第12話

パニックルームには再度戻ってきたけどなんとも言えぬ気分になっていたのをわかっているのか、この場の雰囲気を換えたいのかアイちゃんは新たな話をはじめた。


「メインコントロールルーム制圧によってさらに詳しい現状が判りました。そして幼女の命に係わる話をしなければなりません。だからこそパニックルームについても話しておきます。」


そういうと、たんたんとまず現状について話を始めた。


「全世界の大陸を襲った、全大陸プレート崩壊地震についてなのですが、おおよその原因が判りました。宇宙からの3Dソリトン重震動波によるピンポイント大陸プレート崩壊攻撃によるものです。もはやこの地球全体が試験場になってしまいました。」


そう告げたアイちゃんは僕の頭の中で白昼夢のような映像を流し始めた。


ある強大力な力を示した連邦国家に、大国や共和国が秘密裏に行っていた核実験の様子などであった。広大な大地や孤島、大海、地下実験施設で行った原爆や水爆そして新たな侵略兵器の数々の極秘実験。それに伴う環境への影響・・・何も知らない村や町に住む人々・・・そして家畜に野生動物への影響がもたらす被害。


そこにはかつての地球で起きた苦い記録に基づいた資料映像のようなものだった。


大地はおろか大気や気候をも蝕む破壊兵器の数々。それを持ちいて威を示す国同士のチキンレース。人類を滅ぼす威光がもたらす平和を享受する国々。微妙な匙加減の中で国民の貧富を考えないで争い覇権をあらそい侵略する国々による兵器開発による技術革新!戦争の恩恵を享受すべく経済戦争による倫理観の低下が人間の価値を変化させていった。それは金があれば何でもできる。金をつかむためなら泥水さえすするといった、戦争が引き起こす欲にまみれた生存本能というものが人間を人間たる思いにさせていったのだ。


戦争の多大な影響を受けた傷ついた人も癒えぬまま世代もかわり、時代により価値観もさら変ってゆく。どんな状況でも手をとり戦火を共に助けあって生きてきた人々から、騙し騙され疑い深くなり、他人を信用することもできず、自分さえ満足できればいいと結婚もせず子孫を繁栄させる意味を見出せない人々。趣味に走り出した人々の欲望は長寿のための再生蘇生医療の到達点というクローンによる自身保全だった。それでも尽きぬ欲望から自分の代わりに生きていく代行者たる人造人間と呼ばれるアンドロイドの闊歩につながった。


だが、あくまでも技術革命も医療革命さえ、莫大な援助があって軍事革新がもたらす恩恵にあずかってできたものである。


ゆえに悲劇が伴うのである。


宇宙にも人類が居住する時代、あらゆる宇宙環境適応実験がおこなわれたのだった。


人体実験の歴史を紐解けば悲しい悲惨な戦争犯罪まで想起させる。


また、世間には知られていない未知との遭遇に関する秘密事項まであるが、知られた事実としてはある人間の力を超越する能力を持つ人類が現れることがある。ある人は夢の中で現れた人にもらった力といい、ある人は生まれ持った能力だという。変わったケースでは彼女に振られた、友人からいじめられた、他人に貶められたなどある種の逆境から覚醒した。そして、ある人に師事しやことによる努力からの成果など様々な能力が発現する者がいた。


超能力者とも云える者たちに限らず、生活、文化に歴史そして環境を紐づけすべての国同士の協力のもと人間に限らずあらゆる生物のDNA検査行い、それを基にDNAの設計デザインができるまで研究が発展すると実用化にともう実験と称する軍事目的も並行して発展してゆく。


商業化と称するプロダクトモデルと軍事化と称する様々なプロトタイプ。それに個人が独自開発するアブノーマルタイプ。様々なケースで用いられるようになる。


例えば、格闘家や寝たきりの老人。


亡き妻や子を事故で無くしたものは疑似家族として人造人間と呼ばれるアンドロイドを家族にする者もいる時代、稀に人身事故にあって体の半分をサイボーグにした改造人間化した者はその境遇からか人間とは違う力を求めたがる。


それ以外でも様々な人間はある種の劣等感から自分にはない力を求めるものだ。


もし、人間に蟻のような体の何十倍の荷物が持てるようになれるとしたら。蜂のように空を飛べるとしたら。蜘蛛のように天井や壁を楽々歩けたら。


研究者によるきっかけは安易、安直、単純ではあったが、人類の歴史は複雑である。覚醒遺伝なのか先祖返りなのか、それとも、宇宙人に改造されたのか架空のおとぎ話にでも出てくるモンスターも各国ごとでオリジナルなDNAの設計デザインである程度可能になってしまったのだ。


そうなるとこの技術で各国での熾烈な競争という名の醜いいさかいも起きる。情報漏洩やらの情報売買などのスパイの横行から始まり技術者狩り・・・新たな火種が革新的な戦略兵器になれば大きな大火となる内戦や戦争にまで発展していく。そのような技術革新と戦争を繰り返す地球。


クローンからクローンに命を繋ぐある種の生命体を持った権力やお金を持った人間は地球という試験場を眺めている。地球は蟲毒の壺みたいな存在に落ちようとしている。


この世界についてはアイちゃんはそう話しを一旦まとめた。


そして、パニックルームというパラレルルームに置かれている状況の医療カプセルに入った幼女の容態を告げるのだった。

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