天邪鬼のショウタ

京極 道真  

第1話 まぬけな天邪鬼と河童

夏休み。毎年我家は母方の実家に帰省する。小さい頃は夏休み丸々僕だけ田舎で過ごす。夏休みの宿題もなぜか田舎だとサクサク進み終わってしまう。空気が良いせいか?それに母の母、おばあちゃんはとても優しくて...ではなく

「ショウタ、寝坊だよ。」朝5時。田舎の朝は早い。昨日両親は東京に戻った。

夏休み後半は、おばあちゃんと2人だ。あー、こき使われる。トホホホー。

寝坊したらほらね。

「起きてるよ。」僕は布団を蹴飛ばし庭に出た。おばあちゃんは畑でトマトを摘んでいる。

おばあちゃんが竹かごを指さし。「ショウタ、お前はキュウリをとってくれ。」

「はーい。」僕は顔も洗わず目をこすりながら緑のキュウリを竹かごいっぱいに採った。爪の間が緑になる。苦い緑の匂いがする。嫌いじゃない。

僕はキュウリに手を...その時足元にぬるりとつめたい感触が動いている。

「ビューン、バサッ。」トマトが僕の足元に。おばあちゃんの剛速球だ。光が。

つぶれたトマトが地面に落ちている。あれ?ぬるりとした動いていた足元の感触が消えた。マムシ?

「おばあちゃん、何するんだ。びっくりするじゃないか!」

「ハハハハハ。悪いショウタ。お前が寝ぼけていないか、試しただけさ。ハハハハハ。」おばあちゃんは笑ってごまかした。

「ショウタ、トマトはとり終えた先に行くよ。キュウリ、かごいっぱいに頼むよ。」

「はーい。」朝日が昇る。眩しい。

光が強く輝きだす前のほんの一瞬の、この透明の黄色の輝きが僕は大好きだ。

「ショウタ、ボーっとしないで、終わったらキュウリは軒先まで持ってきなさい。

ご飯だよ。」

「はーい。」僕は竹かごのキュウリを1本かじった。冷たい。水みたいに、おいしい。

家の中からおばあちゃんが「ショウタ、つまみ食いはいけないね。ご飯だよ。早く上がってきなさい。」

「はーい。」僕は縁側からそのまま家の中へ。東京の家と違って玄関まで回らなくていい。田舎はどこからでも家の中へ入れる。便利だ。

「いただきまーす。」おばあちゃんは口は悪いがご飯はおいしい。パクパク食べれる。食べながら、「おばあちゃん、ご飯のあと僕、山に行くよ。植物採集の宿題が終わってなかった。」

「山に行かなくってもその辺の畑のまわりに草なんか、いっぱいあるのに。まあ、いい。じゃこれを持っていきなさい。」

おばあちゃんは”小さな銀色の鈴”をくれた。

「裏山は迷いようがないほど小さな山だ。ただし、クマに出会わないとも限らないし持ってきなさい。」

「こんな小さな鈴、何か役に立つの?チリン。音、小さいよ。」

「コッン」おばあちゃんのげんこつ。「黙って持ってきなさい。」僕はカバンにつけた。

僕は急いでご飯を食べて「行ってきまーす。」山へビニール袋と水とこっそり朝僕が採ったキュウリを2本カバンにいれた。

山の植物は興味深い。おばあちゃんの畑の植物草花は東京でも見れないこともないものだ。しかし山には大きな木がたくさん。さすがにこんなにたくさんの木々をいっぺんに手に入れることは不可能だ。今年2年生の夏休みの宿題はきっと僕が一番だ。ニヤッと顔が崩れる僕。

「助けてー!」子供の声。どこからだ僕は耳をすました。あっちだ。声の方へ走った。川に子供が流されている。川は狭く大きな岩が多い。光が。竹だ。竹が落ちている。僕は竹の長い棒を川に入れる。流された子供がつかまる。重くて引き上げれない。子供は両手で棒を少しずつ、つたわってのぼってきて川岸へ。良かった。助かった。

僕は両腕の力が、抜けてパンパン。座りこんだ。「ありがとう。君は命の恩人だよ。」子供がお礼 えっ?

えっー!!「君、河童?」「河童?」

引っ張るのに力を入れ過ぎた僕は疲れすぎて驚くのを忘れた。まあ、いい。

そうだ、河童はキュウリが大好物だ。思い込みの僕はキュウリを河童に渡した。

河童はキュウリをみて一瞬、えっ?って顔をしたが僕のキラキラまなざしを見て、たぶん、嬉しそうに、いや、普通に食べた。

僕はこの河童がしゃべれそうな気がして「君、名前は?サブ。」

やっぱりしゃべれる。「ぼくは、ショウタ。」

川の上から河童の仲間らしき大人の河童?がサブを探しに来た。

大人はチラリ僕のカバンについていた”銀色の鈴”を見た気がしたが、黙って僕に頭を下げた。サブは「ショウタ、ありがとう。またな。」

僕は「サブ。河童なのに、今度は溺れるなよ。じゃな、また。」手を振って別れた。

僕はその日の出来事をおばあちゃんに夕食の時に話した。

おばあちゃんが「河童?河童ねえ?」少し首を傾げた。そして「ショウタ、河童であれ、人間であれ誰かを助かたことは偉い!よくやった。」褒めないおばあちゃんが褒めてくれた。素直にうれしかった。

「ショウタ、風呂が沸いてるよ。入ってきなさい。」

「はーい。」僕はお風呂へ。お風呂場の窓から「バタバタ」音が。カラス?鳥?

特に気にならなかった僕は「ザッブン」お風呂に潜った。

その頃、さっきのカラスが庭先に。おばあちゃんも縁側に。

カラスは人型に変身。「おばば様。本日は我が息子サブがお孫様、ショウタ様に命を助けれてました。ありがとうございました。」

「話はショウタから聞いた。」

「ただ...。」

「なんだ、言いなさい。」

「ショウタ様はサブを河童だと思い込んだようで。」

「河童?ハハハハハ。だからか、ショウタも河童を助けたといったんだな。」

「おばば様、ショウタ様は少々、早とちりのようですね。ところで我々一族のことをショウタ様にお話はされていますか?」

「いやまだだ。我々一族が天邪鬼だということは。まだだ。チリン。」鈴が鳴る。

そして5年の月日が経った。4月。僕は中学入学。

「おーい、ショウタ。」僕を呼ぶ声。

あの時のサブだ。我々一族の天邪鬼の生活がはじまる。


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