第5話
陛下は治癒魔法にも長けてる。
剣に貫かれたくらいじゃ死なないわ。
「シュナイダー、残念だわ。貴方も息子の一人だというのに・・・」
「母・・・いや魔女リリノアール!私も残念だ!母上のことは慕っていたというのに」
シュナイダーが同様するのは当然だけど、カインと偽騎士団長が動揺してない。
これで殺せると思っていなかった?
でもそれなら奇襲をかける意味はないわ。
「陛下。我が剣は陛下に捧げていた。なのに陛下は我が剣の誇りを汚した!」
「貴方は本物のフォッカーではない。だからあなたが喚こうとどうでもいい」
「我を愚弄するか!死ね!」
陛下は騎士団長が偽物と気づいていたのね。
偽騎士団長もそうとわかるとすぐに斬りかかる。
しかしその刃は陛下には届かない。
扇子一つで受け止めてしまった。
「剣が・・・動かない・・・」
「その程度の動きでフォッカーを自称するとは。片腹が痛い!」
すごい。
扇子で受け止めたかと思うと、次には回し蹴りを脇腹に決める。
その勢いのまま偽騎士団長は窓ガラスを割り外へと飛び出ていった。
「流石は魔女。騎士団長では荷が重かったようだ」
「テリー家の子息か。貴方も私に剣を向けると?」
「魔女風情にこれを見せるのもどうかと思うが、我が家の聖なる力は悪魔の力持つ貴様ら魔女を討伐するためにある」
そういうとカインは剣を抜き、その剣は七色の輝きを帯び始めた。
これが剣聖の力・・・
空気がビリビリする。
「想像以上に凄まじいな。魔法が使えないといってもこれほどの力を持つ剣士がいれば、我が王国を脅かしていたかもしれないな」
「えぇ。それが彼の家だけにしか使えるものじゃなければね」
グレンの言う通り、この力はとてつもなく強大。
この力がなんなのかわからないけれど、これは魔法ではない。
剣聖の力は初めて見るけれど、魔力の波長を一切感じない。
つまりこれは魔法とは別の力ということになる。
しかし魔法に匹敵する何かだということは伝わってきた。
「さすがに剣聖の名は伊達じゃないようね。でもこの程度なら」
陛下が足を上げて地面を踏みしめた。
ただそれだけで剣聖の力はきれいさっぱり消え去った。
「な・・・にっ!?」
「あなたの祖父、マリクの方が強大だわ。まだまだ青いわね」
「くっ!祖父は死んだ!」
「えぇ。だからこそ、私はこの国で脅威となるものがほとんどないわ」
「奢りだな!魔女風情が!」
聖なる力を宿していない剣で斬りかかる。
踏み込みは私と同い年にしては一流と言える。
しかし陛下は本当の意味で一流。
剣を避けたかと思うと、腕を捻り上げて剣を奪ってしまった。
「温情をかける余地もないわね」
陛下が手を前に掲げる。
やはり大魔法を放つ気だわ。
「ルル、防御魔法を構えなさい」
「はい、陛下」
「ここにいる人間もすべて同罪です。ちょうどよかった。粛清の対象が全ている」
恐らく不正に関与した貴族が大勢いる事だろう。
有力貴族はこの場にはほとんどいない。
何人かはまともな人間もいるのかも知れないけれど、先程の問答で見て見ぬ振りをした時点で同罪だ。
この中には私の家族になるかもしれなかった人達もいるけれど・・・
「ま、待ってください陛下!」
「ランジェル公爵か。なんだ?最後の言葉になることだろう。手短に済ませ」
「我が家、ランジェル公爵は見逃してくれませぬか!」
ランジェル公爵家。
第二皇子のアハト様の元婚約者実家だ。
「貴様はシリィが死んだ時も同じことを言ったな」
シリィ様はアハト様の元婚約者。
二人は相思相愛で幼少期から決まった婚約だけれど、私とは違い上手くやっていた。
私も二人の姿はよく見た。
しかし私が留学に行く前にシリィ様は亡くなった。
ランジェル家の後妻がシリィ様を虐待し、シャツ一枚で外に放り出した。
シリィ様は城を目指して歩き始めたが、その日に後妻に腹部を殴られており、内臓が破裂していた。
その日の早朝、アハト様が迎えに来たことでシリィ様を発見したが、もう手遅れでアハト様の腕の中で息を引き取った。
そしてそのまま、ランジェル家の後妻の首を刎ねた。
そのあと、後妻の娘でありシリィの義姉であるリィナの首を刎ねようとしたところで、公爵がアハト様の前に立って説得したと聞いたけれど・・・
「そこのリィナという元平民だったか。そいつがアハトに殺されそうになったところで、我々は見逃してほしいと言ったな」
「そうでございます・・・ですが!」
「ハハハそうだな!何もしてないな、我が刺されたとき真っ先に貴様らを見た!確かに笑みを浮かべていたな!笑わせてくれる。そんな貴様が逆の立場であれば我がそう頼み温情をかけるか?」
「それは・・・」
「そこまで我は、甘く見えていたか?これが例え可愛い息子や義娘だとしても、我はためらわん。それが皇帝というものだ」
そうね。
もう陛下は胸を貫かれている。
これでここにいる人間を少しでも逃がせば舐められる。
これが例え私や皇子殿下達だったとしてもそれは変わらない。
等しく裁く必要があった。
「さて、下らぬ問答も煩わしい。ルル、これだけ時間をあげたのよ。防御魔法の準備はできてますね?」
「はい、陛下」
陛下がランジェル公爵との問答を許可して時間を与えたのはこのため。
私が陛下の魔法に耐える魔法の準備を行わせる必要があった。
グレンには何も言わなかったということは、私でしか防げない魔法。
「よろしい。それでは諸君。これまでの忠君大儀であった。地獄でまた相まみえることを、切に願おう」
「超級防御魔法:ライトニングアイテル」
「超級魔法!?ルルはその域に達しているのか!?」
グレンが驚きの声を上げる。
超級魔法は魔法大国の王国でも使える人間は限られる。
それこそ手で数えれる程度しかいないのだ。
「陛下から教えてもらったの。陛下の魔法を防ぐ為に。私が人生で最初に覚えた魔法がこれよ」
「それって・・・まさか陛下の放つ魔法も!?」
「えぇ」
陛下の放つ魔法も超級魔法。
ここら一体が吹っ飛ぶ魔法。
この国にこの魔法を防げる人間は私を含めて三人しかいない。
そしてその中に私より年上の人間はいない。
つまりこの中にはいない。
「超級魔法:グノーシスプラトン」
空気が痛い。
先ほどの剣聖の力を発動したカインよりもヒシヒシと伝わってくる。
生命の活動を終わらせるような力を感じる。
グノーシスプラトンは、大気と大地の魔力を吸収し爆発的に解き放つ魔法。
この魔法があったから、帝国は王国に滅ぼされずに済んだのに。
そして陛下の魔力の塊がしずくとなって落ちて行き、地面に到達したことで当たり一面が光に包まれた。
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