第121話 流石詐欺師、手際がいい
「大丈夫。後は任せて」
公爵家の親子喧嘩に介入する許可をもぎ取ったスタンの行動は早かった。
まず暴れる私をモーリスに取り押さえさせて、回収。加害者と被害者を同じ屋敷におくのは危険だと、手当の名目で公爵を隔離。
繰り返す。
公爵を隔離。
怪我人の公爵を回収して、本邸に放り投げた。
…ここ、公爵家の別邸だったらしいわ。なんか本邸の隣にある別邸で、本邸に比べるとこじんまりしているのだとか。
三階建てのくせにこじんまりってなにを言っているのかしらね。庶民にはわからないわ。
公爵令嬢? 貴族として育てられた記憶などございません。
そして別邸で働いていた使用人はそのままに、私とお母さんの身の回りの世話をする人員だけを追加。スタン達の屋敷で過ごしているときに色々手伝ってくれた侍女さん達が公爵家別邸にやって来た。私が使用していた荷物も持って。
そしてようやく私とお母さんは、まともな服を着ることができた。
おかしいわよね。なんでまともな服がないの?
この年でこのネグリジェはきついって頭を抱えるお母さんの気持ちを汲みなさいよ。もう一発ぶん殴るわよ。
そう思って拳を握った瞬間、お母さんにそっと拳を下げさせられた。
…な、殴らないわよ…。
本当よ…。
だって殴る相手が傍にいないし!
…哀しげな目で首を振られてしまった。
公爵をぶん殴った私の手も負傷した。打撲と捻挫の全治二週間。右手がじんじん痛むけど、後悔していないわ。
なんだったっけ…そう、スタンは徹底的に私達と公爵を引き離した。
保護だ、と言ったのは日が昇ってからやって来たエヴァ。
昨日の夜会で先に帰されたエヴァは、わざわざ学園を休んで説明に来てくれた。
…その場にいなかったエヴァの方が詳しいってどういうこと?
「公爵はメイジーもですが、夫人のことも他者に一切を任せませんでした。お二人を知らない使用人の方が多いところに、お二人を置いておけません。しかし夫人が【公爵夫人】であることは間違いないので、まずはこの別邸から意識改革…女主人として、振る舞いを覚えて欲しいそうです」
「確かに私、何も知らないししていなかったからなぁ…存在が明かされても認められるわけがないわよねぇ…若い子に迷惑をかけてごめんねぇ…」
「わたくしにとっては予習になりますので、お気になさらないで下さい」
車椅子に座ってしょんぼり肩を落とすお母さんと、やけにキリッとした表情のエヴァ。
エヴァがお母さんの補佐について、家政について勉強することになった。今までお母さんが放棄していた公爵夫人としての責務の一つ、らしい。
…公爵がいない間に使用人の一部を掌握しようってこと? 今までいなかった夫人の味方を増やすって?
その公爵は本邸で療養中だけど、スタンによって色々追求されている。その隙を縫ってお母さんに公爵以外の繋がりを持たせる心積もりらしい。
公爵が怒り狂う? 知るか。ぺっ!
お母さんの足を再起不能にした罪は重いわ、マジで!
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