第64話 ネファーシャル子爵side11

しかしそうなるとマグリットがここにいる説明がつかない。

ガノングルフ辺境伯に捨てられたから、マグリットはここにいるのだ。



「嘘をつかないでいただきたい!では何故、マグリットはガノングルフ辺境伯邸ではなくここにいるんですか!?」


「魔力のコントロールを会得するためだよ。マグリット嬢はガノングルフ辺境伯領の嵐を晴らすほどの膨大な魔力を常に垂れ流してしまっていた」


「晴らす……?嵐を晴らすだと!?」


「そう。マグリット嬢の魔法は天候に影響を与えるほどの力を持つ……ネファーシャル子爵家にもその恩恵があったはずだ」



あまりの衝撃に言葉が出てこなかった。


(マグリットがネファーシャル子爵家の天気を晴らしていたということか!?まさか……そんなっ)


ネファーシャル子爵領の天気が安定したのはアデルのおかげではないということになる。

アデルの二年後に生まれたマグリットによる力……つまりマグリットが無意識にネファーシャル子爵領の天気を安定させていたのだとわかって愕然とすると同時に腑に落ちる部分があった。


マグリットがガノングルフ領に向かったのと同時にネファーシャル子爵領の天候は崩れていった。

そしてアデルが帰ってきても雨が続いていたことを考えると十分に納得できる。


マグリットがガノングルフ辺境伯領に降り続いていた嵐を止めて魔力不足になったことで発覚したそうだ。

それに自分たちもガノングルフ辺境伯領に向かった時に嵐の激しさを体験していた。


(あの嵐を止めてしまうほどの力をマグリットが持っていたというのか!?信じられない……!)


そしてネファーシャル子爵家には必要不可欠だったマグリットをガノングルフ辺境伯邸に送り出してしまったということになる。

逆に珍しいだけの結界魔法を持つアデルは文句ばかり言って何の役にも立たない。

ますますアデルではなくマグリットを取り戻したいという気持ちが大きくなっていく。


(どうにかして婚約する前にマグリットを取り戻したい……!マグリットを取り戻して使えばネファーシャル子爵領の天気は元に戻るはずだ!)


絶望から一転して、頭の中は希望で満ち溢れていく。

しかしそれを見越していたかのようにリダ公爵から思いもよらない言葉を受ける。



「ネファーシャル子爵はルールに背いた罰としてマグリット嬢の親権を剥奪されることになる」


「──ッ!?」


「今頃、ネファーシャル子爵邸には正式な書類が届けられているのではないかな?」



マグリットを取り戻せるどころか、今までの責任を取らされて親権まで失いそうになっている。

アデルだけは訳わからない様子で首を傾げているが、妻と二人で信じられない気持ちでいた。



「話は以上だよ。邪魔だから帰ってくれるかな?」



リダ公爵の圧にこれ以上、前に進むことはできなかった。

もし本当にガノングルフ辺境伯がマグリットを気に入っているのなら立場的に意見することなど不可能。


(こうなったらマグリットが自分から戻りたいと言うようにすればいい!)


今はマグリットと話すことが優先だ。

親権がなくなったとしても自分からネファーシャル子爵領に戻らないといけないと思うように説得すればいいのだ。


(マグリットは必ず取り戻す……!ネファーシャル子爵家の未来のためにも)


使用人としても役に立つし、今からネファーシャル子爵の婿を選んで跡を継がせたっていい。

そうなればネファーシャル子爵領の空も晴れ渡り雨もなくなる。

マグリットは何を言っても命令に従順だった。

今まで通り、従わせればいい。

リダ公爵が何かを言っていた気がしたが適当に挨拶をしてその場を去った。


(役立たずの残りカスだと思っていたマグリットに価値があったとはな。すぐに作戦を練らなければ……!)


 

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