[歌舞伎町文学賞一次選考通過作品]僕が殺人鬼に到るまでの物語
階田発春
1.とある殺人鬼による独白
深夜にも関わらず、鼓膜をつんざくようなパトカーのサイレンが聴こえる。その音に揺さぶられて我に返った。
さっきから、きーん、きーん、とアラームのごとく耳鳴りが止まらない。
目の前では女性が倒れていた。皮膚は生気を失くし、眼を半開きにさせたまま床に転がっている。物体のように。
その女性は俺の彼女だった。俺が殺した。
パトカーのサイレンが近づいてくる。通報は俺がした。最初は警察も半信半疑だったが、詳細な説明をすると警察も信じたのだろう、伝えた住所に来ると言って、電話は終わった。
俺は、怖いほど冷静だった。自分のしてしまったことが、はっきりわかっていた。人を殺すほどの狂気に手を差し出してしまったのに。
目を閉じた。これまでの記憶がぼんやり浮かんでくる。それは走馬灯のようだった。その一つ一つに確かに別れを告げて、俺はその場に崩れ落ちるように体を落とした。深夜、二時。警察がやってくる。俺の人生に終わりを告げるために。
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