第14話 呪いの枝、活用法
「福音を持つ君が、呪いの材料目的で学園に不法侵入…侵入罪だけでなく、あの樹木を材料とした呪いは禁止されている。場合によっては警備団ではなく騎士団に突き出さなければならなくなる」
「普通はそうとわかれば通報して終わるところだ」
「だって気になるじゃないか。真っ昼間から学園に侵入して呪いの材料を揃えようとしている不審者が、泣いている女の子を放っておけず恋愛相談だけをして帰るなんて」
全部ばれている。
改めて説明されると自分でも何をしに行ったんだってなるから言わないで欲しいわね。
いいえ、私は泣いている女の子を慰めに行ったの。何もしていないなんてことないわ。泣いている女の子が一人減ったなら世界平和に貢献したと言っても過言じゃないわ。過言じゃないの。
「それで、君は何をしようとしたのかな」
学園で、国で守るだけあって、あの樹木を材料とした呪いは危険度が高い。
たとえば灯籠を作って憎い相手の魂を火種に変えて常に燃やされ続ける苦痛を与える呪い。死ぬまで毎晩業火に焼かれる苦痛に苛まれる。
たとえば生きたまま憎い相手を爪先から樹木に変質させる呪い。生きたまま木になる恐怖。意識を保ったまま地面に根を張り、命尽きると木も枯れる。
たとえば木の人形を作って憎い相手の身体を削っていく呪い。木の人形の手足が失われれば、相手も手足の神経を失う。
他にもたくさん、魂に根を張るような呪いに用いられる。
淡々と並べられた例題に、私は…引いた。
「何それ怖…」
「あれ?」
待って、あの木でできる呪いってそんなに物騒な物ばかりなの?
「呪いでそんなことまでできるの? やば…」
酒場のばあさまから「学園の木は呪いの材料になるんじゃよ」くらいしか聞いていなかった私はその使い道に引いた。なによそれ、絶対国で管理しなくちゃ…そうね、されてたわ。
私の反応に、スタンとモーリスはお互い視線を合わせる。
「…予想外の反応だな」
「馬鹿丸出しだぞこいつ。本当に呪い目的で侵入した奴か」
「ちょっと自信がなくなってきている」
「呪い目的で侵入したわ」
「ハキハキ自白しやがって」
正直に話しているのに怒られたわ。何なのこいつ。
「因みにどんな呪いをかけたいんだい」
「決まっているわ。対象に地獄の悪夢をみせる呪いよ!」
「…精神的苦痛を与える呪いだね。灯籠の呪いに似ているが、アレと違ってリスクが低い代わりに効力も低い。重ね掛けすることで我が身に起こったような惨劇を夢にみせる事ができるけど…」
「それよ」
「あの枝でできる最小ランクの呪いだ。その為に学園に侵入したのかい」
「ええ」
「なんでこいつこんなに潔いんだ…」
だから、なんで正直に話しているのに呆れられるの。怒るわよ。
スタンも不思議そうに首を傾げている。
「あの枝があれば相手を呪い殺すこともできるよ?」
「何を言っているの。殺人は犯罪よ。貴方人の心持っているの?」
「死ななくても呪いは犯罪だよ?」
「わかっているわよ」
「澄んだ目をしやがって…」
フォークテイル王国で禁止されているのは恋のおまじないだけじゃない。危険な呪いは軒並み禁止されている。当たり前だが、人を害する呪いは禁じられた呪いに分類される。悪夢を見せる呪いだって、精神的苦痛を与える危険な呪いにかわりない。
わかっているわよ。私、馬鹿じゃないわ。
犯罪だとわかっていて、私は学園に侵入したの。
「誰を呪うつもりだったんだい」
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