鍵が増えた理由

第1話

　鍵が増えた。

　めちゃんこ増えた。

　どうしてたか分からないけれど、なんか百本くらいに増えている。

　一体なんでこんな事になったんだろう。

　分からないけれど、必要なカギを探し出さなくては。

　このままでは家の中に入れないぞ。

　赤い鍵、青い鍵、でっぱった鍵、とげとげの鍵。

　微妙に色々違うんだな。

　そういえば世の中の鍵って、皆似たり寄ったりだよな。

　シルバー色で硬くて、こうちょっと手に持つところが丸くて、差し込むところが細長くて。

　だから目の前の鍵達は個性を求めたかったのかな。

　なんちゃって。

　どうせ誰かの悪戯なんだろうな。

　私、鍵。

　おしゃれをするのが夢だったの。

　まだら模様になったり、フリルをつけて着飾りたいわ。

　でも、鍵がそんなことをしたら変でしょう。

　だから今まで我慢していたの。

　でも、ある日気が付いたわ。

　お洒落なキーケースを身に纏った、イケメンのカギを見たとき。

　うらやましい。

　私もそうなりたいって。

　そうしたら、神様が願い事をかなえてくれたのかしら。

　色々な私が現れてたの。

　でも思ったより神様っておおざっぱなのね。

　私自身は普通なのに、増えた私の方をお洒落にするなんて。