第22話
ラフィール様を撫で回したが、目を細めてされるがまま。
どうやら精神年齢は見た目と同じと見て良いのかしら?
「稲妻と若人は仲良くなれると思ってたけど、予想以上だね」
「若人?ラフィール様のことですか?」
若人はなんて似合う名前だろうか。
二つ名は基本的に王族や筆頭公爵が考えてるらしいけどセンスあるわね。
「そうだよ。実はこの顔合わせは相性を確かめたかったんだ」
「それは私の功績に関係のあることですか?」
「そうだよ。あ、別にこれは隠してないから普通に言っちゃっていいからね」
あ、そうなのね。
国民に漏れたら混乱になったり、スパイでもいたらと思って濁したけど。
「ヒスイが来てくれてちょうど良かった。実は帝国の共和国への侵攻が思ったより戦力を回していたんだ。本来ならヒスイの部隊に君を入れてちょっと侵攻を止めてもらうって考えてたんだ」
「侵攻って言うくらいですから、それくらいは予想してました」
「どうやら剣婦が一人と、聖騎士と聖女が出張ってくるらしいんだよね」
「剣婦に聖騎士と、聖女!!」
聖女ってゴールドマリーの事よね。
私の知る知識は聖女は聖騎士同様、魔力以外の不思議な力で人を癒やしたりする力だって聞いてる。
正直治癒魔法で足りる事でもあるからそこまで気にしてなかったわ。
何か他に出来ることでもあるのかしら?
「聖女は君と因縁があるからね。ただ今回は悪いけど、相手を撤退に追い込むまでに留めて欲しいんだ」
「へぇ、殲滅しないのかい。皇帝が居ない帝国ならこのメンツだけでも帝国を潰せると思うけどねぇ」
ヒスイさんが腕を鳴らしながらそういうが、剣婦の存在がある以上そんな簡単に済むとは思えないわね。
それに、聖騎士って言うことはカインの父親が出てくるって事よね。
「そんなに甘くない。と言うより剣婦が想像以上にヤバイって事がわかった」
「ヤバい?殿下がそう言うって事はー、潜入してる人達に何かあった?」
「正解だよ若人。今回の剣婦の装備の能力はもうわかってるんだ」
能力がわかってるのはかなりの強みだ。
流石に対策をすることが出来るのとそうじゃないとでは、話が全然違ってくる。
「剣婦の能力は”支配”だ」
「支配?」
「文字通り、人心掌握さ。そしてその基準がわからない」
人心掌握。
つまり洗脳能力って事よね。
考えられる限り一番強力かつ、質の悪い能力じゃないの。
「間者を通じてそのことを告げてきたんだ。つまりバレても問題ない能力と考えるのが妥当だよ」
「つまり対抗策がない。だとしたら強力なメンバーがいるのはまずいんじゃ・・・いや」
今共和国には陛下がいる。
もし、陛下が支配の能力を受けた場合・・・
「もし父上が支配の能力を受けようものなら、この国は終わる。支配されてるかどうか確かめようもないからね」
「王国において王族の決定は絶対。そして仮に傍若無人の王になったとしても、この国は終わってしまうと言うことですね」
これは想像以上に事態は重いって事じゃないかしら?
私の実績とかそういう次元の話じゃ無くなってると思うんだけど。
「そもそも支配って言うくらいなんだ。支配の能力が、人心掌握以外にもあったらどうすんだよ」
「だから幻惑をこの任務に同行させるんだよ。少なくとも、支配の能力を受けた相手を足止めが1番しやすいからね」
ガウリ様の魅了の魔法の一種である幻覚は、それなりに場数を踏んでるヒスイさんでも見破れなかったレベル。
だとしたら、ガウリ様の魔法は支配下に置かれた人に大いに貢献されるに違いない。
「少なくとも離れた相手を支配はできないはずだし、支配の条件は必ずある」
「どうしてそう言えるんだ」
「僕が支配されていなくて、君達も支配されていないからだよ」
確かにどこに居ても支配出来るなら、私達も支配してしまえばそれで終わりだ。
支配されてる実感がないなら話は変わるけど、少なくともそうでないなら条件はかなり厳しいって事よね。
「ヒスイとミハイルで支配の剣婦を殺害が理想だ。だがそれには聖騎士と聖女が邪魔をしてくる」
「だから撤退に追い込むと言うことですね」
「流石は稲妻、なんでかわかったか」
聖女が居る以上、剣婦が致命傷を負っても殺しきれない可能性がある。
要するに自爆特攻が可能なのよね。
即死しなければ、相手を支配することが出来ると考えたら厄介ね。
でもそうなると戦闘継続能力が高くできる強みのある聖女を、剣婦に付けることになる。
つまり撤退に追い込む方が、作戦としては簡単なのよね。
「いや、流石に俺も大体わかったぞ」
「グレンも信用してるさ。師団には予めこの作戦の理由と概要の資料も提出済みだからわかってるよね?」
ミハイル様と師団長の皆さんは頷く。
それにしても支配される可能性があるのに、それを考慮しても任務に当たる覚悟はすごいわ。
「万が一支配されたと判断した場合、ミハイルには殺害を許可してる。それはグレンや稲妻に対しても同じだよ」
「わかってます。支配されてる以上危険因子ですしね」
「あぁわかってる。だが、剣婦ってのはどれも厄介な能力を持ってるのかねー?」
「流石に僕も驚いたよ。あれだけ隠してた剣婦の存在をあっさりと教えてくるんだ」
確かに、王国の人間は剣婦の存在を知らなかった。
それを今になってあっさりと伝えてくる。
私が亡命してるからって、その決断は恐ろしい。
恐らくアハト様なんだろうけど。
でもよく考えたら陛下が戦時中に剣婦を登場させなかった意図はなんなのかしら?
適合者が全くいなかったとは考えられないし。
「まぁ何はともあれ作戦決行は三日後だ。もしかしたら最期の晩餐になるかもしれないからね。この三日は好きに過ごすと良い」
オリバー様の言葉でこの場は解散となった。
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