2 中一春
僕の生まれ育った町は、小さな田舎町である。しかし、古くから温泉が
つい先月まで、僕も家から一番近い小学校へ通っており、無事卒業を迎えることができた。
一方、中学校は町内に1つしか存在していない。そのため、各小学校を卒業した生徒たちは、その1つしかない中学校へと
小学生時代を知らない新しい同級生たちとの出会いが、中学校生活と同時にスタートすることになるのだ。
部活動や趣味が同じという理由で、気の合う者同士が意気投合し、新たな友人関係を築き上げていったりするものである。
しかし、やはりこういった状況で、一番初めに仲良くなるきっかけというのは、席が隣同士であるとか、出席番号が1つ違いであるとか、そういった物理的に近距離での学校生活を送っていくことによる親近感といったものが、もっとも一般的のように思われる。
僕の後ろの席に座る女生徒も、そういった一般的な理由をきっかけに、僕に親近感を覚えてくれたのであろう。
僕もまた
席替えという、半ば強制的に指定された座席へ毎日着席しなければならないという状況は、彼女からしてみれば、登校から下校までの間、僕の後頭部や背中を、嫌がおうにも毎日見せられるということである。
授業中に
でなければ、彼女の僕に対する行動を、論理立てて上手く説明することが出来なくなってしまう。
実際、僕も学校の授業というものが、どれほど
例えば、国語の教科書を席順に指名されて読み進めていくといった状況は、ただ単純にクラスメートが発する、呪文やお
それこそ暇の真っ只中であり、彼女の暇つぶしスイッチオンの絶好のタイミングなのである。
そういった状況に
簡単に言うとサービス精神、
状況を受け入れてしまえば良いのだ。
本心から、心の底からそういった状況を
当時の僕は、正直に言って自分に自信が無かった。
勉強はそれなりにできる方ではあったが、突出した得意教科があるわけでもなく、成績的にも中の上くらい。
問題は運動面、スポーツに関してはからっきしダメで、走るのは短距離も長距離も苦手。野球、サッカー、バスケなどはもってのほか。
鉄棒とか跳び箱に至っては、ただの地獄である。
理由は明白で……、まあ、世間一般でいうところの、「デブ」というヤツである。
幸運にも、それを理由にイジメられるという経験は無かったが、好意を持たれることも少なく、モテるなどという状況からは、かなり遠い位置に存在していた。
だから、どちらかというと可愛いと思えるような……いや、正直に言うと、とても可愛いと思えるような後ろの席の女生徒から、授業中にちょっかいを出されるというシチュエーションは、降ってわいた幸運という思いで、受け止めることにしていた。
気まぐれな神様が、暇つぶしをしてくれたのかもしれない。
彼女はとても明るく、女子の中でも目立つ側の存在だ。男女分け
これまで、学校に行くのが楽しいなんて一度も思ったことは無かったのに、この頃の僕は、学校へ行くのが心の底から楽しいと思っていた。
自分では本当に気付いていなかったのだが、前の座席の女子から、
「授業中に普通に鼻歌うたうよね。イメージと違う。なんか……キモイ」
と、言われたこともある。
本当に無意識で歌っていたのかもしれない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます