ポケットの神様

@szKashiwazaki

1

朝、制服に着替えたところ、ズボンのポケットの中で何かがもぞもぞ動く感触があった。


「やあ」


 それはポケットから顔を出してこちらを見てきた。コアラのような顔をしていた。


「誰? というか何?」

「ぼくはポケットの神様。八百万の神ってあるだろう? あれのポケット担当さ」

「ふーん。それはいいけど、なんで僕のポケットに?」


「君にポケット交換の力を授けようと思ってね」

「ポケット交換?」

「そう。ポケットを手でポンと叩くと、その中身が世界の誰かのポケットとランダムで入れ替わるという力だ。やってごらん」


 僕は神様のいるポケットを叩いた。


「痛い!」

「何も起きないじゃん」

「こっちじゃない、反対側だよ! というかなんで叩いた!?」

「どっか行くかと思って」

「ぼくがなにをしたっていうんだ……。ほら、そっちのポケットを叩くんだ」


 やらないと帰ってくれなそうなので、仕方なく従うことにした。


 が、振りかぶったところで、神様がやたらとニヤニヤしていることに気づいた。そしてその訳にも。


 ポケットの中身はモノとは限らない。手を突っ込んでいる場合もある。もしそんなポケットと中身を入れ替えることになったら、何が起きるのだろうか。


「……ねえ神様」

「あ、ちなみに手を突っ込んでいるポケットと入れ替えることになっても、切断された手首が送られてきたりはしないから安心してね」

「なーんだ。それを先に言ってよ」


 僕はポケットを叩いた。


 カンガルーの子供が現れ、ポケットを突き破った。


 

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