第2話プロデビュー後、ウィークリー・フットボール誌初インタビュー 後編

そのビッグマウスは末恐ろしい。できれば、バロンドールを獲ること以外も含めた君の人生設計を、ぜひ教えて欲しい。

「言っちゃいますよ(笑)。まず、今年でJの舞台に慣れて、来年には完全にレギュラーを取りたい。今はJ2でも海外のスカウトが見ていますからね。だから、ハタチになる頃には海外にいたいですね。ベルギーとかオランダとかじゃなくて、イングランド・イタリア・スペインとか。でも、僕の体格じゃやっぱりイングランドは無理でしょうね。客観的に見てそう思います。スコールズやモドリッチは偉大ですよ(笑)。一番プレースタイルに合うのは、やっぱりスペインじゃないかと思っているんです」


――将来的に行きたいのは、やっぱりロイヤル・マドリーとかASバルセロナになるのかな?

「うーん。グラン・トリノで21番を引き継ぐのも捨てがたいですけどね(笑)。必要としてくれるクラブがあるならどこでもいいです。そこで結果を残せば、おのずとプレーするチームは限られてくるわけで……」


――何歳ぐらいで行くのかな?

「22!」


――即答だ!

「はは(笑)。まあ、でもそれくらいで行かなきゃ。22って日本じゃ若手ですけど、海外じゃバリバリに一線級でやってる選手ばっかりなんですよね。あいつらってデビューするチームがASバルセロナだったりロイヤル・マドリーだったりマンチェスター・ユニオンだったりグラン・トリノだったりするわけですよ。もうスタート地点からして違う。海抜0メートルと富士山の8合目くらい。僕なんて、ようやく芝生のグラウンドに慣れてきたくらいなのに……」


――OK! じゃあ22歳からの人生プランを拝聴しよう。

「そうですね。じゃあ24くらいで一回目のバロンドールを獲る、ということで」


――複数回獲るってことでいいのかな?

「そういうことです」


――じゃあ2回目は?

「24歳になった次のワールドカップで日本を優勝させて獲ります!」


――期待してもいいのかな? これ本当に本誌に載せるよ?

「かまいません。適度なプレッシャーと戦うのは、メンタル面で良い兆候を得るって聴いてますし」


――バロンドールとワールドカップを獲るのが適度・・なプレッシャー?

「それも、漫画と同じく夢物語って言いたいんでしょうけれども、夢見るのは自分ですし、宝くじだって買わなきゃ当たらないでしょう?」


――最近の何事も省エネで過ごす若者にはない野望だ(笑)

「そうかもしれませんね(笑)」


――じゃあ、ワールドカップ優勝して、バロンドールを獲ったら次は何をしたい?

「まあUEFAチャンピオンズリーグ優勝は当然必須ですよね。アジア人初でしょ?」


――パク・チソンがいるよ。

「決勝出てないじゃないですか(笑)」


――OK! 政治的発言になるかもしれない。そこを突っ込むのはFIFAは禁じている。チャンピオンズリーグ優勝の次は?

「バロンドールを史上最多の7回くらい獲って。うーん。あとは、まあ、普通に日本人と結婚して。それで、40近くなったら日本に帰って、後輩に経験を教えて育成してやって。それで指導者になる、と」


――君の後半生は、前半に比べると自伝にするとものすごくつまらなさそうだ(笑)。でも、引退してもサッカーと関わって生きたい、と?

「それは、もう。サッカーで一生飯食っていくって決めたから」


――お兄さんは君にとってどんな存在かな?

「刺激を与えてくれる存在です。僕にない高さ・パワー・スピード、全部持ってる。テクニックは互角かな。それこそ2年後に、ロイヤル・マドリーに移籍してるって言われても『そうかあ』って自分の中で納得しちゃうくらいにしか思えないですよね」


――このインタビューも実は君の活躍だけでなくて、近い将来海外へ行くであろうお兄さんの引き立て役として編集部から企画されたものだ。君のビッグマウスや、実力だけが誘因したものじゃあ決してない。それについては?

「言いにくいこと、ズバっと言いますね(笑)。まあ、それで僕のプレーを見ようという人が増えるのであれば何でも利用しますよ」


――やっぱり有名になりたい?

「どうだろう? 街を歩いていて、サインを求められるというのはなかなかに体験できないから一度はやってみたいけど、毎回だと外出できないですよね。『地球の裏側でも自分を知っている人がいるとか不思議だ』みたいな、お決まりのセリフを言ってみたい気持ちもあります」


――ではお父さんは?

「師匠。この一言に尽きます」


――もう向島大吾をA代表に呼ぶべきだってネットでは騒がれている。見たかい?

「いや、見てないです。身体も出来上がってないのに、代表戦なんて呼ばれたら壊れちゃうんじゃないですかね」


――それが傑作なことにスポット・キッカー。『フリーキックやら、コーナーキックのときだけ使えるようにルール変更するようFIFAに申請しろ』って、意見が大半を占めている。確かに、A代表には絶対的なキッカーはもういないからね。

「褒められているのかけなされているのか、わからないですね(笑)」


――でも、君の両足でのプレースキックは認められている。セルフィッシュ自分勝手なところもね。

「セルフィッシュですか。1試合見ただけでですか? うーん、チームプレーは心掛けているつもりなんですが……」


――君は、前回の試合で守備してないしね。それに、最後のコーナーキックは直接狙ったんだろう? お兄さんの頭目がけた方が、確率は高かったとは思わないかい?

「兄は解っていたんじゃないかな。『俺を狙え!』って、わざとおとりになってくれたんじゃないかとも思っているんです。僕はもう狙う気満々だったから、そりゃ。僕の性格を、兄は僕以上にわかっていると思うし」


――プロデビューの若造が思うことではないよね。

「そうかもしれませんけれども、サッカーって点を取ってナンボのスポーツですから。やっぱり、前目のポジションだと点に絡まないと給料上がらないし、上も狙えない」


――君の考える上とはいったいなんだろう?

「ケイスケ・ホンダ。本田圭佑選手じゃなくて、プロフェッショナル=ケイスケ・ホンダってテレビで言ってたじゃないですか。だからプロフェッショナルであり野心家=ダイゴ・ムコウジマみたいな感じで『現代用語の基礎知識』やら、『広辞苑』に載るってのはどうでしょう?」


――海外へ行って、バロンドールを獲って、ワールドカップで優勝するんじゃなかったの?

「それは、まあ、それで。バロンドールも、ワールドカップも、ひとりじゃ獲れないから超個人的な目標として、と」


――君が全盛期に移籍するとしてその移籍金はいくらくらい?

「500億円くらいかな(笑)」


――それを支払えるクラブはどこだろう?

「ロイヤル・マドリーか、パリ・セインツくらいですね」


――OK!君が最終的にマドリーに行けることを願っているよ!

「ありがとうございます」


――じゃあ最後に、ウィークリー・フットボールを読んでくれる読者にひとこともらえるかい?

「そうですね。僕のフットボールの旅を一緒に楽しんでもらえたら、と思います」








 20XX年、向島むこうじま博監督率いる岡山は初のJ1昇格を果たした。

 しかし、その1年後にはJ2へと大方の予想通り降格。

 それでも地力を付けた岡山は、J2に所属しながらも天皇杯においてベスト4へと進出するジャイアントキリングを成し遂げた。


 向島監督は一度退任したものの、再び監督に返り咲いた。

 そして一昨年、見事にJ1昇格を再び決めた。

 その原動力は188㎝の大型FW、向島監督の実息である向島真吾(20)だ。

 彼は日本代表のエースとして自覚し始め、次のオリンピック、そしてワールドカップでの活躍が見込まれている。


 そして今、再び向島監督の息子がJの初舞台に臨み、168㎝の小さな痩躯から前人未到のフリーキックでのポーケル4得点を成し遂げてしまった。


 向島大吾むこうじまだいご・17歳。

 偉大な父と兄の背中を追い、彼の『人生の旅路フットボール・ライフ』は始まったばかりだ。

 彼の背番号38サイン入りユニフォームを抽選で1名にプレゼント!

 もしかしたら、将来的にとてつもない価値が出るかもしれない!

 応募先メールアドレスは、weekly-football@……

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