第6話 カロイド殿下に会いに行きます
翌日、アルフレッド様の瞳の色でもある、青いドレスを身にまとい、王宮へ向かう支度をする。
支度を整え部屋から出ると、心配そうな顔のアルフレッド様が待っていた。
「アルフレッド様、おはようございます。またそんな不安そうな顔をされて。今日はしっかり断りを入れて、なるべく早く帰ってきますので」
「ありがとう、クリスティーヌ。君が僕を大切に思ってくれている事を頭では分かっているのだが、どうしても不安で…」
「今までの私の行動を考えれば、アルフレッド様が不安を抱くのは当然ですわ。本当にごめんなさい。それにしても、少し顔色が良くないです。もう少しお部屋で休んでいてください。さあ、お部屋に参りましょう」
アルフレッド様の手を取り、お部屋に連れて行こうとしたのだが。
「君が他の男に会いに行くというのに、おちおち寝てなんていられないよ!僕はずっと外で君の帰りを待っているから、出来るだけ早く帰って来てね。そう、ずっと待っているから…」
ゾクリとするほど美しい微笑を浮かべながら呟くアルフレッド様。彼の性格上、本当に外でずっと私が帰ってくるのを待っているのだろう。たとえ雨が降ろうが槍が降ろうが、絶対にその場から動かない。
私はこの背筋が凍り付くような、黒いオーラを放った微笑がずっと苦手だった。でも今は…
「出来るだけ早く帰ってきますので、どうかお屋敷で待っていて下さいませ。私はそろそろ行きますね」
「待って、馬車まで見送るよ」
アルフレッド様と一緒に、手を繋いで馬車へと向かう。
「それでは行って参ります。アルフレッド様、ちゃんと屋敷で待っていて下さいね。約束ですよ。それでは行って参ります」
アルフレッド様の頬に口づけをして、馬車に乗り込んだ。さすがにちょっと大胆だったかしら?なんだか恥ずかしくなってきたわ。
「クリスティーヌはいつからそんなに大胆な子になったんだ。さすがに私の前では、そういう事はしないで欲しいな…」
先に馬車に乗っていたお父様が、苦笑いしている。
「ごめんなさい。アルフレッド様があまりにも心配するので、少しでも落ち着いて欲しくてそれで…」
「アルフレッドはクリスティーヌに随分執着している様だからね。まあ、あの子の父親もあんな感じだったから、仕方ないな」
どうやらアルフレッド様のお父様も、あんな感じだった様だ。ふと窓の外を見ると、アルフレッド様とお母様が手を振っていた。私も窓を開けて手を振り返した。
きっとアルフレッド様、飼い主を待つ子犬の様に、玄関でずっと待っているのだろう。本当にあの人は…でも、そんな姿も私には可愛いと思ってしまう。これは前世からの推しに対する強い愛情なのだろう。
とにかく早く帰らないと。
しばらく進むと、王宮が見えて来た。相変わらず立派な王宮ね。
「着いたよ。殿下とのお茶は、私は参加する事が出来ない。クリスティーヌ、1対1だけれど、大丈夫かい?」
「カロイド殿下はお優しい方ですので、大丈夫ですわ。それでは行って参ります」
使用人に連れられ、王太子殿下の待つ部屋へと向かう。案内された部屋に入ると、穏やかな表情をした殿下が待っていた。サラサラの金色の髪に緑色の瞳をした美少年。さすがヒーロー、相変わらず顔も整っている。王子スマイルも、健在ね。
「カロイド殿下、本日はお招きいただき、ありがとうございます」
「こちらこそ、無理を言ってもらって悪かったね。どうしてももう一度、君と話がしたかったんだ。さあ、座って」
殿下の前の席に腰を下ろす。
「早速ですが殿下、父からも話は聞いているかと思いますが、私はアレスティー公爵家を継ぐ予定になっております。ですので、私とこれ以上話をしても無意味かと」
「その話は公爵からも聞いているよ。でも、この前話をしたときは、家を継ぎたくないと言っていたが…もしかして公爵に何か言われたのかい?僕に出来る事があれば、協力するから遠慮せずに言ってくれ」
そうか…
この前のお茶会では、私はまだ前世の記憶を取り戻していなかったのよね。それでこの人にノックアウトされたのだったわ。
「お心使いありがとうございます。あの日はちょっと…両親と喧嘩をしておりまして、それで公爵家を継ぎたくないと申してしまいました。本当に自分の浅はかさに嫌気がさしますわ。私は少し、感情的になってしまうところがございまして…誤解を与える様な事を申してしまい、申し訳ございませんでした」
立ち上がり、殿下に頭を下げた。
「そうだったんだね…僕にはそうは見えなかったが…まあいいよ。でもこの国では、親が子供の婚約者を無理やり決める事は禁止されている。だから、もし本当は公爵家を継ぐのが嫌だったら、遠慮なく言って欲しい」
「ありがとございます。ですが私は、元グレィーソン侯爵家のアルフレッド様を心から愛しております。ですので、私は公爵家を継ぎ、大好きなアルフレッド様と結婚したいと考えておりますの」
「そう言えば君の家には、元グレィーソン侯爵家のアルフレッド殿が一緒に住んでいるのだったね…へぇ~、彼の事がねぇ」
何だろう、この嫌な感じ。
「とにかく私は、アルフレッド様と結婚いたしますので。それでは失礼いたします」
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