とびだせオッサン

汐なぎ(うしおなぎ)

全一話

 彼は、いつものイタズラ仲間と、「とびだせオッサンゲーム」をすることになった。


 ルールは簡単。一人ずつオッサン人形が入ったたるに剣を刺して行って、人形が飛び出したら負けだ。


 ばつゲームは「はだか校舎こうしゃを走り回る」


 よくある悪ふざけだ。


 参加メンバーは六人で穴の数は二十四個。ハズレはひとつ。


 一周。


 二周。


 三周……。


 そして、とうとう訪れた四周目。


 彼は、誰かハズレを引けと願う。そもそも、四周目まで誰も引かないのがおかしいのだ。


 流石さすがにそろそろ誰か引くだろう。彼は安易あんいに考えていた。


 しかし、彼の予想を裏切り、一人目、二人目と刺して行くのに、誰もハズレを引かない。


 そして、とうとう彼の番が訪れた。絶体絶命ぜったいぜつめいである。


「待てよ。こんなん、もう無理じゃん。お前らなんで引かないんだよ」


 彼の言葉にAが答える。


「お前よりBの方がヤバイじゃん」


「そうだよ。俺なんか、お前がハズレを引かなきゃアウト。もう、他人頼みだ」


 確かに。Bには選択権がないが、彼にはある。二人に言われて、彼は度胸を決めた。


「刺すぞ」


 飛び出すなと祈りながら、樽に剣を刺す。


 オッサンを見つめる……。


 オッサンは動かない!


「やった! 勝った!」


 俺が喜びに両手をあげていると、横から何かが飛んで来て、彼の脇腹わきばらに当たった。


「痛てっ!」


 彼が飛んで来た方を見ると、くやしそうな顔をしたBが、空の樽を向けていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

とびだせオッサン 汐なぎ(うしおなぎ) @ushionagi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説