39.ドミニクの回想


 俺様の魔王討伐の旅はまじで順調そのものだった。


 カズヤとかいうミキちゃんのおまけの勇者が手こずり、いや、死にそうになっても歯が立たないアースドラゴンを一蹴し、そのまま地底の王アンダーリッシュも倒した。

 流石に魔王幹部だけあってアンダーリッシュはそこそこ手こずったが、俺様の敵じゃなかった。


 俺様には心強いハーレムの女もいるしな、まじでいいオンナたちだ。

 回復防御のマリア、強化弱体支援のアリス、強力な攻撃魔法の使い手モニカ、この3人のバランスは最高だ、ちなみに巨乳普乳貧乳の順番だ。性格も清楚系大人しめ系活発系と揃ってる、まじ最高。

 こいつらは俺様ベタ惚れの美人で、俺様は好みの露出多めの装備を着させ、道行く野郎どもに見せびらかし、気が向いたら昼夜問わず気の向くまま、まじで干く暇がねえっつうか。

 ちなみに朝の目覚まし当番だけは決めてある、これだけは決めとかないとまじであいつら朝っぱらから俺様を奪い合うからな、偶にはそれも良いんだが。


 こいつらに加えてあのエルフのミキちゃんも手に入っていれば完璧だったが、ミキちゃんの結界があそこまで固くちゃな。

 ま、次に会った時にはカズヤをボロボロにして実力の程を分からせて、眼の前で奪ってやろう。それはそれでまじ楽しみだ。


 ミキちゃんはまじで極上の美人エルフだった。

 まず金髪ストレートは人間とは比べ物にならない綺麗で艶のある細い髪、それに白くてきめ細かい肌、鼻は小さくツンとしてて、瞳がぱっちりまつ毛も長く二重で。さらにエルフ特有の長い耳がいやらしく可愛い。むしゃぶり突きたい。

 声も鈴が鳴るようで、それでいて落ち着いた声なんかも色気があってもっと聞いていたかった。泣き叫ぶ声なんかも最高でそれだけで俺様はイキリ立ったね。ベッドでの声も相当堪らんだろう。

 身体にしても全体の線が細いのに巨乳でさらにくびれが際立ち、足も長い、完璧なスタイルだ。

 エルフゆえに寿命が長く、俺様が死ぬまで若いままというのも最高だ、人間は老化をどうしても避けられないから、今は若くて綺麗でも10年20年で考えたらエルフには敵わない。老後の面倒も若いまま見てくれると考えたら最高だ。


 やばい、思い出してたらあの時見逃すんじゃなかったと後悔し始めた。失敗だったな、地底の王なんかほっといて強引にでも奪っとくんだった、まじ失敗だったわ。



 その後の俺様は攻略が済んだダンジョンには興味がねえので王様との謁見後、早々に魔王領へと向かう事を決めた。

 道すがら、いくつかダンジョンを攻略していったが魔王幹部はおらず雑魚ばかりで結果的にはまじな無駄足に終わった。

 ダンジョン攻略で何日も使ってなけりゃ追いつかれる事も無かったんだろうがな。


 魔王領に入ったが、まじで雑魚しかいなかった。

 魔族なんかとも戦ったが覚醒した俺の相手じゃなかった、ありゃAランクか?まあSランクの俺様の敵じゃねえ。俺様まじで強すぎか?


◇◆◇


 そういえば最前線の街、エキゾントにいる時、ギルド長から魔王討伐に向けて動いている他の勇者の情報を聞いた。

 その中にあのカズヤの名前があった。

 確かあいつBランクだったはずだ。おいおい、あの程度で魔王討伐出来ると考えているなんて、まじでバカなやつだ。俺は笑い飛ばし、そのままギルドを出た。ギルド長が何か言っていたが聞いて無かった。


 Bランク、まあ頑張ってもAランク程度か?

 その程度で魔王討伐なんてな、なんて目出度い奴だ。……いや、そもそも魔王が大した事が無い可能性もあるのか、魔王幹部であの程度だ、俺様の様にSランクでパーティメンバーに恵まれていればまじで余裕かもな。


 なんせ俺様は光属性の勇者様だからな!

 魔王は当然闇、そして俺は光、どこからどうみても俺様が魔王を倒すのは必然だろう!

 せいぜい頑張って魔王幹部の数を減らしてくれよな。

 その間に俺様が魔王を倒しといてやるから。


 俺様の覚醒”光条覚醒”は真の勇者らしく光属性の覚醒だ。

 覚醒中は光の如き速さで動き、俺様の光芒剣が敵を貫く、魔族との相性は非常に良く、魔王幹部の地底の王といえど敵じゃなかった。

 まじで魔王を倒す為に生まれた、そう思っていた。


◇◆◇


 俺様は魔王領への中途で1日しっかり休んで最後の戦いに向けて英気を養った。

 まじ休養大事な、ちゃんと休養できたかは怪しいもんだが。まあ敵地のど真ん中でヤるのは中々に興奮した。

 そして、魔王城へと向かった。


 門番を倒し、正面から突入した。

 流石に魔王城の門番だ、光条覚醒を使用しないと楽には倒せなかった。

 さらに魔王城内部の敵はどいつもこいつも曲者ぞろい、しかも小粒がぞろぞろ群れをなして、では無くて大粒がごろごろ出てくる状態だった。


 やっとまともに歯応えがある敵だった、ただ光条覚醒無しでは苦戦必死だったので、休みながらやっと魔王城内部を探索し終えて地下への入り口を見つけたのだった。まじでだりぃ。

 地下に降りたのでこれから本格的な戦いになるだろうと判断した女たちの提案で俺様達はまず休んで回復に努める事になった。俺様はともかく、女たちにとっては厳しい戦いのようだ。

 本当に疲れていたようなので俺様は手を出さずに、ちゃんと休ませた。


 地下で休みが終わり、そろそろ動こうかという時、何者かが地下に降りてきた。

 それは別の勇者パーティ、ロイたちだった。


 そういえばギルド長が言っていた、2組の勇者パーティのうち1つだったか。

 初対面だったが気になる事が2つあった、1つはこのパーティにも俺様の女たちと同等の美人がいるという事と、もう1つは勇者ロイよりまじで強そうなおっさんがいるという事だ。


 俺様は慎重に、努めてフレンドリーにロイたちに接し、話を聞いた。

 どうやら、その美人はクラウディアと言う名前らしく、残念な事にロイの幼馴染で恋人らしい。平時ならともかく、魔王城で人の女に手を出すほど愚かではないが、一気に興味を失ってしまった。

 他にも女が2人いたがこちらは俺様の趣味じゃなかったのでパスだ。


 それにしても……ジョセフと言ったか、このおっさんは強い。ロイよりもだ。元勇者らしく、多分Sランクはありそうだ。てことはロイはAランク程度か?

 やはりSランク勇者は俺様だけらしい、やっぱり俺様が魔王を倒す運命のようだな。


 一緒に休み、分岐路で二手に分かれた。

 運が良ければまた会う事もあるだろう、俺様が魔王を倒した後にでもな!


 そうして地下ダンジョンを探索し続け、大広間に出た。


◇◆◇


「──さて、当たりか外れか」


 大広間の奥から人の姿をした何者かが現れた。

 すぐに分かった、こいつは魔王幹部の一人だ、と。女たちに警戒を促す。


「お前、名前は?」


 魔王幹部が名前を聞いてきた。自分は名乗らずにこいつまじ失礼な、自分から名乗れっての。


「まず自分から名乗れ!お前は何者だ!」


「確かにそうだな、失礼した。では教えてやろう、俺の名はブリッツ、魔王様から雷帝と呼ばれている」


 ほう、こいつが雷帝か、随分と御大層な名だ、どうせこいつも地底の王と同じように名前負けしているのだろう。

 さて、俺様の名前を聞いてビビって貰うとするか。なんせ俺様はお前の同僚である魔王幹部をすでに倒しているのだからな!


「雷帝とやら!俺様の名を教えてやろう!俺様はドミニク!地底の王を倒した男だ!冥土の土産に覚えておけ!」


「名前を聞いておいて名前を呼ばないとは失礼なやつだ。それにしてもドミニクか……外れだな」


 がっかりそうにため息をつく雷帝。まじかこいつ、なんだその態度は!


 ──いや、そうか!俺様には勝てないから、外れだという意味か。

 そうだろうとも!魔王幹部を倒したドミニク様は同じ魔王幹部を倒すだろうと、そういう事か。自分の不運にため息をついたのだ!負けを覚悟するしかない自分にな!

 その期待、応えてやろうじゃないか!


「一瞬で終わらせてやるから安心しろ雷帝!マリア!アリス!モニカ!いつものように頼む!」


 光条覚醒してすぐに終わらせてやる。

 まずは防壁魔法をマリアに、強化と弱体化をアリスに、そして覚醒するまでの時間稼ぎをモニカに任せ、俺は剣を縦に構え目を閉じて覚醒に集中する!


「お任せください」「分かりました」「おっけー!」


 それぞれ俺様の女たちが応え、魔法を使う。

 少しすると防壁が、強化魔法が、攻撃魔法の音がする。

 が、しかし


「きゃあッ!!」

「モニカさんッ!!」

「モニカッ!」


 雷鳴がして、モニカと女たちの声が聞こえた、やはり一人で魔王幹部相手に時間稼ぎは辛いか。だが、もう少しだけ待ってくれ!


「モニカ!もう少しだけ、まじ持ち堪えてくれ!」


 そう呼びかけるが返事が無かった。返事をする余裕がないだけだと想いたいが……。胸騒ぎがする。

 そして光条覚醒が発動した!


「よし!待たせたな!」


 目を開けると、そこにはモニカが倒れていた。

 まだ息はあるようだが、いつものような元気さは見る影も無くなっていた。


「貴様ぁッ!!俺様の女にッ!まじで絶対に許さん!!!!」


 俺様は激昂した。

 怒りが更に俺様の強さを引き出したような気がした。

 一瞬で終わらせるつもりで雷帝に飛びかかる。


「【マジ光芒閃光斬こうぼうせんこうざん!!」


 それは光の速さで踏み込み、光を纏い闇を振り払う一撃の極み。

 光条覚醒状態でしか放てない、本気と書いてマジな究極奥義だった。


 ──しかし、雷帝はそれをいともあっさりと光を放つ剣で受けた。


「遅い」


 雷帝はそのまま光る剣を軽く振り払った。

 俺様はそれをなんとか受け止め、一度距離をとった。


 ──なぜだ!?


 【極】光芒閃光斬は光の速さの技だ、それを受け止めるなんて、あまつさえ遅いだと!?

 嘘だ!!そんな事は何かの間違いだ!!


「どうした、もう終わりか?」


 そ、そうだ!さっきのは傷ついたモニカを見て気が動転していた、だから技に集中出来なかった。だから遅かったのだ、そうに違いない!

 雷帝は油断しているのか剣を下ろしている、今なら、光の速度なら!今度こそ本気のマジだ!


「【極】光芒閃光斬!!」


 叫ぶと同時に技を発動し、斬りかかる。今度こそ仕留めて見せる!


「やはり遅いな」


 !?!?

 またしても剣で受け止められ、そのまま払われる。


 今度は確実だったはずだ。遅い!?嘘だ!?光の速さだぞ!?地底の王はこの技であっさりと倒せたんだぞ!?

 嘘だ!嘘だ!こんなのインチキだ!


「遅いわけ無いだろ!光の速さだぞ!どんな魔法を!インチキをしてるんだ!」


 雷帝はまたしても剣を下ろし、余裕で呆れたように応えた。


「事実を言ったまでだ、お前の剣は光の速度でもなんでもない、ただの速い剣だ。──なんだ?もしかして本当に光の速度だと思っていたのか?──そうか、だからあんな大層な名前をつけていたのか。これは傑作だ。面白いなお前、良いピエロだ」


 俺様はもう何も言えなかった。一度だけなら偶然もある、だけど、2度も防がれた。

 俺様の剣は、閃光斬は、光の速度じゃなかったのか?頭が正常に働かない。

 だけど、ひとつだけハッキリした。

 ──雷帝には、俺の剣は通用しない。雷帝には、勝てない。


「おい、お前、ドミニクとやら、お前は最後まで生かしといてやる、ちゃんと見ておけ」


 顔を上げると雷帝は手をマリアとアリスに向けていた。

 そして、何事か呟くと落雷が2人に直撃し、叫び声を上げ、動かなくなった。


「マリアッ!!アリスッ!!」


 最後まで生かす?それはつまり、俺様の女たちを先に殺すという事か!?

 そんな事は許さん!俺様の女に手を出すな!


 近くに倒れているモニカを抱き上げ、マリアとアリスの元へ。

 どうやらまだ息はあるようだ、だが、これ以上はさせん。


「雷帝ブリッツ!お前は死んでもマジで許さん!」


 剣を構え、飛びかかる。それがたとえ、届かなくても。


「うるさいやつだな、せっかく最後にしてやろうというのだ、大人しくしていろ」


 あっさりと剣を受け止め、そのまま切り払う。それは今までと違って、俺には見えなかった。

 そのまま蹴り飛ばされ、転がった。


「おい、忘れ物だぞ」


 そう言って何かを投げてよこした。

 それが自分の右腕だと気付くのに少しの時間が必要だった。


 それは、受け入れがたい事だった。


 受け入れられず大声を上げて叫びたかった、激痛を感じ吐き出したかった。右腕を失い、悲しくて泣き出しそうだった。

 だけど、俺様は勇者だ。それに後ろには俺様の女たちがいる、ここで泣き喚くなんて、そんな格好悪い事が出来るわけがない!!


 だけど、マリアの防壁をあっさりと突破し、覚醒状態でもそれを貫通し、腕を断たれた。

 そんな事が出来るなんて、どうしようもないほどの実力差を痛感するしか無かった。

 しかしそれでも、俺様がやらなきゃ女たちが死ぬ。それだけは見逃せない。


 落ちている右手から剣を外し、左手に取り、立ち上がって構えた。

 活路は見えない、これも無駄な抵抗だ。

 分かってる、マジで。

 でも、立つしかなかった。


◇◆◇


 そんな時、光が走った。

 それは光の如き速さで、俺の目には捉えられず、一瞬で雷帝に切りかかっていた。


 その黄金のオーラには見覚えがあった。

 だけど、やつには相棒のミキちゃんがいたはずだ、だけど、どこにもいない。

 という事はやつじゃない、じゃあ、雷帝と互角に戦っているあいつは


 ──俺とは次元の違う強さの、あいつは誰だ。

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