サ○エさんも今は昔

内藤晴人

昼下がりのスーパー

 後は食パンを買えば、必要なものはすべて揃う。

 いつものスーパーを左回りに一周し、カゴの中を確認する。

 今日の夕飯は作るのが面倒なので、ファストフードのハンバーガーと決めているから、買ったものは不足してきた調味料や常備菜に朝食のパン、そんなところだ。

 土曜日ということもあるのだろうか、一週間分の買物をまとめてしていると思しき家族連れが結構いる。

 そのせいか、レジ待ちの列は結構長くのびていた。

 とりあえずそのうちの一つに並ぶ。

 自分の番が来る前にポイントカードを用意しておこう、そう思いたち財布を出すべく私はカバンをあけた。


 ……あれ?


 ごそごそと、カバンをの中を漁る。

 たくさんの使いもしないポイントカードでパンパンに膨れた豚財布だ、すぐに手に触れるはず。

 触れるはずなのだが、なんだかおかしい。

 恐る恐る、私はカバンの中をのぞき込む。


……やってしまった!


 無い。

 カバンの中には、財布が無い。

 そうこうするうちに、順番は刻一刻と迫ってくる。

 ここまで順番を待ったのだ、今更商品を返して家には帰りたくない。

 加えてこのスーパーまで、家から往復約三千歩かかるのだ。

 そんな二度手間したくはない。

 ではどうする?


……そうだ、ここは確かキャッシュレス決済ができたはず!


 幸いにも私はスマートフォンを持っていた。

 まず、交通系電子マネーの残高を確認する。

 五百円強しか残っていない。

 これでは足りない。

 迫りくるレジの順番。

 次に開いたのは、バーコード決済アプリだ。

 やはりこちらも百円単位の残高しかない。


……万事休すか? いや、ちょっと待て!


 確かこのアプリ、ネット銀行と紐付けしてたはず。

 チャージのアイコンをタップし、二千円入金する。


「お待たせいたしました、どうぞ」


……間に合った、良かった……


 こうして、間一髪私は危機を脱したのだった。

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