意味不明で役立たずと追放された俺のスキル【鎮魂歌】が死者から力を貰えるチートを超えた最強スキルだったのでSランクパーティで人生謳歌します。戻ってきてほしい? 無理だよ。ギルドから追放されたじゃん。

Edy

追放

「われら【ヒーロー】のSSランク昇格を祝して! の前に…………」




 

 レク・ディヴィアント、俺の名前。数年前からミルス、マリス、テラスと【アスピラ】で冒険している。ある日、ドラゴンを討伐した事による祝勝会を開いていた。当然俺も祝の会に参加している。机の上には普段は目にしても手が届かない料理ばかり。お酒も良いところの銘柄ばかり。


 Aランク。それは冒険者の中でも精鋭と呼ばれる上位数%の実力者。そのパーティに所属しているだけで街中から尊敬の目で見られ、リーダーともなれば将来は約束されているようなもの。


 そんな凄いランクへの昇格祝いなのだが、俺のテンションは上がらない。


「レク。このパーティから外れてもらう」


「……………………え?」


 いきなり告げられて理解が追いつかない。今なんて言ったんだ?

 発言者のテラスを見ると、まるで邪魔者でも見るかのような目だった。


「パーティから外れるって、どういう」


「そのまんまの意味だ」


「そのまんまって、それって、どうして! 」


「あら、どうしてって、わからないの? 自分自身のことなのに?」


 ミルスが嘲笑うように言ってくる。俺自身の事? 


「ほら、さっさと出ていきなさいよ。テラス様が言ってたでしょ? パーティから外れろって。ここは【アスピラ】の貸し切りなのよ」


 ゴミを見る目でマリスが言ってくる。仲間の筈の二人は俺を追い出すのを肯定する。なんの抵抗も無く、もう既に俺を部外者扱いしていた。


「……………………冗談…………なわけない、のか」


 言葉の出ない空白時間が徐々に俺を理解へと連れていき自身で今の言葉を否定した。


 思い返してみればテラスは俺に報酬をあまり渡さなかった。酷い時で10分の1だった。二人もそうだ。テラスにべったりで俺に好意を向けていない程度でしか考えていなかったが荷物番や掃除など雑用を全て俺に押し付けたり、休日は常に俺をのけものにしていた。心当たりが沢山ある。


「冗談で言うわけねえだろ。役立たずが。全属性の魔法を使えるから仲間にしてやったと言うのに、どの魔法も微妙、複数の魔法を組み合わせられるかと思いきやそれも出来やしない。治癒魔法もポーションで間に合うし、話にならねえ。何より一年以上お前がいなくても全て勝ててた。いらねえんだよ」


「それでも」


「あ゛口答えすんのかよ」


「そうよそうよ! あんたごときがでしゃばってるんじゃないわよ!」


「部外者が勇者に異を唱えるなんておこがましいにも程がある」


 それでも弱点属性で攻撃したり、バフやデバフで貢献してるだろ! と言いたかった。でもテラスに言い返したら殴られるし、二人から罵倒される。テラスの発言力は高いから仕方無いと思っていたけど、いや、俺が彼らを仲間だと信じすぎてただけだったのかな。


「ましてやその ス キ ル なんて言うんだっけ?? その3文字の意味不明なやつ」


 俺のスキル【鎮魂歌】の事を言われた。十五歳(成人式)の時、スキルの義で俺に開花したスキル。しかし、その3文字は誰にも読めず、効果もわからなかった。そういう事例は歴史上いくつかありその殆どの人が特別強大な力に目覚め、英雄になっている。だが俺のは発動しても何も起きなかった。何が起きたか確認できていないだけかもしれないけど。


「それ、結局何だったのかわからずじまいだったな。何か特別なスキルかと思いきや発動しても何の効果もない。仮に何か起きてたとしても、何の影響もない時点で存在意義すら無いんじゃねえの?」


 否定できない。実際役に立ってないのは確かだ。でも、スキルはそうでも俺自身は……………。


「あら、黙り込んじゃった? ならもっと現実を突きつけましょうか? アナタ、Aランクの戦いに付いてこれまして? 無理でしょう? 全てが凡才のあなたが天才である私達に何ができるの?」


「出てけば良いんだろ」


 反射的に言ってしまった。


 いや、耐えきれなくて言った。そうだ。テラス達はもう、仲間じゃないんだ……………………怒りが込み上げてくる。


「やっとわかったぁ? じゃあさっさと出てけよ!」 


「はぁ、やっといなくなって清々する」


 ミルスが嘲笑うような言い方から邪魔者を追い出すように声を荒げる。マリスは荷が下りるような言いかただ。


 まさか一瞬でここまで嫌いになるなんて、顔すら見たくない。さっさと出よう。


 振り返って部屋から出る。締めたあと、高笑いしながら乾杯の声が聞こえる。


 今は夜風に当たりたい。そう思い速歩きでその場から去る。良い部屋を選んで良かった。少し離れただけで騒ぎ声が聞こえなくなった。





 ただただ歩く。きっと彼らは俺がいなくても依頼をこなすだろう。悔しいが、強いのは確かだ。




 そう思っていた。スキル【鎮魂歌】の能力を知るまで。その能力は、上限無く強くなることのできる、才能の無いただの凡人でさえ世界をひっくり返せる程の力があることに。そして、あのパーティはその恩恵を受けて強くなっていた事に。


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