に、私に近づくように言うあたり。カリーナ殿下もきっと、兄同様腹黒なのかもしれない。もしかしたら、アルフレッド様にフラれた腹いせに、私とアルフレッド様を引き離そうとしたとか?
確かあの漫画には、悪役になる令嬢がいなかったものね。実はカリーナ殿下が、裏の悪役令嬢だったとか?いや、真の悪役令嬢はクリスティーヌだったわ。最強の悪役に協力したのだから、やっぱりカリーナ殿下も悪役か?
なんだか訳が分からなくなってきたわ。
「お嬢様、何を考えているのですか?ほら、早く行かないと遅刻してしまいますよ。入学式早々、遅刻だなんて恥ずかしい真似はやめて下さい」
「もう、今大切な事を考えていたのに!わかったわよ、それじゃあ、行ってくるわね」
本当にアリアは口うるさいのだから。急いで部屋から出ると
「クリスティーヌ、おはよう。制服姿、とてもよく似合っているよ」
私の事を待っていてくれたアルフレッド様の姿が。なんてカッコいいのかしら?そうよ、この姿よ。それにしてもアルフレッド様の制服姿、とても素敵だわ。あぁ、素敵すぎて鼻血が出そう。
「アルフレッド様の制服姿も、とてもカッコいいですわ。アルフレッド様、あなた様は素敵すぎます。令嬢たちが近づかない様に、私がお守りしないと!」
アルフレッド親衛隊、ここに結成!
「クリスティーヌこそ、他の令息が近づかない様に注意しないとね。特に王太子殿下には、気を付けないと」
あの腹黒王太子殿下か…あの人が近づいてきたら、軽くあしらおう。それよりも…
「アルフレッド様こそ、カリーナ殿下には気を付けて下さいね。なんとなく彼女、まだあなた様の事を諦めていない気がするので…」
やっぱり私が気になるのは、カリーナ殿下の存在だ。漫画ではクリスティーヌの良き相談相手みたいに描かれていただけで、実は本人についてはあまり記載がなかった。とにかく、彼女には十分気を付けないと。
それから、こっそり彼女を観察しないと。なんだか彼女が一番危険なにおいがするのよね。
「僕の事を心配してくれるのかい?でも、大丈夫だよ。さあ、クリスティーヌ、そろそろ行こうか。入学早々、遅刻したら大変だからね」
「そうですわね、行きましょう」
アルフレッド様の手を握り、馬車へと乗り込んでいく。もちろん、隣同士に座る。いよいよ漫画のメイン舞台にもなっていた学院生活が始まるのよね。なんだかワクワクしてきたわ。
確か私とアルフレッド様は同じクラスだったはず。でも、カロイド殿下とカリーナ殿下も同じクラスだったわよね。カロイド殿下はもちろんの事、カリーナ殿下は謎が多すぎる。とにかく、警戒して行かないと!
「クリスティーヌ、そんなにむずかしい顔をしてどうしたのだい?」
「何でもありませんわ。学院に着いたようです。参りましょう」
アルフレッド様の手をしっかり握り、馬車から降りる。はっきり言って、私は学院ライフを楽しむつもりはない。とにかくアルフレッド様に寄り添い、彼が少しでも安心して学院生活を送れる様サポートする事に専念するつもりだ。
漫画の世界の悪役令嬢…じゃなくてヒロイン、クリスティーヌはアルフレッド様そっちのけで、遊びまくっていたものね。よくあんなんでヒロインなんてやっていたものだわ!
ダメだ、思い出したら腹が立ってきた!さらにアルフレッド様の手を強く握る。
「アルフレッド様、私は何があってもあなた様の傍を離れませんから、どうかご安心を」
アルフレッド様の手をしっかり握り、2人で貴族学院の門をくぐったのだった。
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