23 中学二年生 冬
この町に引っ越してくることができたことは、本当に幸運だったと思う。
ある意味では、甘えてしまっていたメグと離れることで、知らず知らずのうちに自立することが出来ていたとするならば、それもまた良かったことなのではないかと思える程だった。
とはいえ、距離は離れてはいるものの、メグとの交友関係は続いており、年末は私がメグの家に泊りがけで遊びに行っていたし、年明けはその逆で、メグが私の家に泊りがけで遊びに来てくれていた。
メグはオシャレに目覚めたといって、化粧品やアクセサリーについて、とても詳しくなっていた。
メグの家へ遊びに行ったとき、メグが「イイものがある」と言って、ヘアーアイロンを用意してくれていた。お
私の髪は、ちょうど引っ越しをした頃から次第に癖が弱くなり、以前とくらべるとほとんどストレートと言っていい髪質に変わっていた。
「どこでやったの? 都会に繰り出しおったな?」
メグに、どこかのお店でやってもらったという風に疑われたけれど、本当に自然に変化したものだった。
「いいな。私、
メグは、私の髪の毛をキラキラとした瞳で見つめていた。私にとっては、色々と思うところのある因縁の髪の毛だ。それをメグは
同級生の、同い年のメグという人間に対して、心の底から敬意を抱いていた。メグと引き合わせてくれた幸運に、感謝した。
年が明けた新学期早々、新生徒会役員の公募が行われていた。しかし、生徒会役員に自らなりたいという人はなかなかいないようで、推薦者を募集する段階となっていた。
ところどころから、私が適任なのではないかといった声があがっていることは、薄々気づいていた。もし正式に推薦されたら、どうしよう。
引き続き、前向き精神は継続中であったけれど、さすがに生徒会は荷が重いと感じていた。しかし、まだ決まったわけではない。そうなってから、考えることにしよう。
ホームルームの時間、担任の先生から、生徒会役員候補を最低一クラス一名選出することが決まったと伝えられた。
ホームルームの時間内では役員候補は決まらなかった。ところがその放課後、先生がまだ残っている数分の間に、私が適任という話の流れになり、なし崩しのまま私が役員候補として推薦されることに決まってしまったのだ。
とても戸惑ったけれど、推薦人として一年の時も同じクラスだった「みよっち」が、立候補してくれた。推薦人に立候補するというのも変な話だけれど、みよっちが推薦人というのは心強かった。
正式にクラスの代表として生徒会役員候補になると、候補者を集めた説明会に参加するよう言われ、みよっちと一緒に参加した。そこでは、今後の生徒会選挙までの具体的なスケジュールと、選挙活動に関する注意事項、必要なものの準備についての説明が行われた。
選挙活動期間となり、朝早くから校門の前に立って「清き一票を!」など、具体的な選挙活動をみよっちと一緒に開始した。
私は、あまり深く考えずに、この流れに身を任せるようにしていた。
選挙活動は、私よりもみよっちの方が積極的なくらいだ。なので、スケジュールを落とす心配もなく、気負わずにいることができていた。
本心では、生徒会役員になりたいとは、もちろん思ってはいない。けれど、目の前でせわしなく活動しているみよっちや、今は遠く離れてしまったメグの言葉などを考えると、立ち止まってしまうというのも、違うような気がしていた。
私なりでいいのなら、私のできる範囲内で構わないのであれば、前を向いて進んでいくことが、今の私が思う正しい選択なのではないかと、そう思えるようになっていた。
私に生徒会役員が務まるのだろうか。不安は多いにある。当選してもいない段階でおこがましいのだけれど、上手く立ち回れなくて落ち込んでいる自分や、みんなの意見を上手くまとめることができずにしょげている自分が、想像できた。推薦してくれたみんなの期待を、裏切ってしまうことになるかもしれない。
そんな不安もあるなか、選挙演説の原稿も書かなければならないし、準備しなければならないものもそれなりにある。不安はひとまず横へ置いておいて、目の前の準備に一つ一つ取り組むことに集中した。
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