第15話 殿下はクリスティーヌが好きな様だ~アルフレッド視点~
貴族学院への不安を募らせている中、なんとクリスティーヌが王太子殿下に呼び出されたのだ。
どうやら王太子殿下の方は、美しいクリスティーヌに興味を抱いた様だ。このままでは王太子殿下に、クリスティーヌを取られてしまう。動揺する僕をしり目に、クリスティーヌは
“この際なので、私からはっきりと断りを入れますわ。私はあなた様には、これっぽっちも興味がないと!”
と、意気込んでいた。でも、王太子殿下はとても美しい方だ。もしまた、クリスティーヌが王太子殿下に惚れたら…考えただけで、不安で気絶しそうになる。とにかく、クリスティーヌと王太子殿下を2人きりにはしたくなくて、僕も参加したい旨を伝えたのだが。さすがにそれは出来ないと、義父上に断られてしまった。
不安そうな僕の顔を見て、“しっかり断って来るから大丈夫”と、胸を叩いて張り切るクリスティーヌ。それでも僕は、心配でたまらない。もしまたクリスティーヌに捨てられたら、今度こそ僕は立ち直れないだろう。
その日は不安のあまり、全く眠れない。そんな僕の部屋に尋ねてきてくれたのは、クリスティーヌだ。
「アルフレッド様、不安で眠れないのではないのですか?」
「クリスティーヌは僕の考えていることが、わかるのかい?僕は美しい王太子殿下に、君を取られないか心配でたまらないのだよ」
力なく笑う僕を、クリスティーヌがギュッと抱きしめてくれる。
「ごめんなさい、あなたをここまで追い込んだのは、私なのですね。アルフレッド様が不安を抱くのは当然ですわ。それだけの事を、私はしたのですから。だから少しでも、アルフレッド様の不安が和らげばと思って。今日はアルフレッド様が眠るまで、ここでずっと手を握っていますわ。さあ、横になってください」
クリスティーヌに言われ横になると、ベッドに座って僕の手を握ってくれた。
「さあ、目を閉じてください。大丈夫ですわ、私はここにおりますから」
そう言ってクリスティーヌが微笑んでくれる。なんだかクリスティーヌの手を握っているだけで、心が落ち着く。この日僕は、クリスティーヌの温もりを感じながら、ゆっくり眠る事が出来たのだった。
それでも翌日、クリスティーヌを見送ると、宣言通りクリスティーヌを外で待つ事にした。
「アルフレッド様、風邪をひくと大変ですので、どうか屋敷の中へ。今のクリスティーヌならきっと、しっかり断りを入れてきますわ。ただ…殿下に無礼を働かないかだけが心配ですが…」
そう言って義母上が苦笑いしている。確かに今のクリスティーヌなら、大丈夫かもしれない。でも、僕はやっぱり心配でたまらないのだ。
クリスティーヌ、今頃王太子殿下に会っているだろう。あぁ、考えただけで気が狂いそうだ。僕の大切なクリスティーヌが、王太子殿下と2人で会っているのだ。考えれば考える程、不安が増していく。
その時だった、公爵家の馬車が屋敷に入って来たのだ。もしかして、もうクリスティーヌが帰って来たのか?嬉しくて、急いで馬車へと向かう。馬車から降りて来たのは、やっぱりクリスティーヌで、そのまま僕に抱き着いて来た。
よかった、まだ僕の事を好きでいてくれたのだね!僕もクリスティーヌをギューギュー抱きしめる。そうだ、喜んでいる場合じゃない。殿下とはどうなったのか気になって、クリスティーヌに聞いた。すると、困った顔をして考え込んでいる。
どうやら王太子殿下に気に入られてしまった様だ。子供の頃から何を考えているのか手に取る様にわかるクリスティーヌ。分かりやすい性格のところも可愛いのだが、時に非常に残酷な事もあるのだ。そう…僕の事を嫌い、怯えていた時のクリスティーヌは、本当に僕の事を嫌そうに見つめていた。
あの時の表情は、今でもトラウマものだ。おっと、話がそれてしまった。改めて殿下の事を聞くと、しっかり断って来たから安心して欲しいと、胸を叩いて伝えてくれた。
さらに僕の体が冷え切っている事に気が付いて、屋敷に戻ろうとしている。
その時だった。王宮の馬車が公爵家に入って来たのだ。中からは怖い顔をした義父上と、王太子殿下が降りて来た。
どうやらクリスティーヌは、義父上を置いて1人で帰って来た様だ。クリスティーヌに文句を言う義父上。ただクリスティーヌは、公爵の後ろにいる殿下が気になる様で、嫌そうな顔をしている。
クリスティーヌは、本当に殿下に興味がない様だ。それにしても、さすがに殿下にそんな嫌そうな顔をするのは失礼なのでは…そう思うほど、クリスティーヌは正直な顔をしていた。
そんなクリスティーヌに気が付いていない義父上が、王太子殿下をお茶に誘ったのだ。増々嫌そうな顔をするクリスティーヌにはお構いなしに、殿下が僕たちとお茶をしたいと言ったのだ。
仕方がないので、クリスティーヌと一緒に、殿下をもてなす事になった。ただクリスティーヌは僕にぴったりと寄り添い、僕たちはいずれ結婚する事が決まっていると、王太子殿下に宣言していた。
そんな中、殿下はカリーナ殿下の話を持ち出してきたのだ。その瞬間、そんな話は聞いていないと、目を丸くするクリスティーヌ。どうしよう、カリーナ殿下の事が、クリスティーヌにバレてしまった。
すぐに断りを入れた事や、僕はクリスティーヌだけを愛している事を必死に伝えた。どうやらクリスティーヌも分かってくれた様で、僕に笑顔を見せてくれた。
ただ、殿下はクリスティーヌを諦めていないようだが…
とにかく学院に入ったら、極力クリスティーヌの傍にいよう。でも…クリスティーヌは友達が多いから、また昔の様に僕から離れていくかもしれない。
もう二度と、あんな寂しい思いはしたくない。
クリスティーヌ、学院が始まっても、どうか僕の傍にいて欲しい。僕はただ、君が傍にいてくれるだけで幸せなのだから…
※次回からクリスティーヌ視点に戻ります。
どうぞよろしくお願いしますm(__)m
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。