第3話
「何の御用でしょうか殿下?」
「何の御用か!?貴様は俺の婚約者だろ!何故、俺の隣にいないのだ!」
「それはそこの乳草を貴方に押し付けるゴールドマリーさんに聞いてくれるますか?」
シュナイダーはわかっているのかしら?
婚約者がいる身でありながら別の女性を傍らに置くことを。
そしてその女性が子供を孕むことができない体になっているということを。
さすがに私に視線を飛ばしていた貴族たちも呆れていた。
それは魔女と蔑む貴族ですら、ゴールドマリーさんの行いはありえないと思っているということ。
「酷いわルルシア様。いくら私がシュナイダー殿下と恋仲だからって、そんな言い方!」
「そうだ!貴様はそうやってゴールドマリーをいつもいじめていたんだな!すべてゴールドマリーから聞いたぞ!」
「なんですかその物語に出てきそうなセリフは。殿下は私が気に食わないと感じたら全身の骨を砕いて放置することは、その身で理解していましょうに」
「うっ・・・!」
私は留学前にシュナイダーに対して、ゴールドマリーさんのことを提言した。
それは皇子の婚約者として、そして幼馴染としても見てはいられないものだったから。
しかし彼は聞く耳を持たず、結果として魔法で全身の骨を砕いた。
陛下にも許可をもらっていたことだから問題ない。
苦痛を強いられる物の、魔法があれば全身の骨が砕けるくらいは全治一か月で済む。
最も陛下は反省の意味を込めて、半年ほど治療はしなかったそうだけれど。
「え、骨を砕・・・え?」
「何を世迷言をいうかと思えば、全身の骨を砕くなどと。そんなこと生身の人間ができるならやってほしいものだな」
そういうのは眼鏡をかけた美丈夫。
確か名前は、カイン・フォン・テリー。
テリー伯爵家の嫡男で一人息子で、優秀で将来を担うと言われていたはずだけど、まさか彼がシュナイダーの取り巻きの一人になっているとは驚いたわね。
テリー伯爵家といえば、剣聖を出してる家系の帝国貴族。
剣聖は毎年現れる剣術使いの中でも異質な身体能力を持つ剣士。
言ってしまえばこの国最強の騎士ね。
その中でもカインはとても優秀だと聞いていたのだけれど、それは戦闘能力だけってことかしら?
「これはテリー伯爵令息殿。ごきげんよう」
「貴女は挨拶ができたのだな」
「えぇ、誰かさんと違って礼節はわきまえていますので」
いくら彼らのことを好ましく思っていないとはいえ、彼らと同じ土俵に立つのは許せないもの。
「それは私のことを言っているのか?ははっ!生憎私は魔女に挨拶をする言葉を持ち合わせてはいない」
「それはそれは、中々良いお
「お褒めに預かり光栄だ!そちらこそ淑女顔負けのよく回る口だ!しかし今宵は卒業パーティー。殿下、このような場では、過去の蟠りはお互い洗い流しませんか?」
ちっ!
さすがに伯爵家。
この程度の煽りでは意に返さないどころか、こちらに非がないのに全て飲み込んで丸く抑え込もうってことね。
腐っても上級貴族に連なる貴族ってわけね。
しかしこちらとしてもトラブルを回避できるなら、願ったりかなったりだわ。
それに噂の真意はどうあれ、このままいけば私が悪いと言う風潮ができかねない。
メリットしかないわね。
「し、しかしだな」
「そういうことなら殿下、私は私で楽しみますのでそちらもどうぞお楽しみくださいませ」
ニヤリと笑みを浮かべるカイン。
私は殿下の次に紡がれる言葉を聞かずにグレンの方へと踵を返した。
やはり彼の思惑通りか。
しかしこれは彼にとってメリットはほとんど何もない。
彼の思惑がわからないわ。
一体、何を考えてるのかしら?
「グレン、黙って待っててくれてありがと」
「あの愚皇子、爆炎魔法を解き放ってやろうかと思ったぞ」
「そんな価値ないわよ。あと口調戻ってるわよ」
「おっと、これは失敬」
「それよりも彼よ。テリー伯爵令息。彼は一体何を考えているのかしら?」
正直、あの殿下の取り巻きになっている理由がわからない。
彼を傀儡にしたい?
傀儡にしようにも彼はあまりにも頭が悪すぎて駄目ね。
どう逆立ちしても二人の皇子に勝てるとは思えない。
「正直、彼の取り巻きは彼と同じように頭が悪いと思っていました」
「どう感よ。これが頭が悪いが上にやってる行動とは思えないし、何かあるはずだわ」
「そうですね。このままいけばシュナイダー・・・様は皇太子に選ばれることはないでしょう。なのに彼に付いた」
「しかも、彼が私と婚約破棄する可能性は高い。だとすれば評判を下げれるこの場面で何もしないなんて」
「確かに臭いですね。調べてみましょうか」
グレンには影と呼ばれる組織に命令ができる。
イガラシ財閥の御曹司は命を狙われるケースも多い。
しかしグレン自身が戦闘能力がかなり高いため、護衛として使われるより情報を探すために使われることのが多い。
そしてこの影たちの情報収集能力と速度はかなり優秀ね。
私も欲しいくらいだもの。
「じゃあお願いできるかしーーーーー」
その瞬間窓が割れる音と共に私の声はかき消された。
そしてそのあと見た光景は、帝国が誇る騎士団の団長フォッカーが皇帝陛下の胸を貫いている光景だった。
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