第109話 親子でした
それってロドニーの初恋の?
公爵に監禁されているともっぱら噂の?
二十年は社交に出ていない、スタンですら絵姿でしか知らないという、あの?
は?
「待って、エフィンジャー公爵夫人って、ナディアって名前じゃなかった!?」
お母さんの名前はネイだ。ナディアではない。
「偽名だったの。本名はナディア・エフィンジャー」
「なんで偽名を使ってまであんな田舎町に公爵夫人がいたの!?」
しっかり庶民していたのに。令嬢らしさなんて、家事ができないことくらいだった。
天蓋の向こう側で姿勢を正したお母さんは気まずそうにぐらぐら揺れている。
「公爵は、それは愛妻家で仕事が遅くなるときは必ず妻に直筆で謝罪の手紙を書いていたし、休日は絶対仕事を持ち込まず妻の傍に侍っていたと聞く。今も彼は残業することなく仕事を熟し、妻に会うため早々に帰宅して、休日も妻の傍にいるため登城を拒否する徹底ぶりだった…まさか屋敷に夫人がいないなどと誰も思っていませんでしたよ」
口を挟んだスタンに、お母さんが更にぐらぐら揺れる。
そう、あまりにも姿を見ないから夫人死亡説なんてものも上がっていたそうだけど…屋敷に夫人がいない、とは誰も思っていなかった。
妻に深く重い愛情を抱える公爵が、妻がいないのに冷静でいられるはずがないと思われていたから。
「それはきっと、私がいないと大騒ぎしたら私に執着している求婚者…代表例としてアップルトン研究員などが捜索を始め、万が一そちらが先に私を見つけることを避けたのでしょう」
「確かに、夫人の行方が知れないとなれば捜し物の呪いを駆使してでも見つけ出すでしょう」
気持ち悪いなロドニー。
「…それで、なんで田舎町にいたの」
「それは…旦那に問題があって…」
「監禁野郎に問題があるのは当然よ」
旦那って公爵でいいのよね。ロドニーが求婚しようとしたのを察して二度と表に妻を出さなくなったといわれる公爵で。スタンも話題にしているし、そいつでいいのよね。
…監禁野郎と思っていたけれどお母さんが田舎町にいた、私が生まれた17年を考えるとどうなるのかしら。
「それでもそのときは仕方がないなぁって思うだけだったのよ」
ちょっと考えたけれど監禁に対して否定が返ってこなかったからやっぱり監禁野郎じゃない。
というか。
「お母さんまさか、駄目男に寄生されちゃうタイプの女だったの…!?」
出来る女ほど、駄目な男に寄生されるものだと花屋のマージが言っていた。この人は自分がいなくちゃ駄目、自分が支えてあげないと…なんて思い込んでしまうらしい。そう言う女は養分にされ、駄目な男はのうのうと咲くらしい。
植え込み場所の間配りがどうとか言っていたわ。植物を植えるときに間隔を開けないとぶつかったり空気の流れが悪くなったり病気がうつりやすくなったりするから駄目なんですって。栄養が偏って極端に成長しない植物も出てくるとか。それよ。密です。
ちなみにそんなマージは性別関係なく恋人を作っていたが、必ず休息期間をおいてから恋人を作っていた。多分あの人なりの間配りね。マージの性別? 私も知らないわ。
私の叫びに、お母さんは頭を抱えた。
「否定が…できない…!」
よかった自覚あるのね。
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