第37話 国護結界を繋ぐ@北海道 その1


「累を預かるって話だったのに、早速離れ離れです。はぁ…」


 現時刻16:30。現在俺は飛行機の中。

シートベルトの着用ランプが消えた。ベルトを外して膝を丸めて小さくなる。

うう、膝が寒い気がする。さっき妃菜に預けたばかりの累が恋しい。


 

「すみません、私がお供で…」

「ち、違うんだ星野さん。俺は別に星野さんに不満があるわけじゃないっ」

 

「…でも寂しそうじゃないですか。私だけチームに入れませんでしたし…実力の差があるとは言え…すん」


 星野さんがメガネを外して拭きながらスンスンしてる。フォローの仕方がわからん…どうしよう。


 

(…このけったいな物に乗らねばならぬ理由がわからん)

(颯人とククノチはピンピンしておるが他の奴らはみんな丸まっておる…ワシもちょぴっとだけ怖いのう…)


 頭の中の神様たちはみんな微妙な顔してる。飛行機嫌いなのかな。

 これからククノチさんの神社にお邪魔して、結界の繋を強化してくる予定なんだけど…なぜかお供に星野さん。

 伏見さん、白黒つけようって魂胆だなこれは。

 

 鬼一さんも妃菜もついていくと散々ごねたが、陰陽師たちの研修初日を明日やるからと押さえ込まれてたな。

 星野さんは研修しなくていいのかなぁ…うーむ。



 

「星野さんは任務大丈夫だったの?突然前泊になったから、あずかりの彼女さん慌ててたね」

「大丈夫ですよ。今回は縄張り争いの妖怪達と話し合いでしたから。代わりに他の人が行きます」

「そう?いきなりすまんね…」


 星野さんがニコニコして、メガネを掛け直す。


「私は芦屋さんと二人でお仕事するのは初めてですから、とても楽しみです。伏見さんがおっしゃる、朝のおはようから夜の同衾までご一緒ですね」

「なんで同衾までする予定なの…ヤメテ」


 ふわふわ微笑む星野さん…彼女が出来て幸せなんだろうとは思う。

だが、香取神宮の時から気になってる手首の包帯は真新しいままだ。



 

 俺の目線に気づいて星野さんは苦笑いしながらジャケットにその包帯を隠した。


「芦屋さんにはわかっちゃいますね。」

「もしかしてDV衝動抑えるためにやってる?」

「はい…」

「……そっか」


 お互い目を逸らし、沈黙が落ちる。

 うーん。うーん。どうしたものか…。


 

「そ、そう言えば累さんは結局身元が不明なままなんですか?」

「そうみたい。しばらく俺が預かることになったよ」


 星野さんが話題を逸らしてきた。俺もまだ考えがまとまってないから乗っておく。

 自分と戦ってる星野さんをただ見守るしかなくて悔しいけど、今日は何かのきっかけになるかな…。

無理やり笑顔にしてるのを見るとやるせなくなってくる。


 

 

「そうですか…不思議な子ですよね。精霊を宿しているなんて。そう言えばトメさんとフツヌシノオオカミに勾玉をいただいてましたね」

 

「あー、うん、そうだねぇ」

「手慣れていたように思いますが、もしや他の神様からも頂いてるのですか?」

 

「そうか?まぁ色々あるんだよ…ワハハ」

「そうですか…」


 

 くっ。キツい。どこまで話していいのかわからん。今日は目の呪もないし、東京からも距離があるからそこまで警戒しなくてもいいんだろうけど。

 

 妃菜が言っていた通り、星野さんが俺を仲間だと思っていてくれても、お兄さんが敵側な以上秘密結社に紐づく話はできない。本人を危険な目に合わせたくない。

かと言って星野さんに嘘をつきたくはないし…。


 飲み会で話した時の…あの眼差しが嘘なはずがない。新しくできた彼女を大切に思って、自分を傷つけてしまう彼が悪い人であるはずないんだけどさ…。

こう言うの、やだな。やーだなーーー。



 

(勾玉や身の内の五行は話さん方がいいじゃろう。危うい会話はワシがみゅーとにしてやるわい)

(魚彦…助かる。よろしく頼むな)

(応)

 

 魚彦の力強い返答にため息が落ちる。どうしたらいいんだろうな…気が重いよ。


 

 重いため息を再び落とし、窓の外の雲海を眺める。窓越しにしょんぼりしてる星野さんに気づいて、もう一度ため息を落とした。


 ━━━━━━



 

「すみませんねぇ、賑やかしくて」

「と言うかこちらこそ申し訳ないです。完全に失念してました」

「いえいえ、お気になさらず。本来7月初旬に行うお祭りをずらしているのですから。ご存じなくても当然です」


 

 ピーヒャラドンドコお祭囃子に、人のざわざわした声。たくさんの提灯が夜の参道に灯りを灯している。

神職さんにばったり鉢合わせて、樽前山神社たるまえやまじんじゃにお邪魔してます。

 現時刻 19:00。到着した神社の境内では夏祭り真っ最中…。もーーしわけなさすぎる。

 

 たくさんの屋台が立ち並び、大勢のお客さん達がめいめいお祭りを楽しんでるみたいだ。

せっかく北海道だし、夕飯がてら下見だけでも…と来てしまったのが良くなかった。俺たちは完全におじゃま虫だ。


 

 

「参拝は後ほどでもいいですか?」

「はい!もちろんです!!」


 ニコニコしながら社務所に案内してくれた神主さんも、ハッピを着て鉢巻を巻いてる。背の高いおじいちゃんだ…ムキムキではないけど背筋が伸びて、歩く姿が凛々しい。

 お茶でも持ってきます、と奥に引っ込む彼を見送り、静まり返った社務所で椅子に座る。



 

「星野さんもごめんな、俺うっかりしてた…」

「謝らないでください。私も忘れていました。ここのお祭りは今日でおしまいの様ですから、多分一番忙しい日でしたね…」

「そうだよなぁ…がっくし…」

 

 それは本当にそうだと思う。

 社務所の前を行き交う人たちはみんな笑顔で生き生きとしてる。

巫女さん達も忙しそうだ…。

 そう言えばお祭りとかちゃんと来たことがなかったな。屋台って何があるんだろう。太鼓叩いてたのはどこでやってるんだ?神楽とは音が違うからでっかい太鼓なのかな?


 

「ソワソワしてますね、芦屋さん」

「うっ。ハイ。お祭りに来たことないからさ」

 

「私もです。後で屋台を覗きたいですね。夕食はそちらにしませんか?」

 

「そうしよっか。小銭たくさん持ってきてるしさ。あれだ、粉物系とかあるんだった気がする」

 

「かき氷もあるはずですね」

「かき氷なぁ…本当に夏の気温なら良かったんだけど…」


社務所の中にある石油ストーブに手をかざし、かじかんだ手を温める。

8月になってるって言うのに、外は雪模様。いくら北海道だからって…おかしいよ…。天変地異は仕事しすぎ。

 急な前泊はこれが理由かな。言ってよ伏見さん!


 


「夏祭りなのに雪が降ってるのは恐ろしいですねぇ」

「本当にな…社に手を加えれば異常気象も少しマシになるはずなんだが…お祭りは終わっちゃうね」

 

「そうですね、夜に社を建てるのは良くないですし」

「夜は雪見の祭りを楽しめばよかろうて。寒いとは思うがのう。ほっほっほっ」

 

「そうしよう。ククノチさんその薄着でよく平気だな…」


 

 颯人と魚彦は寒いからと俺の中にこもってる。

ククノチさんだけ顕現して美味しいものでも食べようと思ってたから、薄着で出て来てしまって寒くて寒くて凍えそうだ。

 ククノチさんはいつもの修験者姿のまま寒さにも全然平気な顔してる。

どうなってんのさ。もしかしてあったかいのかその服。

 


「あーさむい…だめだ、颯人ぉ〜!頼むぅ」

(情けない声を出すのではない…応)


 颯人は中にいるから寒くないだろ!!

 ほわほわ、お腹からあったかさを生み出して颯人が呆れてる。

足の指先まで冷えていたそれに血が通って、感覚が戻って行く。おわー、ピリピリするぅー。

北海道の寒さやばい。舐めてた。


 


「それにしても、神主さんが戻ってきませんね?」

「そう言えば…どうしたんだろ」

 

 ん……?

 なんか…怒鳴り声が聞こえるぞ。

 


「騒ぎが起きておるな」

「裏手かな」

「そのようじゃ」


「颯人、暉人」

「「応」」


 二柱を顕現して社務所の裏手からドアを開けると、言い争う声が聞こえる。あちゃー、気づくのが遅かったな。

 

 声の方に走っていくと、神主さんと男性二人。街灯の下でなんだか怒ってるな。


 

 

「うるせぇな…タバコ吸っただけでなんなんだよ!」

「今日はお祭りで子供さんもいます。それに神社の境内は禁煙です」

 

「はぁ?誰が決めたのそんな事?」

「偉そーに言ってんじゃねぇ!」


 神主さんに手を伸ばす男の腕を暉人が掴み、ぺいっと放り投げる。

二柱が腕組みして仁王立ちになった。

 


「…神主さん、お怪我は?」

「は、あ、ありません…」

 

 ん、よし。神主さんはびっくりした顔で固まってるけど無事みたいだ。


 

 

「あのさ、神社の境内は神聖な場所だ。禁煙って看板にあるだろ?」

 

「はぁ!?うざ…てか誰だよ」

「通りすがりの関係者だよ。タバコ吸うなら喫煙所に行ってくれ。神様に失礼だ」

 

「神様wwwいるわけねーだろそんなもん!マジやべー」

「バカじゃねww」


 

 ケラケラ笑ってるけど君たちの目の前にいるの、神様ですよー。

 懲りずに胸ポケットからタバコを取り出して、ライターを見せびらかしながら去っていこうとする二人。

暉人が男の肩を掴んだ瞬間、拳が飛んでくる。

 


「バーカ!お前が先に手ぇ出したんだからな!」

「肩掴んだだけでか?なってねーな、ぬるい拳振るいやがって。痒くなってくるぜ」


 顔に拳を受けたまま暉人が言葉をかける。びくともしてないな、さすがです。

 あっ、翻訳つけてなかった。

 人相悪目の二人がびっくりしてる。

 


「は?え?何語?」

「はいはい、暴力はやめましょうねー」


 柏手を叩き、翻訳の術をかける。

 …アレ。


 タバコを咥えたままマナー違反の彼らがひっくり返ってしまった。


 

 

「え、なんで?」

「真幸…ただびとの前で術をかける時は、気をつけねば気絶してしまうぞ?お前さんは霊力上がりまくりなんじゃから」

 

「ククノチさん、そう言うの早く言って」

 

「ふ、いい薬になろう。戻るぞ暉人」

「応」

「二人ともありがとな、お戻りー」

 

 苦笑いした颯人と暉人が体に戻り、ククノチさんは伸びた男達をツンツンしてる。こら、やめなさい。



 

「あ、あの…」

「神主さんごめんなさい、後でこの人達を…ん?」


 神主さんがアワアワしながら、蹲った星野さんを見てる。

 

「星野さん、どした?」

 

 しゃがみ込んで星野さんと目を合わせる。

真っ青な顔して、へたり込んだままジャケットを胸元で掴み、荒い息を繰り返して声が出ない。


「神主さん、あの人達任せてもいいですか?ククノチさん、手伝ってあげてくれ」

「応」

「は、はい…」



 

 みんながいなくなって、静かになった。

 星野さん…これは過呼吸だな。

 彼の顎から汗が伝い…ぽたり、と雪の上に落ちる。


 

「よいしょ。星野さん、こっちおいで」

 

 雪の上に座って、星野さんを引き寄せる。体を震わせてされるがままになってるが、目線はちゃんと動いてるから意識は問題ない。

体を抱き寄せ、おでこをくっつけた。


「びっくりしちゃったかな、首触るよ」

 

 背中を撫でて、首の脈を測る。

 うん、落ち着けば平気だ。


 

「星野さん、過呼吸はちゃんと治るからね。ゆっくり息を吐くんだよ。俺だけ見ていればいい。一緒にやろっか」


 

 涙を浮かべ、汗びっしょりの顔が必死の形相で見つめてくる。

フラッシュバックが起きたな。暴力を見てしまったからだ。…ごめんな…。

 

 過呼吸の場合は深呼吸じゃなく、脈拍を落として息を吐き切ることが大切。

心を鎮めて、たくさん吸ってしまう酸素を出してやればいい。

二人でゆっくり息を吐き出し、それがホワホワと白い湯気になって黒い空に溶けていく。


 

 

「フー…ゆっくり吐いて…少し吸って、もう一回ゆっくりゆっくり吐いて。フー……そう、とっても上手だよ。ちゃんとできてる。大丈夫」

 

 おでこをくっつけたままの星野さんがポタポタ涙をこぼす。

苦しいな、もうちょっとだからな…。


 何度か呼吸を繰り返すと、揺れていた瞳がしっかりしてきて、目線が合う。

 

 しばらくして震えが止まり、顔色が戻ってきた。メガネを外して涙を拭ってる。もう、大丈夫だな。



 

「すみ…ません…情けない真似をして…」

「ん、落ち着いてよかった。そんなの気にしないでいいから。もうちょっと休んでから戻ろう。吐き気は?頭痛くないか?指先が痺れてたりしない?」

「はい、大丈夫です…」


 


 星野さんの冷えた体を抱きしめて温める。颯人がくれた熱が星野さんに移って、心音が落ち着いてきた。


 

「あったかいです、芦屋さん」

「ふふ、そうだろ?颯人のおかげなんだ」

 

「体温じゃないです。いえ、暖かいのはそうですが…過呼吸の対処なんて、よく知ってましたね」

 

「経験もあるし何回も見てるからさ。男同士で悪いけど、人肌が一番落ち着くんだ。もうちょっとこうしてような」

「はい…」


 

 体の力を抜いた星野さんの背を撫でてると顔が肩に落ちてくる。

彼はまだ、苦しみの中にいる。

 俺たちのチームに入れてしまって、いろんな事に巻き込むのは良くないな。

 

 伏見さんにも、そう伝えよう。

 

 

 背中をトントン叩きながら、雪が止んで黒く広がる空、そこに浮かぶ赤い提灯の群れを眺めた。

 

━━━━━━


 


「ご挨拶が遅れましたが、神主の前崎まえさきです。先ほどはありがとうございました」

「いえいえこちらこそ。俺は芦屋、彼は星野です。さっきの人大丈夫でした?」

 

「はい、気づいてすぐお帰りになりましたから」

 

 社務所に戻ってあったかいお茶をもらってホッと一息。

どこの神社でも美味しいお茶をくれるのは本当にありがたい。寒さの中にいたから余計に美味しく思える。

 星野さんが気まずそうに頭を下げるのを見て、前崎さんがニコッと微笑んでくれる。

何も聞かないでいてくれるんだな。前崎さん、優しい人だ。

 


 

「その…失礼ですが、そちらにいらっしゃるのはククノチノカミ様でしょうか?」

 

「あ、そうです。すみません、何もかも後回しにしてしまって。…うちの伏見からお聞きになってます?」

 

「ええ、全て滞りなく伺っております。それに、先立って芦屋さんがお手紙を下さいましたでしょう。

 式神をお持ちの陰陽師殿は久し振りですよ。素晴らしい術でした」

 

「あ、はは。照れますねぇ」


 伏見さんが珍しく事前に『芦屋さん以外には詳しく話さないように伝えてあります』と言われてたから大丈夫だとは思うけど、ちゃんと伝わってるみたいで安心した。



 

「あの!芦屋さん式神をお持ちだったんですか?!」

「うん、社を建てた所には手紙を送って御礼をしてるんだ。式神って程じゃないけど。鳥の形で霊力を飛ばすってのを颯人に習ってるとこ。」

「はぁぁ…すごいですね…」


 初期の頃に習ってはいたけど、使ってるのは御礼に手紙を送る時だけだから、まだ鬼一さん達にも話してはいない。

キラキラした目の二人に見られて照れ臭いぞ。


 


「さて、社を建てていただくのは明日にしましょう。今からいくと遭難してしまいますから」

「そうですね…山登り、実はそんなにしたことがなくて」

 

「装備はお持ちですか?」

「一応は。ただ雪が降ってるとは思いませんでした。軽装で来たからちょっと心配です」


 苦笑いで返事しながら、宿に置いてきた登山の荷物をほわほわと思い浮かべる。…ヤバいかも。


 

 

 ここ樽前山神社は、奥宮が樽前山の山頂にある。明日は速歩はやあしの術で山登りするんだ。神社にククノチさんの助けで国護結界の繋は置いたけど、より強固にするには神様がいる山頂に行かなきゃならない。

 天変地異が治ってないから、今のままでは効果が薄いんだろうとわかる。

 

 星野さんはハラエドノオオカミにおんぶしてもらう予定なんだけど、どれだけ寒いかな…俺はいいとしてあったまる術がない星野さんに、俺の上着を足しても足りるかどうか。


 

「もし良ければダウンの上着をご用意しましょうか?軽装ではお寒いでしょう」

「わー!助かります。お願いします!」

「はい」

 

 良かったー!ありがたやー!これで明日は何の心配もなさそうだ。

ニコニコした前崎さんがククノチさんを見てる。ずっとチラチラ見てたし、もしかして会った事ないのかな?


 

「そのように見られると穴が開きそうじゃのう」

「す、すみません…私は神職ながらも神様とお話しすることが出来なかったので…ククノチノカミ様のお姿もお声も初めてなので、つい」

 

「お主は勤勉だが会話は苦手じゃったな、大山祇神オオヤマツミノカミは奥宮に引き篭もりかのう?」

「はい、済みません…。主祭神様はお臍を曲げていらっしゃいます」

「ほっほ、そうかそうか。明日は叱ってやらねばならんな」

 


 主祭神が臍曲げてるの?なんでだ??ククノチさんがイタズラな顔で微笑む。


「あやつは元々へそ曲がりなんじゃ。真幸に絆されてくれれば助かるんじゃが」

「……善処します」

「ほっほっほっ」


 うーん。臍曲がりの神様を絆すとかハードル高い。頑固な神様じゃなきゃいいんだけどなぁ。



 

「では私も、そろそろ片付けに参ります。お祭りの屋台に行かれるなら、上着をそちらにお持ちしますよ」

 

「えっ!良いんですか?」

「はい、東京と比べるとどうでしょうかね…楽しんでいただけると良いんですが」

「お祭り初めてなんで、楽しみなんです。じゃあ、また後で!」

「はい、ごゆるりと」


 

 ごちそうさまでした、と伝えて前崎さんに見送られ、社務所を出て…まずは本殿にご挨拶だ。

 提灯の灯に囲まれて、雪を踏みしめながら歩く。きゅむきゅむと雪を踏む音がお祭りを楽しむ人たちの声に重なって、ワクワクして来る。

 


 

 星野さんと並んで本壺鈴を鳴らし、二拝して柏手をたたく。

ククノチさんはなんだか満足げな顔してる。

 ちゃんと来られて良かったよ。国護結界を繋いだだけで、ここの神様と話もしてなかったもんなぁ。

 

 手を合わせて目を瞑る。


 オオヤマツミノカミ、挨拶が遅れて申し訳ありません。

また明日、会いに行きます。臍曲がり直してくれると嬉しいです。


 目を瞑り、しっかり拝して胸元から財布を取り出す。



 

「さぁっ!屋台に参るぞ!星野殿!」

「はいっ!」


 テンションアゲアゲで階段を降り、屋台に突撃だ!

 

 


 

  

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