学校をサボってクラスメイトとデートした翌日、同居するヤンデレ系陰キャ後輩にバレました☆
絹鍵杖
最終話「彼らにとっては日常茶飯事です」
絶対絶命のピンチ、とはどういうものか。
少年は、その定義について考えるまでもなく、彼自身が置かれている状況、「今がそれなのだ」と、肯定していた。
『おるぁこの野郎! 出てこいっ!』
がんっ、と彼の世界が蹴られる。
敵は彼を捜索している最中、ではなく彼の周囲に敵がいるのだ。
自分の居場所を敵に把握されていて、その上敵はいつでも自分を仕留められる距離にいる。
つまりは薄い鉄板を挟んだ真向かいにいるわけで、あとはもう、彼自身が覚悟を決めて「出ていくかどうか」の問題でしかない。
彼が追い詰められている理由については、
『新口さんからタレコミが来てんだよ!テメェがシゴトをサボって『アリカ』とデートしてたってことがなぁ!』
……以上の事柄を敏感に察知したクラスメイト達によって問い詰め、もとい追い詰められているのだった。
別のクラスメイトが、静かな口調で語りかける。
『あなた一人の穴を埋めるのにどれほど苦労したと思っているんですか。他クラスにまで
彼らは怒っている。そして、閉じこもっている彼に対して手もすぐに出せる。……その状況で、彼に語りかけているのだ。
それは何故か。
対話のため? 赦しているから?
いいや、違う。
『先輩』
答え。「既に審判は下されている」――からだ。
「……?」
嫌な予感、先輩と呼ばれた彼がそれを感じ取って身を捻った直後だった。
ドゴガッギィィィ!!
「……っ!?」
鉄の扉が障子紙のように破られ、五指を突き出した魔王の腕が彼の脇腹を掠め、背後にある壁をも、ぐしゃりと掴んでいた。
『……まー、あとは任せるわ。俺達は事後報告だけしとくから。……あと、備品の代替申請もやっとくよ』
魔王の腕が先輩の命を掴んでいるとでも思ったのだろうか。先程まで荒ぶっていたクラスメイトの声がやけに遠くに聞こえる。
『はい。先輩がご迷惑をおかけしました。こんな体勢ですみません、失礼します』
ぞろぞろと、命の気配が遠のく。暫くしてから、彼の前にただ一人残った人間の声がぽつりと聞こえた。
『……聞こえるのは部活動の声と調整の機械音のみ、と』
その直後だった。
ごぉがぎ、ぎがっ。
短い破壊音の後、腕が引き抜かれるのと同時に、掃除用具入れになっているロッカーの扉が外れた。
二人が視線を交わしたのは、夕陽が差し込む放課後の教室。茜色に染められた教室は、何故か彼に血の色を連想させた。
「やっと――二人きりになれましたね、先輩」
先輩の前に姿を現した魔王は、今まで彼が経験したことのないほど――怖い笑みを浮かべていたのだという。
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学校をサボってクラスメイトとデートした翌日、同居するヤンデレ系陰キャ後輩にバレました☆ 絹鍵杖 @kinukagitue
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